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act.13生きるという権利と罪

 やっとシリアス脱出……あーなげー。

act.13生きるという権利と罪

 俺はここ三日、寝不足気味だった。理由は言わずとも分かるであろうが、もちろんあの基地破壊の件だ。

 ベッドに転がり眠っていると、必ず夢を見る。内容は俺があの基地で殺した奴らに囲まれ、逆に殺されかける。そこでいつも目覚め、それを一夜で何回も繰り返す。

 最近、一日三時間寝れば良い方だ。酷い時にはほぼ一睡もできず、数分ごとに目が覚める。そうなると今度は起きていても気が滅入り、負のスパイラルへとなっていく。

「……俺は……どうすればいい……」

 無意識に呟いていた。俺の貰った能力は、確かに人を殺さずに済むかもしれない。ただ、その調節はとてもじゃないが戦いの最中に即座にできるレベルではない。多少のラグがある。となると、今度は俺が危うくなる。即座に攻撃を出せば逆に殺しかねない。強すぎる、というのがこんなところで弊害になろうとは思わなかった。


 ふと、扉をノックする音が聞こえる。

「……誰だ?」

「先生、国王様がお呼びです」

「……一応聞くが、拒否権は……」

「無いでしょうね」

 やっぱりか……未だに城の構造を覚えられず、セシアの案内で、国王に会いに行く。相変わらずデカイ部屋だが、今日は違和感も感じなかった。それほどに体調が悪いのだ。


「休暇中に無理言って来てもらって悪いな、緊急の報告があるものでな」

「一体何でしょう?」

「以前の基地破壊を知った敵本部が攻めてきたのだ。無論敵のボス格はまだ来ておらんがかなりの数だ。おおよそ千の兵士が向かっている」

 千か……多いな。

「それで……私に何を?」

「……敵を追い払ってもらいたい」

「……残念ですが」

「無論、殺す必要も全員と戦う必要もない。適当に撃退出来れば良いのだ」

「……私がいなくても何とかなるのでは?」

「むぅ……確かにな。しかし、いなければこちらにかなりの被害が出ると予想される」

「…………」

 俺はもう戦いに赴ける程、気力に余裕が無い。まだ、心に区切りをつけることができてない。

「国王様、タクミ先生に無理をさせるのも酷であります。私達でなんとかしましょう」

「……そうか。分かった! では、今まで通り直属部隊その他全部隊共同戦線を張るのだ!」

「申し訳ない……」

「いやいや。無理をして体を壊されてもこちらも気まずいからのう。では、アクト、今回の指揮は主に直属部隊隊長に任せる!」

 この国は防衛線など、基本的には国王直属部隊が中心になって軍事行動をするらしい。国王は軍事指揮とは全く違う仕事が増えるかららしいが。


 その日は何事もなく終了した。もっとも、俺が眠れれば本当に何事もなく、なのだが。

「おい、タクミ、大丈夫か?」

「ゼウスか……そう見えるか?」

「見えないな」

「俺は……どうすればいいのだろうな」

「…………すまん、こんなことに巻き込んで……」

「……不可抗力なんだろう? お前が謝ることは無い」

「そう言ってもらえれば嬉しい。……今度の防衛線だが」

「ああ」

「今まで彼らは本当に甚大な被害を受ける事が多い。お前には酷かもしれんが……どうか彼らに手を貸してやってほしい」

「……できたら、な。俺もできれば見殺しにはしたくない、が……」

「……まあ無理する必要はない。お前のお陰で彼らもだいぶ鍛えられたようだしな」

 彼との無線を終えた時にはもう外に日が昇り始めていた。彼からコールを受けたのは俺が目覚めた後すぐ。ここから寝てもしょうがないので、俺は葉巻に火をつける。

 本当に、この世界は地球と比べて純真な人々が多い。良くも悪くもではあるが、俺はこの世界で大分世話になった。恩返しはしたいのだが……




 翌日、というか数時間後、外が急に騒がしくなった。来たか……!

 敵の魔法が近くに着弾したらしい。轟音が辺りに響き、一瞬後こちらの国の人民の悲鳴が聞こえる。

 即座に軍隊が到着したようで、魔法が着弾するときの音がなお多くなった。俺は無意識の内に葉巻を吸い、煙を吐き出す時の動作に力が加わっていた。何故だ……?

「フハハハハ! 先日の礼はさせてもらうぞぉぉ!」

「フン、貴様ら逆恨みに関しては見事な程だ。消えろ!」

 アクトだ。彼の特徴的な魔法具が氷の弾丸を発射する音が聞こえる。おもっくそオセ○ットな彼が使うのはもちろんリボルバー的なアレ。魔力の伝達率が高いらしく、扱いが難しいものの使いこなせばかなり戦力になる。

「貴様らに容赦はするなと許可が出ている。下手すれば死ぬぞ?」

 視線だけで殺人できる程のレムも一緒のようだ。炎を纏うその剣は思うより軽いらしく、以前ものの数秒で敵兵十人をなぎ倒したこともある。今日も今日とて彼女にやられた敵兵が悲鳴を上げている。

「お前らは攻め方がひねくれ過ぎてるんだよ。逆にバレバレだバーカ」

 数名を同時に殴った音に一瞬遅れ、ゼルキスが嘲笑う。彼は単純な攻撃力ならば六人中トップである為、武器より拳の方が強いらしい。ついでに以前地面を叩き割って敵兵を埋没した過去を持っている。それを魔法で強化できるのだ、とんでもない。

「ふぅ……逆恨みとは見苦しいですね。いつもながらに低レベルな方々で」

 爽やかイケメンなセシアは最近とんでもない辛口と発覚した。あと気に入らない奴らに対しては容赦しないようで、土を味方につけた矢で敵をボコボコにする。今まさにその状況になっている。尖ってはいないが、逆に先端が重いので下手にクリティカルすると骨折しかねない。

「ふぇぇぇ……一段と多いですねぇ。援護が忙しいです」

 と、言いつつ攻撃力強化の援護魔法の呪文を詠唱し始める。炎はレムより断然弱いものの、その援護呪文は味方を大いに助ける。攻撃強化にとどまらず、以前にも使った防御強化や移動速度強化、体力回復など様々である。

「むぅ……遠距離狙撃援護はやりやすいが……状況が分からんな」

 風を味方につける彼は遠距離から気配を察知されにくい。攻撃を掻き消したり敵の勢いや数を削いだりと間接的な援護も流石な腕だ。が、遠距離からの高威力攻撃魔法が彼の真髄。今もまさに不意の攻撃で敵兵が吹き飛んだ音がする。


 彼らは大分順調なようだ。彼らの部下もだいぶ活躍しているらしく、あちこちで敵兵の悲鳴が轟いている。だが、逆に王国軍側の被害も大きいようだ。街にある建造物ならまだしも、けが人も出ているようだ。民間人だけではなく、彼ら戦闘員にも被害は出ている。現に、アクト達だってかなり怪我をしているようだ。

 俺は再び無意識に、ギリギリと音がするほど顎に力を入れ、握りしめた拳は震えている。……何故だ。何故……

 いや、もう答えは分かっている。分かっているんだ。

「く…………!!!」



 俺は窓から飛ぶ。雷を纏う俺はまさに迅雷の如き速度で飛びだす。数m先に固っている敵兵と、それに対抗する直属部隊が見える。どうも一つの方向から大挙して押し寄せているらしい。しかも裏ルートだったらしく、表を守っている軍はまだ到着しないか戦闘中のようだ。

「うおぉぉぉらあぁぁぁぁっ!!!」

「うわあぁぁぁっ!?」

 先頭集団に突風をぶちまけておいた。呆気なく吹き飛んだが……まあ死んでは無い。移動中にエネルギー調節は済ませたからな。

「な……先生!?」

「おう……待たせたな」

 もう吹っ切れた。

「生きる為に戦うのが罪というなら……糧を得るのが罪というなら……俺は背負ってやる!」

 もう、自分の弱さから逃げるのは止めた。立ち向かわねば解決できない。

「先生……」

「いや、まじですまんな。じゃ……行きますかぁ!」

「て、テメェ何者だぁ!」

「ふむ……知らんのか? 残念な奴らだ」

「仕方なかろう、落ちこぼれてのし上がろうとすらしなかった奴らだ」

「ああ、確かに。落ちこぼれたとしても努力次第で何とかなるはず。それをしなかった。先生、この愚民共に容赦はする必要ないですよ」

「て、テメェらぁ!!」

「うるせっての。オラ、拳と拳で語り合ってみるか!? アァン!?」

「ふむ、彼らもだいぶ勢力は減りましたねぇ。撃退は……無理ですかね?」

「へ、へぇ!? な、何でですか?」

「あー……それもそうか。退かねえだろうからなぁ、この落ちこぼれ共は退き際を知らんからな」

 皆さん随分な言いようで……まあ努力しねえからだろうが……

「うるせぇぇぇぇぇぇ!! 調子に乗るんじゃねぇ!!!!!」

 あーまあそうなるよなぁ……そういやなんでデフィアこの場にいないのに会話に参加してんだ? え、どうやって!?

 はいやっとシリアス抜け出しました。次回からいつもの調子に戻る予定です。

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