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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Neither! 皇子は愛惜に慟哭す。【後】

 医務室で横になる頃には、本当に気持ち悪くなっていて寒気すらしていた。

驚いた事にオリガさんは、本当に真面目できちんとオレに掛け布までしてくれた。

そういえば彼女、オリエと一文字違いだな。

「ふふっ。」

 不謹慎にも笑みがわく。

「何か?」

 キッと睨みつけられる。

「いや、ウチのコと名前が一文字違いだと思ったら、急に親近感がわいてね。」

 本当、口に出してみたが不謹慎だった。

「まぁ、年齢はうちのコのが幼いが。」

「そう・・・。」

「ありがとう。それと、ラスロー王子の誘いを断ったのは悪いと思っているよ。」

 どうせなら、仲良くなっておきたい。

仲が悪いよりは格段にいいだろう?

「だが、王子には王子の成すべき理想があるのと同じ様に、オレにもオレの理想があるんだ。」

 オレの魂の中に一欠片だけ残っている強い光の為にも。

「それは死んでも曲げられない。君が王子に仕える気持ちに負けないくらいに。」

 じゃなきゃ、オレに生きる価値なんて無いに等しい。

「・・・わかったわ。でも、私もそんなに器用じゃないの。」

 簡単には割り切れないし、切り替えられないか。

「いいよ、それで。」

 別に味方になってくれとは言ってないし、思ってもいない。

国が違うんだから、敵になるかも知れない立場同士だ。

現状が敵にならなければそれでいい。

「じゃあ、講義に戻って。ありがとう。講義後だって王子の世話があるんだろう?」

「え、えぇ。」

 それでもオレを一人残して行っても良いのかと逡巡してくれるんだから、真面目で優しいよな、うん。

「大丈夫。オレもすぐにウチのが来てくれるさ。」

 来なくてもそれはそれで。

「そう・・・じゃあ。」

 彼女が去っていくのを見送った後、オレは身体を布団の中で丸めた。

微かに身体が震えているのがわかる。

"二重球体"

きっとそれは、オレとトウマの魂の状態のコトだ。

彼の魂は確かにオレの中にあるんだ・・・。

それが嬉しくて・・・嬉しい反面、苦しい。

こうまでして生き延びたオレは一体・・・。

「足し引きするもんじゃないんぞ、クソッ。」

 震えながらも悪態がつけるんだから、まだマシか。

冷静に考えて、魂の召喚・融合なんて途方もない術なんだ。

魂を見る術でどうこう出来るとは思わないが、変な反応を起こしても不思議じゃない。

「やっぱり一度しっかりと、術系統の講義は受けた方がいいな。」

 生きている限り、オレは止まれない。

そんな脅迫観念に近いものだけが、今のオレを動かしている。

それだけが・・・。

「オレの存在意義か・・・。」

「トウマさん!お倒れになったと聞きましたわ!大丈夫ですのっ?!」

 猪の如く突進してくる真紅の塊。

「アイシャ姫?」

 驚いた。

何故、彼女が?

「私、居てもたってもいられなくなってしまって・・・。」

 オレの姿を見てほっとしたのかシュンとしている。

「いや、大丈夫だよ。オレ、死んでも死ねないから。」

 ・・・何を言ってるんだオレは。

「ちょっと気持ち悪くなっただけだから・・・。」

「そうですの。」

 オレの傍らの椅子に座って、心配そうに見つめるアイシャ姫。

「あはは。」

 唐突に笑みが漏れた。

吹き出してばっかりだな、オレ。

「どうしました?!」

 突然の笑いに驚いたアイシャ姫は、すかさずオレの手を握り締める。

「ごめん、ごめん。余りに自分の馬鹿さ加減に笑いが、ね。」

 それだけじゃないよな、うん、オレの存在意義ってヤツは。

だから、ここにいるんだもんな。

それにトウマと一つになる前、ディーンの剣を手に取るそれよりもずっと前から、彼女は居た。

居たじゃないか。

「昔から、オレ、身体が弱くてさ・・・。」

 乳母は本当に大変だったろう。

「熱を出しては寝込んでいてね。その度にこうやって心配そうに手を握ってくれる人がいてさ。」

 たった一人だけ。

オレが変わる前もその後も、そして今も傍にいる彼女。

「恋人・・・ですか?」

「ん?あはは、全然違うよ、彼女は。」

 一度も女性だと言っていないのに恋人とは、女の勘ってヤツか?

いいなぁ、女の勘。

もっとオレも鋭くなりたいもんだ。

直感とか。

「ただ、彼女はオレの一部なんだなって。」

 オレという存在、魂はトウマによって支えられ確立していたとしても。

それ以外は別だ。

「一部?」

「そう。オレがオレでいられる理由の一部。」

 名前があって、顔があって、感じられる生身があって・・・それによってオレ自身を認識出来る。

他者による自己認識とは、いささか幼稚かも知れないけれど。

「こうやって実感があるとさ、余計にそう感じるんだよね。」

 そう言って、オレは握られている自分の手を持ち上げて彼女に見せる。

「あ。」

「こうやっていないと、オレは意外と自分が生きているって実感が出ないらしい。困った事に。」

 本当に困った人間だ。

こんな所で震えて寝ている場合じゃないってのにな。

「アイシャ姫が来てくれて助かったよ。ありがとう。」

 中身が空っぽなアルム。

そんなだろうと生きてんだしな。

「いいえ、私は、その・・・。」

「ん?何?」

「何でもないですわっ!」「ぐぇっ。」

 そ、その馬鹿力やめて・・・手が、手が砕け・・・。

「トウマ様!大丈夫ですか!」

 今度はミリィ達だ。

今じゃ、もうすっかり聞き慣れた声になったよな。

勿論、オリエも一緒だ。

何だかな、もう。

やっぱり倒れてなんかいられないじゃないか。

オレは一人、心の中で苦笑するしかなった。

後ろ向きになるのは、一人でも出来るしな。

後悔は死ぬ時まで考えるのは、よした方がいいのかも知れない・・・今、今なら。

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