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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅰ章:黒の皇子は決意する。
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偶因と鳥籠と十人十色。【前】

今回は長くなったので前・後と分けました。

新キャラ紹介ですので。

 我ながら何と短絡的で幼稚な事をしたんだろう・・・。

ドタバタとのたうち回った後、とりあえず寝た。

翌日の昼過ぎくらい迄。

いや、1人でだよ?

オレ、どんだけ我が儘プーよ。

そんな風にして、オレはミランダを抱きたくないし、傷つけたくない。

軽んじていい存在ではないんだ。

彼女には、どうやっても幸せになって欲しい。

特にオレはこんなにも濁っていて、汚くて、狂いかけなのに。

オレの中で今、穢れていない部分なんて魂の中のトウマの部分だけだ。

「そう簡単に抱けないよね・・・。」

 自分の目に映る手がまるで汚物や血に塗れてるみたいだ。

なのに、彼女に甘えてしまう始末。

本当に短絡的で幼稚だ。

「アルム様、少々、お時間宜しいですか?」

 扉を叩く音。

声はミランダだとすぐわかった。

流石に姉弟のように育ったんだ、間違うワケがない。

「いいよ、何?」

 実は、兄上の声の方が間違い易い。

こんな事を兄上に言ったら、ショックで一日頭のネジが外れてしまうだろう。

「失礼致します。先日の件の候補の者をお連れ致しました。」

「早ッ。」

 まさか、昨日一日と今日の半日、合わせて一日半で、そこまで進むとは思わなかった。

「主の命に迅速かつ、的確にお応えするのは当然の事ですから。

 では、入って下さい。」

 ミランダに案内され、ぞろぞろと人が入って来る。

メイド服姿が3人。

料理人も兵士も同じ人数。

合わせて9人だ。

昨日言っていた数より更に少ない。

自分の人徳の無さ加減に本当、泣きそう。

確かに表舞台には、全くと言っていいほど出ないようにしてたからな。

人気どころか、実は知名度も低いんじゃね?

「悪いね。個々の仕事もあっただろうに。

 ただ、どうしても直接会って話してからが良くてね。」

 そう言うと、9人は9人とも略式的に礼をする。

こういうのはイマイチ苦手だ。


「とりあえず、侍女達から自己紹介をしてくれ。」

「は、はい、私はミリィと申します。」

 オレンジに近い明るい茶髪の少女が一礼をする。

背はオレよりかなり小さい。

というか、ここにいる誰よりも小さい。

まさか、獣人とか亜人じゃないよな?

「大丈夫、そんなに畏まらないで。」

「はひっ!」

 逆効果だった。

小さい彼女は、直立不動で固まってしまった。

一呼吸遅れて、ばいんっと胸が揺れる。

作りは小さいクセにそこだけは大きい。

本当に獣人とか亜人(例えばホビット)じゃないよな?

何か、兎耳とかが似合いそう。

「ミリィはどうしてついて来る気になったんだ?」

 とりあえず、これだけは全員に聞こうと決めていた質問だ。

「いえ、あの、その・・・。」

 言葉を濁して、途端にしゅんとなる。

「気にしないで言ってみ?」

「あ・・・クビになるよりはマシかな・・・と。」

「クビ?」

「あの、私、失敗ばっかりで・・・。」

 あぁ、仕事の習熟度が低いのか。

確かにオレは今、誰の手だろうと借りたいくらいだ。

仕事の習熟度なんざ、そのうち上がる。

「う~ん、それだけで決心しちゃっていいの?

 多分、滅多にというか、こっちに帰ってこられないよ?」

「大丈夫です、私、皇都の生まれじゃないから、特に拘りはありません。」

 碧色の瞳がうるうるしている。

まるで、オレがイジメたみたいじゃないか・・・。

「そうか。じゃ、頑張ってもらうよ。そばかす可愛いね。」

 彼女の鼻をちょんと押してやる。

彼女はぽかんとしているが、面白いから良し。


「はい、次。」

「ホリンと申します。」

 紫の髪に褐色の肌で金眼。

オマケにとんがり耳。

どっからどう見てもダークエルフだ。

エルフが人間社会、特に皇族に仕えるなんて聞いた事がない。

基本的に独立独歩で、この国より排他的な風習だからな。

それにこの国は、そういう人種には差別的だというのは既出。

「ホリンは、森のエルフの集落の出か?」

 国土の森林面積が多いこの国は確かにエルフの集落がいくつかある。

「はい。だから寧ろ、そっちのが慣れてるし仕事も楽そうだから。」

 この言葉に周りの皆は目を剥いているが、こういうのもオレは嫌いじゃないぞ。

多種多様な性格があって然り。

更には多種多様な種族がいて然り。

生まれどうこうは、誰も選べん。

「正直だな、ホリン。悪くないぞ。ただ他の偉そうなヤツには、

 そんな感じにすると大変な事になるから気をつけてな。」

「はーい。」

 元気良く手を挙げられた。

うん、ダークエルフの侍女がいるなんてオレぐらいだろうな。

まさに異端的な立場のオレに相応しい。

「しかし・・・ホリンの肌は綺麗だな。ダークエルフを初めて間近で見たよ。」

「これから何時でも見れますよ~。」

 腕をまくってブンブンと振って見せているホリン。

明るいのはイイコトだ。

何より志望理由が明白でいい。


「うむ、次。」

「シルビアと申します。」

 今度は長身のお姉さんだ。

・・・オレの基準な。

お姉さんとしておいてやれ。

女性に年齢を聞く男は死んでも良し。

それくらいの気持ちを持つべきだ。

正直、さっきのホリンだってダークエルフ。

外見年齢と通常年齢は人間にあてはまらない。

怖くて聞けるかっ!

で、オレの基準というのは、ミランダと同じくらい。

・・・いや、ごめん、ミランダより年上って感じ。

金色のロングの髪に藍色の瞳。

ぱっと見、いいとこのお嬢さん。

美人だ。

着る服がメイド服じゃなくて、貴族の服と間違ったんじゃないか?

と、思うくらい。

都会育ちなんだろうか?

なら、田舎は厳しいのでは?

「シルビアもあんな森に囲まれた田舎で大丈夫か?」

「はい~、元々都会は好きではないので~。遠い田舎で長閑に~は、

 望むとこですぅ。」

 ・・・何というおっとり感。

「どうかなさいましたかぁ?」

「いえいえ、お願いします。」

「はい。」

 にっこりと微笑んで、じぃ~っとオレの目を見詰める。

「何?」

 にこにことしているのだが、何か、その、見詰める目が怖い。

「私は何も褒めてくださらないのですか~?」

 いや、怖いって・・・。

「あ、いや、お姉さんですね。」

 意味不明な言葉を口走ってしまった。

というか、褒め言葉ですら無い。

「はい~。お姉さんですから、沢山頼ってくださいね。」

 ばんっと自分の胸を叩くシルビア。

その胸も何というか・・・お姉さんだった。

寧ろ、魔王。

つか、さっきの意味不明の言葉で良かったんだ・・・。

深いのか浅いのかわらからんぞ、この人。


「料理人のクリス、レーダ、ホビィです。」

 次に挨拶したのが、例のお気に入りの料理人だ。

紺のショートに同色の瞳。

白の料理服が胸の緩やかな曲線を描いている。

「て、クリスは女だったんだ・・・全く気付かなかった。」

 その一言で眉をしかめられた。

「何か問題でも?」

「いや、クリスは素材選び、生かし方が素晴らしいからな。

 向こうの森の幸の料理、期待している。

 男とか女とか一々面倒だ。料理人は美味い料理を作ってこそ。」

 何度も言うが、オレは能力があって相手が望むなら、

人種とか性別とかは全く気にしない。

というか、気にしたって仕方ない。

選べねぇもん。

選べるんだったら、オレが真っ先に"ヴァンハイト"以外の人間を選びたい。

「今回はたってのご指名を過大なる評価を頂き・・・。」

 考えが目の前から逸れたら、クリスが口上を述べ始めた。

「あー、堅いのは無し。城内での命、任せたぞ。

 クリス、レーダ、ホビィ。」

「「「はっ。」」」

 大袈裟じゃない。

コイツ等が毒なんぞ盛ったら、"『あっ』という間に。"なんだから。

ちなみにレーダは黒髪を後ろに回した、糸目の細身の男。

ホビィは小犬みたいな瞳のいかにも人の良さそうな大柄の男だった。

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