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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Quarrel! 皇子はそれを蔑視する。【前】

 自分の部屋に帰り、借りた本の目次と照らし合わせながら軽く、本当に軽く斜め読みしてあたりをつける。

その作業をしながら、本を借りる経緯と夕食に誘われた経緯をミリィとオリエに説明した。

アイシャ姫自身は、嫌いというワケではないんだが・・・能力だって今まで見てきた貴族の中では、大分マシな方。

たまに箱入りのブッ飛びっぷりに絶句はするが。

『で、どうしようか?』

 反対意見がどちらかの口から・・・まぁ、オリエは発音できないが、あれば行くのはやめておこうかと思って発した言葉だった。

だが、結局、そんな意見は出て来なかった。

さしたる反対も無く、遥かに身分が上の人間に"待っている"とまで言われたら、行くしかない。

結局、三人で行く事になり、例の無駄に豪華な屋敷へと向かい、夕食の席に着いたのだが・・・。

(何でこうなる?)

 オレは様々な感情を込めて、アイシャ姫を睨・・・見つめる。

八割近くが非難の意味で。

「アイシャ姫が親しくしている御仁がいると聞いたが、あの時の方とはな。」

 機嫌良く飲み食いしている人物がオレとアイシャ姫の座っている上座にいる。

クロアートの国色でもある真紅の羽織り、薄茶色の髪を後にまとめた男。

ちなみにこの男が上座にいるせいで、従者扱いのミリィとオリエは、オレ達と別室で食事となった。

マール君もいないところを見ると、恐らく彼も一緒に別室での食事なのだろう。

「いやいや、聞くところによるとあの"グランツ"の一門だとか。」

 オレを興味津々に観察しているこの男、あの頭の悪い発言をしたクロアートのお偉いさんだ。

名前?そんなの聞いていると思うか?

聞いていても、覚えるか馬鹿。

このオッサンのせいで、あんな模擬戦をアイシャ姫はするハメになって、オレが怪我する事になった、その原因なんだからな。

「グランツと言っても、私は末席の若輩者なんで。」

 まさか、こんなにグランツ姓が国外で大人気だと思わなかった。

有名人だ。

もしかしたら、オレより有名人なんじゃないか?

まぁ、一応あの熊はオレの師匠なワケだから、オレもグランツ一門である事には変わりはない。

若輩者で末席なのも本当だ。

オレが産まれて、物心ついた時にはバルドは既に任官していなくて名誉職だった。

その間、バルドは弟子をとっていない。

それにバルドの教えを受けた人間で、グランツ姓を名乗っているというか、名乗れたのは三人といなかった気がする。

会った事はない。

(だから、余計に目立つのか?)

 本当に誤算だった。

「はっはっ、何を言う。逆にその若さでグランツ姓を名乗るなど、誰しもが出来る事ではない。」

 あぁ、やっぱり。

・・・人間離れしてるもんな、あの熊。

うん、熊。

小さく溜め息をついて、チラリとアイシャ姫を見ると、彼女は申し訳なさそうに終始下を向いたまま微動だにしない。

多少は申し訳なく思っているのがわかるから、良しとするか。

「逆に人材不足なのかも知れませんよ?」

 あまり国内の武力が強いと印象づける事は避けないとな。

外交上の火種は残さないに限る。

「成程。だが、しかし、セルブ王国の王子は君を高く評価していて引き抜きをかけているとか。」

 誰だ、情報を流したのは。

というか、アレか?

オレ、誰かに監視とかされているのか?

そんな気配はなかったが・・・。

大半はアイシャ姫からの発信な気もするが、これは困った。

このオッサン、どうやらオレに興味を示してこの夕食会に割り込んで来たのかも知れない。

全く、人騒がせなのは血筋か?

「ラスロー王子も何か勘違いしたのでしょう。」

 あれか?

本名と本来の身分で来た方が、実は良かったとかいうオチか?

裏目に出過ぎだ。

「これは儂も負けていられんとな。そう思った部分もあって、姫に頼んで参加させてもらったのだ。」

 やっぱり。

皇子だろうとなかろうと、別の国に属する気はないんだがな。

「そう言われましても・・・お断りするとしか・・・。」

「それは、ラスロー王子の誘いを受けたと?」

「いいえ、お断りしましたよ。丁重に。」

 一瞬、険しくなったその視線をあっさりと流しながら、素早く否定する。

全く以って面倒くさいが、両者の睨み合いの話を知っているので誤解のないようにしなければ。

その構図は、天秤の皿に両国の名前が書いてあって、オレが乗せられているカンジ。

オレ一人如きで傾いたりはしないだろが、それでも要因は少ないに限る。

あー、神器つきなら良い宣伝という意味で価値はあるだろうなぁ。

「何か、理由や条件に不満でも?こちらとしてもそれは充分に考慮するが?」

 なんだろう、この考え方。

確かに、思想の違いという理由があったのだが、それにしたって・・・自分が待遇で動く人間だと思われたのが少しカチンと来る。

いや、かなり。

あぁ、そうだった、貴族って大半がこんなのだったよな。

だから、余計に頭にクるのか。

そういえば、会食が始まってから結構な時間が経ったな。

そろそろ、食の遅いオリエの食事も終わった頃だろう。

終わってないのは、オレだけかな。

ま、仕方ないか。

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