Hurry! 皇子は最中に躍り出る。【後】
おニューな壁紙で心機一転だっ。
・・・正直、今更会話文と文章文の行間空けるのもなぁ・・・。
でも、某サイトの計算曰く、会話率は27%と3割切ってるからなぁ。
あぁ、前も全く同じ事を同じ相手にやったよなぁ・・・全く芸がナイ。
ついでに空気も読めてない感がする。
そんな事を考えながら、オレは野次馬の何人かを掻き分け激突する二人の間に踊り出た。
「ッ、痛ゥ・・・。」
言っておくが、オレは痛みを黙殺する事に慣れているだけであって、我慢強いというワケでも痛みを感じないワケでも全然ない。
「トウマ?」
呆れを含んだ驚きと共に、自分の槍斧の柄を片手で受け止めているオレを見てる。
くそぅ・・・右手打撲したかな、この馬鹿力めっ。
骨折一歩手前のヒビかも知れん。
そして、問題はオレの前に押し出す様な状態で、掴んだ左手の細剣。
掴んだオレの手から、ぽたぽた血が流れ出ている。
「と、この様に何やら互いの武器に手違いがあったようなので、失礼ながら割り込まさせて頂きました。」
キッと、このアホな事態の引き金になった例の偉そうな赤服オヤジを睨む。
あ、偉いのか。
「何度も無粋な真似をして申し訳ありませんでしたね。」
隣のラスロー王子にも一応、な。
「いや、止めに入ってくれて良かった。済まないが早く手を離してくれ。君の手当てをしなければならないだろう?」
前回といい、意外と聞き分けがいいな、彼。
王子とか皇太子とか、一癖も二癖もあるのが当然だと思っているオレが変なのか?
いや、そんな事はない。きっとナイ。絶対ナイ。
「競う交流も大いに結構かと存じますが、どうせなら一生の付き合いになる交流の方が私は欲しいですね。」
本音を何の嫌味もない様にさらりと述べて、ラスロー王子とアイシャ姫の武器から手を離す。
「素晴らしい!それこそ、この施設の理想ですわっ。」
横合いからの声は、何処から現われたか謎な施設長だ。
さっき見た距離より近くで見ると、肌の白さは雪の如くというより氷の透明感。
「それでは、私はこれで。」
会話するのも億劫だが、何よりも"目立ってしまった"事実をこれ以上拡大したくない。
さらりと流して、マール君の居る方に歩く。
何時もながら、やってしまってから思うんだが、さてこの状態をミリィにどう説明しよう・・・困った。
バルドみたいに筋肉と精神力で、傷とか血流とか抑えたりできたらいいのに・・・。
人間の範疇にいる方がいいか。
「マール君のせいで目立ってしまったじゃないかー。」
どうしてくれるんだっとばかりに睨んでみる事にする。
「えっ?!あぅ、うっ、う~。」
瞳を潤ませて泣き出す一歩手前のマール君。
耳までしゅんと心なしか丸まってるのが楽しい。
いいな、亜人種。
「まぁ、いいや。部屋で手当てしてもらえる?右手は固定しないとヤバいかも。」
何もしなくても、ズキンズキンと鈍痛がしてくるわ。
「あ、はい!します、します!」
コクコクと激しく縦に首を振りまくるマール君、首落ちるぞってそれはないか。
意外と可愛い。
オリエの次に。
そこは譲らないぞ、流石に。て、何をアホな事を・・・。
「おろっ?」
マール君を部屋に促しながら、今更左手の感覚がない事に気がついた。
「どうしました?」
傷は深くない。
変な筋肉や腱を切ってもいない。
ただ感覚がなく動きも鈍い。
「と、なると・・・。」
冷や汗が出てきた。
感覚はもう肘辺り近くまでなくなってる。
「ご丁寧なコトですね。と思うわけだよ、マール君や。」
「?」
自分の意思に反して、指先はぷるぷると痙攣まで始めていてだな。
「ね、マール君。悪いけど傷薬以外にも用意して。剣にしひれくふりが・・・。」
呂律も回らなくなったか。
舌を噛まないようにしないとな。
歩けなくなったら、マール君一人じゃ運ぶのも大変だ。
完全に力が入らなくなる前に、大股歩きで出来る限り部屋へと進む。
意外と即効性だけれど・・・後遺症の残るヤツじゃないだろうな?
それだと大問題になるが、これを仕掛けた人間の目的がこの施設の廃止とかじゃない限り、有り得なくはないなぁ。
でも、廃止になっても誰が得するワケではないし、タチの悪い悪戯の類だろうか。
「お?」
膝がカクカクしてきた。
う~ん、マール君には悪いが、あとは何とか運んで行ってもらう事にしよう。
オレは顔面を打たない様にその場に崩れて倒れた。