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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Lack! 皇子は完璧じゃなくていい。【後】(ミリィ視点)

久々の女性(別)視点。

・・・いや、忘れてたワケじゃないですよ、ホントだよっっ。

 夕食が終わり、後片付けをして就寝するまでに何回二人を見比べただろう。

でも、やっぱり変わらない。

慈しむようにオリエちゃんの頭を微笑みながら撫でて。

その首にかけられてるのは、確か・・・ううん、絶対そう。

「今日もお疲れ様、ミリィ。」

「あ、はい。」

 会話が続かないよぉ。

「お、オリエちゃん、寝ちゃいましたね。」

 って、こんなコトが言いたいんじゃなくて!

ちゃんと聞かないと!

「ねぇ、ミリィ?ついて来てくれて、ありがとう。」

 こんな時に言わなくても・・・。

「今日だけじゃなくてさ、リッヒニドスにも・・・さ。」

 それは私の台詞なのに。

片田舎から出てきて、城で大失敗ばかりして、周りからも孤立し始めてた私を連れ出してくれたアルム様。

今回だって、一人では絶対に来られないような遠出で、勉強だってさせてもらえてる。

感謝してもしきれないのに・・・。

「オレはさ、本当に弱っちくてさ、周りが言うようにダメな皇子なんだよな。」

「そんな事・・・。」

 そんな事はない。

長い間、皇子と一緒にいたワケじゃないけど、少なくてもリッヒニドスにいた時の、あの時のアルム様の周りにいた人間で、そんな事を思った人なんかいない。

「本当にダメでどうしようもなかったオレの周りに人がいてくれる。それが今、結構気に入ってるんだ・・・だから・・・。」

 横で寝息を立てているオリエちゃんの髪を一撫でして、私を見る。

その瞳は何処までも真っ直ぐで、リッヒニドスに居た時と変わらない。

弱さなんて、何処にも感じない。

「絶対にこの手に取り戻すから・・・。」

 どうして・・・。

「どうして、アルム様は何時も・・・。」

「ん?」

 わかってない。

「全っ然ダメですっ。」

 私はオリエちゃんが起きない程度に声を張り上げる。

「ダメ?」

「そうです!本っっっ当にダメ皇子です!」

 ぎゅっと力一杯に自分の拳を握る。

「いっつも誰にも言わない!しかも一番危ない事だけを自分で抱え込んで!」

 私が小さい頃、お姉ちゃんが言ってた。

『人は独りで生きられないから歴史があるのよ』って。

その時は壮大過ぎて何も言えなかったけど、今はわかる。

"書く人間"と"書かれる人間"がいなきゃなんない。

戦争だって喧嘩だって、相手がいなきゃ出来ない。

"人は独り"じゃダメなんだ。

「だから、私達がいるんじゃないんですか?」

「・・・ごめん。」「許さないです。」

 だから、私は今のこの時にここに居られれて良かったなって思う。

こんな私が、今誰かの役に立てそうなんだもん。

しかも、私を必要としてくれて、こんなにも優しくて。大好きな人の役に。

「わかるまで許さないです。」

 私はアルム様を思いっきり抱き締めた。

「わかるまで離さないんだから。」

 私にしては、すごく大胆だと思うけど・・・かなり大胆かな。

顔も熱くなってるし。

アルム様が私達が笑顔でいられる為に危険な目に合うなら、私達はアルム様が笑顔でいられる様にしなきゃ。

「聞いてますか?」

「・・・うん。」

 私はリッヒニドスの夜にしたように、アルム様の肩に近い背中辺りをぽんぽんって。

お姉ちゃんが昔、泣いていた私にすいてくれたみたいに。

アルム様にだって、効果覿面なのは証明済みだし。

そのまま寝台の中央、オリエちゃんの横に倒れこむ。

「何時か・・・一度、私の故郷にも行ってみません?私、今回の旅行で味しめちゃいました。」

 他愛のない会話。

少しでも、現実逃避だろうとなんだろうと、気が紛れるなら。

「何も無い所なんですケド、自然があって、湖とかで泳げて。あ、果物も美味しいんです!」

「うん。」

「"皆"で一度行きましょう?」

 我ながらいい案。

「皆でね・・・いいかも知れない。」

「そう皆でですよ。」

 皆がいる事に意味がある。

皆の中心にアルム様がいて・・・。

「・・・大好きですよ、皆。"私達の皇子様"が。」

 目の前の皇子は、子供の頃に読んでもらった童話の完璧な王子様ではないけれど。

名前のわからない王子様なんて存在よりも、精一杯、私達の為に頑張っているってわかる。

そんな皇子様のが絶対ステキだと思うもん。

だから・・・。

「アルム様は独りじゃないですよ。」

 今はそれだけ言えれば充分だよね?

私、ここに居ない皆の分も頑張れてるよね?

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