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act.20大ピンチでもないけどそれなりに

 はい、ピンチは最初だけです。そんなもんです。


 すみません、ちょっと寝込んでまして。「いやぁ、花粉症酷いと熱出るって本当なのね!」なんて思ってたら医者に「ただの風邪ですな」とサラリと言われました。

act.20大ピンチでもないけどそれなりに

 さて……流石にこれはキツイんじゃないかな―!?

 っと、取り乱した。俺は今、絶望的状況に陥っている。

「動くな! 動けば撃つぞ!」

「武器を捨て直ちに降伏しろ! ただし命は頂くがな!」

「お前一人でこの人数には勝てないぞ? せめてゆっくりいたぶってやるからとっとと降伏しろ!」

 やっぱ魔王軍、伊達に落ちこぼれの集まりじゃないね。台詞がひでぇ。それじゃどっちみち苦しんで死ぬんじゃねえか? そもそもこんな人数何処にいた!? 軽く三十はいるぞ!?

「むぅ、生憎と俺様にも守るもんはあるんでなぁ」

 後頭部を掻きながら苦笑いを浮かべる。直後、雷で速度を強化した状態で突っ込む。てか俺初めて俺様だなんて言ったよ恥ずかしい!

 戦闘で魔法具である銃を構えていた兵士の内先頭集団が吹き飛ぶ。いやぁ、人間の質量で雷の速度だと運動エネルギーすごいね。

「ほい、もういっちょぉ!」

 狭いドア部分を抜けた俺は周囲にばら撒く感覚で強風をぶち込み、怯んだ所に薙ぎばらう様に圧縮した風を放つ。

「……おし、後はお前さんだけだな?」

「ヒ、ヒィィ……! な、何だこいつ! つ、つえぇ!」

「今さらな……取りあえず眠れ!」

 電撃を流し気絶させる。てかコイツ股の部分濡れてねえか? あーあみっともない。って気絶したらフツーか?



 全員の処理を終えたその時だった。先程まで気にならなかった戦闘中の音は俺の耳に嫌でも入ってくる。

 一際大きい爆音が轟き、俺は咄嗟に後ろを振り向く。すると……


「なっ……!?」

 唖然とした。署長室のドアや壁は破壊され、中を見ることができたが……何とたった一人を残し全員が座り込むか倒れこんでいる。

 俺は即座に署長室に飛び込んだ。

「ホウ、なんだまだいたのか?」

「てめぇ……」

「ククク、『断崖の研究所要塞』へようこそ。俺はここの副所長、デーリム。貴様も……ここからは出しはしないぞ?」

 ニタリ、と薄気味悪い笑みを浮かべた二十代後半と思しき細身の男だ。彼の周囲には黒い炎のようなものが漂う。

「く……! せ、先生! 気をつけてくれ、そいつは……生まれながらのっぐぉぁぁっ!」

「アクト!」

「ふん、貴様如きが喋るまでもない。そう、私は生まれながらに闇を司る魔族の血を継ぎし者! 魔王候補の一人を前に貴様は這いつくばるのだ!」

「大層な大馬鹿者だ……眠れ!」

 雷と同等の速度で突進し、腹部に右足で回し蹴りを見舞う。この広い、数十mはある部屋の中央から一気に後ろの壁へと飛んでいく。

 壁に亀裂が奔り、ズルズルと落ちたデーリム。なんだ、一撃か? とも思ったが……すぐに立ち上がりやがった。

「クク、クハハハハハ! なるほど、貴様はそこの『クズ共』よりも面白いようだな!」

 ピクリ、と俺の腕が動いた。いや、他にも動いたかもしれない。俺はその瞬間から、本能のリミッターが崩れ始めていた。

「クズ……だと?」

 自分でも分かる程の低く、ゆっくりと、殺意が籠った声が出た。

「ああ、そうだ! そこに伸びている『クズ共』などよりお前はよっぽど強い! さあかかってこい! 貴様を殺す方が面白そうだ!」

 再び同じワードを聞いた瞬間、俺は理性が吹き飛んだ。無言で駆け出し、蒼鬼の峰で吹き飛ばす。まだ、人を殺さない程の理性は残っているらしい。

「ぐはぁっ!」

 しかし吹き飛んだデーリムに容赦するほどではなく、すぐさま黒い稲妻で追い打ちをかける。床に小さなクレーター状の傷跡ができる。

「ク、ククク……強い、強いぞ……! どうだ、貴様。そこの『クズ共』とつるむのは止めて、魔王様の配下にならないか! ゆくゆく私が魔王になれば、貴様を優遇してやるぞ?」

 最後まで台詞を聞くほど、俺の理性は残っていなかった。

 先程よりより濃く闇の色を映す雷を放ち、吹き飛ばす。

 立ち上がった直後に今度は風を纏った飛び後ろ回し蹴り。

 今度は起き上がる前に再び風を纏ったかかと落としで地面ごと攻撃する。その反動か、デーリムの体が宙に浮かんだ。

 その一瞬に圧縮しておいた黒き雷を爆発させ壁に叩きつける。


「……まだあいつらを『クズ共』呼ばわりするか?」

 俺は蒼鬼の切っ先を向け、腹の底から響く低い声で立つことすらままならなくなったデーリムに問う。

「フ、フン。お前は強くとも『クズ共』は『クズ共』に変わりはなグギャァ!」

 再び目の前で黒い雷が爆ぜる。宙に浮いたところを殴り飛ばし、再び壁に叩きつけた。

「もう一度問おう。最後の問いだ。

 ……まだ、言うか?」

「何度……聞いても答えは変わらんな」

 強がってはいるがもう立ち上がったりはできないようだ。

 俺は先程までのとは比べ物にならない程の黒い雷を蓄積させる。これを放てば、目の前の壁は消えてなくなるだろう。


 そして今まさに、その電撃を放とうとした。その時だ。

「……断罪する…………死ね!」

「ダメぇっ!」

 横から何かにつき飛ばされ、視界が右から左へと、そして地面に向かって流れていく。思わず、蒼鬼を手放した。

「誰……ッ」

 誰だ、と聞こうとしたところで俺は我に返った。俺を押し倒したらしいのはレムだったのだ。

「あれ……俺は……?」

「先生……何で……っ!?」

「え……ってうぉぉ!?」

 ふと壁を見れば無残なことになった壁の「残骸」が。そしてその中には震えているデーリム。

「まて……またやっちまったのか!?」

 キレた……それを認識したのはまさに今だった。以前もキレた時の記憶はなかった。どうも本格的にキレると我を失うらしい……




 結局、俺達で大きなけがをした者はいなかった。流石直属部隊。俺達はこの後馬車を待機させているはずのポイントに向かい、それで帰還するだけだ。

「とっとと……ありゃ?」

 立とうとした時、脚に力が入らなかった。

「どうしました?」

「た、立てん……むぅ……何故だ!」

「魔力の使い過ぎ……は先生に限ってあり得ませんし……何でしょう? とりあえず肩貸しますよ」

「おう、すまない……」

 はい、拓海、我を失うほどキレるタイプです。普段おとなしい奴ほどキレると怖いというのは本当ですよね。私がそうです(キリッ

 私もキレ過ぎて普段は口を聞かない程度である仲の弟を絞殺しかけてたり……友達を殴りつけてたり……本当に無意識なんですよね。

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