Kindness! 皇子は時に大人気なく。【中】
オレはここに来て、様々な事を学習しているし、新発見もしている。
自負もある。
そんなオレが今日、たった今学習した事と言えば"常に完全武装でいろ"だろうか。
「帰りたい。」
オレを見つめる目と目と・・・あと視線?
「で、ワタクシめは何をすれば宜しいのでしょうかねぇ?」
軽装の鎧に身をかためた集団が、オレを観察している。
観察だ。
檻の中にいる珍獣の気持ちを現在味わっている。
「というか、皆、女性なんですね。」
「私の近衛師団という程度なので。」
「はぁ。」
とりあえず、身を守る得物か逃げ出す翼が欲しい。
ちなみに集団の規模は、十人前後。
「とりあえず訓練とやらは?見せて頂けたりするのでしょうか?」
どうにも訓練という空気が全く感じられないが・・・。
「そうですね。では、どういたしましょう?」
「いや、何故オレに聞く?」
思わず今までの丁寧語が飛んでしまっただろ。
"見る"ってやっぱり"指導"って意味だったみたい。
オレが人に教えられる人間かっての。
「まぁ、何時も通りで。オレも見たい事だし。」
もう一度脱いでしまった丁寧語は、放置だ。
今更取り繕ってもオレが間抜けに見えるだけ。
それに重武装や間合いの広い武器の動きって見てみたいし、興味がある。
だからついて来たワケだしな。
「はい。では、皆さん、何時も通りの組打ちを。トウマさんもお気づきになられた事がありましたら、おっしゃって下さい。」
「はぁ・・・。」
大体において、まず、この姫がオレに丁寧語を使っている時点で様々な矛盾が生じている事に気づいているんだろか?
兎に角だ、オレの足しになるといいなぁ。
「それでは・・・始め!」
アイシャ姫の号令とともに棒の先端に重りと布を巻いた物を振り回して打ち合いを始める。
冷静に考えて攻撃とは、まぁ、得物を相手にブツけるまでの手段が色々あるが、それはばっさり切るが如く割愛。
割愛すると、最終的に点・線・面しか攻撃ってないんだよ。
武器っていうのも、この三つのどれが得意とか特化しているかしかない。
例えば、オレの国の双剣の場合、線の攻撃が得意だよな、当然。
でも、一応突きが出来るから点もある。
で、斧槍ってのはある程度どの手段でも取れる武器だ。
柄を使えば点も線も一応あるし、振れば線、斧の幅広い部分だって武器自体の重量があるから面だってなる。
何より間合いの長さがある。
・・・逆に"重い"ってのが弱点だが。
「ところで、普段は基本全身鎧?姫様みたいな。」
軽装の鎧を着て動いている集団を指差す。
どうにもこうにも気になる性分みたいだ、オレ。
「え?えぇ、そうですが。」
「ふむ。」
第一段階として、懐に入る。
間合いが長いしな。
んで、懐に入ると全身鎧の硬い防御。
そうなるとやっぱり攻撃側は点の攻撃が堅い。
鎧の隙間があって、そこを瞬時に狙って通せる技量があれば。
そういう意味で、例のラスロー王子の選択は正解だよなぁ。
「効率の問題というか、消去法というか、寧ろ二択か?」
「どうかなさいました?」
一人ブツブツと呟いているオレにアイシャ姫が声をかけたところで、思考から復帰。
嫌だなぁ・・・なんで、オレ、思考が戦って勝つ方法とかなんだろう。
「ねぇ、姫?」
「はい。」
「この人達をどうしたいの?強くしたいとかだったら、人選間違えてると思うんだけど?」
第一に他国の人間に頼んでどうするよ。
「私は思うのです。戦う勇敢さも大事ですが、戦わないのにこした事ないと。」
「そりゃあな。」
思いつめたように瞳を閉ざすその表情が痛々しい。
確かに、戦わずに勝ち続けるってのが指導者として最優秀なんだとオレも思う。
大賛成だ。
政治にはそれが出来る。
軍にだって、やりようによってはそれが出来る。
「それでも戦わなければならならい時があります。それならば、私はどんな事があっても部下達に生き延びて欲しい。」
そんなに真剣な表情されてもな・・・。
そう言えば、姫の国はラスロー王子の国と緊張状態にあるんだっけか?
マール君の種族の自治領が国境線にあるからなぁ。
弱った・・・。
「らしくないと思われるかも知れませんが、私、これでも一応"女"なのです。命を産む者として・・・。」「もういいよ。」
あぁ・・・なんてオレは・・・。
くそぅ・・・。
姫の言葉を遮ったまま肩を落とす。
本当、自分のやる事を置いといて、なんだかな。
「ねぇ、姫様?オレってそんなにお人好しに見える?」
思わず聞いてしまう。
「あぁ、やっぱ答えなくていい。」
そういう風に見えるから頼んでんだよな。
確かにオレの剣術は、死に物狂いで相手を倒して、何が何でも生き延びる事だけを重視している。
貴族とかの一対一とか誇りが云々とかいうお上品(?)なものからは、完全に逸脱している。
・・・オレ自身がそういう剣を望んだからなんだけれど。
「今、自分の性格を矯正してもいいんじゃないかとだけ思った。」
本気で。
仕方なくオレはとぼとぼと歩いて姫から離れ、訓練している者達の所へ向かう。
「あ~、オレの言う通りにするのは癪かも知れないが、聞いてくれや。」
ピタリと止まる集団。
集中力が高いのは良いコトだ。
よく指示を聞けているってコトだしな。
「えぇと、自己紹介は省略。このまま二人一組で、どちらか片方は得物をその辺に置いてくれ。」
何?誰?
この偉そうなのヤツ。
恥ずかし過ぎる。
「得物を持っていない方は、間合い外から相手に触れる。得物を持っている方は間合いに入れない様に捌く。」
昨日の速さ対力の疑似再現だ。
詳しい説明もダルい、身体でわかれ。
オレはそうやって、何度もバルドに叩きのめされた。
「相手に触れるか、一定時間過ぎても交代。交代時に負けた方は腕立て20回。」
うん、間合いが有利っていうのは、勝敗の分かれ目になる。
およそ七割くらい。
いや、これはオレの実感ね。
「あのォ?」
「ん?」
近くにいた女性が手を上げてオレに答える。
「そんな子供の遊びみたいな訓練、何の意味があるんですか?」