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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Kindness! 皇子は時に大人気なく。【後】

 うん。

特に驚かないぞ。

何処の世界にもいるもんだし。

正確には何処の国もか。

やってもいないのに決めつけたり、考えようとしなかったり。

その方が楽だし、簡単だもんな。

脳筋とか天然かも知れないけれど・・・目の前の女性は嫉妬か?

「はぁ、別にいいよ、やりたくないなら。正直、君達はオレには関係ない人間だから。」

 オレはそこまで傲慢でも優しくもない。

目に入るもの手に触れるもの、その全てを守れたりするなんてこれっぽっちも思っていない。

だから、必死になるしかない。

同じ事を考えた姫が、少しでも部下の生存率を高めたいと思った。

丁度良いお人好しのオレが、馬鹿面下げてのこのこ歩いて来た。

それだけの話だ。

だから、本人達が必要ないと言うならば別にそれでも良い。

選択肢はオレにあるわけじゃない。

多分、目の前にいる人間は、殺意を以って人を排した事なんてないんだろうから。

それはそれで幸せな事だろう。

「大切なモノを守れずに死んでもいいなら、それでいいんじゃない?」

 それがどれだけ悔しい事か。

「オレだったら、その確率が減るかも知れないってだけで飛びつくけどね。」

 オレは戦い方を充分観察出来たから、それなりに足しになった。

戦い方も色々と考えられたし。

シルビアの事で落ち込んでいるのは本当だし、今だって少しでも強くなりたいし、なろうと思っている。

そういう意味で、いい気分転換にはなった。

「ま、自覚がなければ、どうにもならんよな。」

 ぶっちゃけ強くなれるなら、師匠であるバルドくらいまでなりたいと思っている。

特に今回のような状況では。

「トウマさん。」

 完全に興が削がれたオレの前に姫が立つ。

「何さ?」

 オレが近衛兵で彼女を守る立場だったとしたら、信用出来なかろうが何だろうが、死に物狂いで訓練するんだろうなぁ。

あぁ・・・オレが男だからというのも大いに関係しているが。

「はぁ・・・もう、さ、あれだよ?」

 自分から言う時点で、オレ、アホだよな。

「姫がオレに嘘をついたり、仲良くしてくれるからだよ?こんな事すんの。」

 美人だし。

あ、これは全く関係ないか。

「・・・構えろ。」

 オレは仕方なく、さっきの女性騎士の一団の中。

オレに反論したヤツを指さす。

「馬鹿にするんだったら、身体で意味を分かれ。」

 少しずつ殺気を込めるオレ。

構えた女性に向かって有無を言わさず、得意の最大加速。

直線的に突っ込んでくるオレを豪快に叩き伏せようとする斬撃を、加速の緩急をつけてかわす。

しっかし、この国の女性は馬鹿力だよな。

ブゥンっと空気を切る大きな音と風が耳元で聞こえた。

「くっ。」

 斬撃をかわされた女の呼気の直後、斧と反対側の柄が振られる。

「いよっ!」

 点で攻撃出来るモノを線で振ったら、さっきの斧の攻撃と変わらないだろうに。

かわした柄の棒を掴んで、グルリと自分の身体ごと逆上がりに半回転。

勿論、彼女の振った力を利用して。

「どっせいぃっ!」

 回転する体の勢いのまま、オレの足を彼女の首に絡める。

絡めた瞬間に柄から手を離すと、ついた勢いは上半身に伝わり彼女ごと地面に倒れる。

「はい、ポキっと。」

 腕を取り関節と首を絞める・・・真似。

真似だよ?

男だったり、オレの部下・・・う~ん、ザッシュとかなら折ったカモ知れないけれど。

まぁ、ザッシュがこんなヘマをするわけがないが。

「このように間合いが長い分、懐が弱い。また例え強固な鎧で斬撃が通らなくともだ。」

 立ち上がり身体を払う。

「人間には投・打・極の徒手攻撃がある。特に極められたら確実に人体は破壊される。」

 だからのあの練習。

「よって、懐に入らせない練習と懐に入られやすい展開を理解する練習だ。」

 バルドとかの上級というか達人級になると、自分が迎撃しやすい位置だけをワザと空けておくんだよな。

だからやりにくい。

「頭の中で常に武器には点・線・面。人には投・打・極という攻撃分類があるという事を叩き込む。」

 明確に意識して動きを学ぶのと、そうではないのでは動きの組み立て方が違ってくる。

「常に意識しながら訓練する事が・・・ん?」

 つらつらと言いたい事をタレ流していて気づかなかったが、皆の視線が・・・。

「何?どうしたの?」

 全員の視線が痛い。

あれ?

オレは頼まれた事をして、聞かれた事に答えただけなんだけれど・・・?

「す、凄いです!トウマさん!」

「はひ?」

 興奮したアイシャ姫が猛然と駆け寄って来る。

「流石に姫が連れてきた方だ。」「次は私とお願いします!」「あーん、私もー!」

 アイシャ姫の声を皮切りに、一斉に皆が騒ぎ出す。

何故に?

「強いとは思っていましたけれど、これ程までとはステキですわっ!」

 ・・・強い?オレが?

「またまた、そんな風に調子づかせて、次は何をやらせようっていうんですか?」

 オレは生まれてこの方、自分が強いなんて一度も思った事はない。

特に最近はもっともっと強くならねばと毎日思っているくらいだし、今のだって観察して練った戦い方を試しただけだ。

そりゃ、事前に見て情報を整理して、対策を立てれば誰だってあれくらい出来る。

出来なきゃ死ぬだけだ。

本当はこれを相手と打ち合う間、もしくは対峙した瞬間に出来なければいけないのが戦い。

・・・ぞっとするな。

まぁ、それ以前に相手との力量差を測れるか否かってのもある。

単純にオレはこれが得意なだけで、負ける相手とは戦わないだけなんだが。

「私が"惚れ込んだ"通りですわっ!」

「・・・それを言うなら"見込んだ"でしょう?」

 結局、その後もすったもんだで、このキャイキャイ五月蝿い集団に囲まれる事になった。


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