act.10人間という脆さと強さ
なんか前回の話、タイトルがおかしかったので修正しました。申し訳ない……
act.10人間という脆さと強さ
ここは……何処だ? 延々と続く花畑。聞いたことがある気もするが思い出せない。……向こうにあるのは川のようだ。とりあえず行ってみよう。
川に足を入れる直前、目の前に見知った人物が現れる。
「な……兄……さん!?」
五年前に交通事故で亡き人となったはずの誠也兄さんがそこにはいた。その兄さんは慌てたように、飛びつこうとした俺を制止している。
「お前にはまだ早い!」
「な、何故……あ……!」
俺はやっと気がついた。ここは……いわば三途の川、死者が訪れる地。俺は兄に礼を言い、後ろ髪を引かれる思いで踵を返して走った。
「う……?」
ふと、視界には白い天井。右腕に違和感を感じ、その方向を見れば赤い髪の毛の女性がベッドに突っ伏していた。
「……レム?」
そう声をかけると、彼女は呻きを漏らし、こちらを見やる。すると、一気に目を見開いていく。
「先……生!! 良かっ……た! もう、二日っ、もっ、目を……覚まし、てっ……くれなかっ、た、からっ! も、もうっ……!」
気丈な彼女は珍しく嗚咽を漏らしている。二日も目を覚まさなかった……!? まて、俺状況が今だ思い出せねえ。
「あ……れ? 俺何で……」
「お、覚えていないんですか……?」
「う、うーん、ちょっと待ってくれ……」
えーと、記憶にあるのが山に籠っててそっから敵襲撃があって……あ、そうだ……
「あぁ、俺は確か矢を5本、腹部への突きを喰らって……!」
「そうです。付け加えるなら……私、を……庇っ……て……!」
あーまた泣き出した……あれ、彼女こんな涙もろいの!?
「ほ、ホントに……スミマセンでした……!」
「あーいや、その……気にするな。それと、心配かけたな」
やっと彼女が泣きやんでくれたという時に、扉を開けたデフィアがこの状況を見て……
「あ、いや、その……すまんかった。じゃ……!」
出ていこうとした。とりあえず重大な勘違いをしていると悟った俺達は……
「俺達は」「私達はッ」
「んな関係じゃねぇッ!!」「そんな関係じゃないっ!!」
電撃と火炎を浴びせておいた。
「仲……良いじゃねえか……ぐぎゃあ!」
追撃で電撃と火炎。私服で良かったねデフィア君。
「そういえば……一つ気になる事があるんだが」
「はい?」
「あの山籠りの時レムは剣を二本使ってたけど……俺と最初に戦った時は一本だったよね? あれは?」
「あ……私は両方のスタイルを状況で使い分けるんです。あの時も一応二本持っていたんですよ?」
「え、そなの?」
「はい。けど、やっぱり二本あると防御がしにくいですから……」
「なるほどねぇ。ってお前ら、何、来てくれたの?」
その言葉でレムは後ろを向く。すると、直属部隊の各隊隊長が来ていた。
「おぉ、目が覚めたんだな!」
「良かった良かった」
「二日間ずっと眠っていましたからねぇ」
「はぅぅ……良かったです!」
その四人は黒コゲで転がっているデフィアに気付いた。視線で疑問を送ってくる。
「ああデフィア? デリカシーのない発言をした天罰を享受しただけだから気にするな」
「そうそう。悪いのはそこのコゲ」
あーレムさんだいぶ怒ってらっしゃるな。もはや名前すら言ってないよ。ていうかそんなに怒る程否定されるって……ちょっと傷ついた……
「で、今後どうするんだ?」
「む、いつも通りだが?」
「いやいつもどおりって……動けなくね?」
「あ? あー……そういやそうか。まあ、俺がいなくてもできるだろ」
「技術指導その他は無理があ……」
「走りこみとかの基礎は」
あれ? 皆さんどうしたの?
「また……走りこみですか……」
「またって……山でだってたった数kmじゃないの」
あれ? 何か顔が蒼いけど大丈夫か皆?
「たった……」
「化物だ……」
「人間って全部そうなのか?」
「し、信じられない……」
「はぅぅ……」
「魔法でドーピングしてる……?」
そ、そんな……第一隊から第六隊隊長もれなくどん引きなんてひどいじゃないか……
「まてまてまて、お前ら軍人じゃないの!? 数km走るなんてフツーっしょ!?」
ひどいときは一日走りっぱなしと聞くぞ、我が世界地球じゃ。
「人間って恐ろしい……!」
あれぇぇぇぇぇぇ!?
「と、とにかく……じゃあ俺がベッドに縛り付けられている間は普段通り2km走やって、各自隊長が指示出して自主練習。それ位はできるだろ?」
最初からそうすればよかった。
全員が了解し、雑談タ~イム。
やれ俺に後遺症は残るのかとか、俺が寝てた間は何してたかとか、やれ国王は捕まえたソイツを縛り上げて珍しく拷問をかけたとか……
結構色々あったらしいがまあ大丈夫か。そうそう、聞いたところ彼らは魔法に頼る生活なので、あまり体力は必要ないらしい。だからさっきのに引いてたのか。俺は体力をつけることの有用性を……多少強引に納得させて走りこみを強化する事を……多少強めに薦めておいた。
はい、ちょっとした閑話休題的お話でした。……何かすいません