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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Neither! 皇子は愛惜に慟哭す。【中】

 取り出されたのは、金属で出来た杖。

錠前に差し込むような鍵状の形をしている。

長さは隣にいる講師と同じか少し長いくらいなので、杖としては長い部類に入る。

「む。」

 思わず呻き声が漏れる。

変な感覚。

嫌ではないが、変な印象が杖からしてくる。

今まで感じた中で一番近いのは・・・。

「あ、あの、その杖を使うのはちょっと・・・。」

 後ずさる。

この印象はヤバい・・・アレだ・・・ディーンの剣を抜いている時の。

しかも、両刃から片刃に変わる直前の。

ま、まさか・・・神器級の杖とかじゃないよな?

そんなにぽこぽこあるワケないだろ、普通。

"セイブラムの王錫"なのか?アレが?

「大丈夫ですよ。痛くはありませんから。ちょっとくすぐったくはありますけれど。」

「違う、そういう意味ではなくて・・・。」

 脳裏に浮かんだのは、神器からの拒絶反応。

起きるに決まってるだろ!

しかも、皆、あんなに痛そうにしているんだぞ?!

くすぐったいって、そんなワケあるかっ!

「だって、ソレ・・・。」

 周りの人間達は、オレが何でこんなに焦っているのか不思議そうにしているのを見て、ちょっぴり大人しめに。

そりゃ、神器級の武器に触れた事がある人間なんて、そうはいないもんな。

間近に見る事ができる人間すら、ごく少数。、

しかも、王族筋か近衛・親衛隊。

第一、年中腰からぶら下げてそこら辺を歩いている人間なんて兄上くらいだろ、きっと。

少なくともここにいる人間は、比較的若い年齢層だから階級もそんなに高くないだろう。

当然、神器なんて雲の上の存在だ。

「・・・あ、成る程。大丈夫ですよ、貴方が触れる事はないですから。」

 にっこりと微笑むその姿は、オレの危惧している事を理解して頂けたようだ。

「な、ならいいですけれど。」

 しかし、て、コトはだ。

この女性の発言は、これが神器級だと裏付けているというワケで。

しかも、図書館司書兼講師兼施設長なワケで。

オレより世を忍ぶ(?)仮の姿がどれだけあるんだ?

「では、トウマさんの魂の形を視てみましょう。」

 杖をオレの眼前にトンっと置き、瞳を閉じる。

「同じ様に目を閉じて下さい。」

「あ、はい。」

 ゴクリと息を飲み、オレも目を閉じる。

「では。」

 そう聞こえて、しばらくした後。

オレの胸にそっと・・・多分、指先が置かれ、押し付けられるようにそのまま第一、第二関節と。

そのまま手の平まで押し付けられ・・・。

ゾクッと。

そうとしか言いようがない。

くすぐったいとか絶対嘘だ!

ゾクリと身体に何かが這うような・・・気持ち悪い。

うわっ!ダメ!

ヤメて欲しい。

「くっ・・・。」

 声が出そうになるのを必死に抑える。

「あら?」

 身体をまさぐるようにしていた何かが突然止む。

「あらあら。」

 だから何?!

声を出していいのかわからないから、余計にもどかしい。

「形で言うと球体?」

 何故、疑問形?

オレに見えるワケじゃないんだから。

「二重球体。小さくて強い点の周りに、ぼんやりと弱い大きな球体・・・。」

「あっ・・・。」

 黙っていようとしていたオレは、思わず声をあげた。

「これは・・・もしかしたら、二つの形質変換が出来るかも知れない。」

「も、もういいです!気分が悪いので、医務室に行っていいですか?」

 声が震える・・・。

「え?あ、そうですか、それは大変ですね。どなたか、付き添ってくれる方を・・・。」

 早く退室したい。

ここから逃げ出したい。

「じゃ、オレの後ろに座っている人に・・・。」

 どうせ、元々顔見知りなんていない。

誰でも良くはあったが、この際はっきりしておこうじゃないか。

オレは"視殺の女王"と密かに命名していた、ラスロー王子の侍女を指名した。

大丈夫、彼女はきっとラスロー王子の不名誉に繋がるような事はしない。

と、思う。思いたい。

まぁ、殺されるような事はないだろう・・・多分。

「そう、それじゃ、えぇと、オリガさんでしたか?付き添いお願い出来ますか?」

「・・・・・・はい。」

 たっぷりと間があったな。

最終的に了承したという事は、やっぱり根が真面目なんだろう。

あ・・・なんか、本当に気持ち悪くなってきた気が・・・。

吐き気までとはいかないが。

無愛想にオレの傍らに来ると、オレをひと睨みして肩を貸してくれるオリガさん。

大丈夫だ。

女性に睨まれるのは、ラミア姫で充分耐性が出来てって、今オレすごく悲しい事に胸を張っている気がする。

とことん情けない皇子だな、オレ。

「はぁ・・・。」

「大丈夫?」

 溜め息を具合の悪さと勘違いしたオリガさんが一言呟く。

ほら、な?

根が真面目で純粋で一途なだけなんだよ。

たまらないね、全く。

オレは、そういうの何時なくしたんだろうね、ホント。

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