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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Gathering! 皇子が潜入した先は。【中】

「と、言うコトで不戦敗を選択する事した!」

 式が終って、例の長方形の建物の中から一室がオレ達にあてがわれ、部屋に入っての第一声。

「え?」

「オレは戦わない。国の威信なんて知ーらないっと。」

 無駄な対抗意識は捨てましょう。

「いいんですか?」

 ミリィはさも大事だと言わんばかりに瞳を大きく見開く。

「知らん。見栄を張りたいなら、兄上が戦えばいい。」

 うん、それがいい。

神器を振り回して、相手をなぎ払う兄上は些かながら大人気ないっちゃ、大人気ないが。

「まぁ、確かに各国の代表が誰が出て来るかは気になる・・・が。」

 第一、宗教国家とか言うアレは、そんな争いには乗ってこないんじゃないだろうか。

「が、オリエと遊んでる方が楽しいもんなー。」

 オリエを抱き上げてくるくると回る。

何か、コレ、定番になりつつある。

突然でも一切嫌がる様子がないというのもいい。

単純に面食らっているとか、呆れているという線も否めないが。

「可愛いぞ、オリエ。」

 寧ろ、どう屁理屈を並べ立てて彼女を国に連れて帰るかを考えた方が、絶対に精神的に良い。

「なんて、上機嫌のまま生きていけないよなぁ・・・。」

 オリエを寝台に下ろして、溜め息をつく。

確かに一時、国からも地位からも離れて気分が高揚しているとはいえ、大半が空元気だ。

それはわかってる。

脳裏では『早く情報を集めろ!』とがんがん言ってきて、それが渦巻いている。

結局ここに来て今現在で理解した事は、建前で塗り固めきれない各国の見栄と、国の政治の重要さだ。

オリエを助けたのだって、ミリィの頼みとオレの罪悪感を軽減する偽善と自己満足。

彼女が愛らしいと思うのは本心だけれど。

なんだろう・・・コレってアレか?

"躁鬱"ってヤツか?

「あ、トウマ様!この部屋、お湯を張れる部屋がありますよ!」

 お?

まるで簡易の宿屋並だな。

寝台が大きいの一つに、一人用一つってのが気に入らないが。

二人部屋じゃないのか?コレ。

「あ、まさか、オリエが小さいからの仕様?」

 ちらりとオリエを見ると、またキョトンとしている。

喋れないから、細かな反応が取れないのだろうか。

「んじゃ、ミリィ、オレが水を汲んで来るよ。」

「え?」

「水を汲まないとお湯をわかすどころか、入浴すら出来ないだろ?」

「あ。」

 得心がいって良かった。

「わ、私が汲んで来ますよ!」

「いいよ。今は身分とか関係ないんだし、力仕事は男がやるもんだろ?」

 今のうちに普段体験しないような事を満喫しなくては。

水汲みを満喫というのも笑えるな。

軽い鍛錬だと思えば、なんて事は無い。

「普段出来ないコトねぇ・・・。」

 ここは試しに。

「オリエ、お風呂をオレと一緒に入るのと、ミリィと一緒に入るのとどっちがいい?」

 ちょっぴり考える仕草をして、おずおずとオレを指差すオリエ。

恥ずかしいのか、顔がほんのり赤い。

ふむ。調子に乗り過ぎただろうか?


「トウマ様・・・。」

 ミリィが呆れてら。

「んじゃ、ミリィ。オレと一緒にお風呂に入るのと、オリエと一緒にお風呂に入るのとどっちがいい?」

 更に調子に乗ってみようじゃないですか。

「へ?変な事を聞かないで下さい!」

 オリエより、尚、盛大に顔を赤らめたミリィに睨まれた。

何というか・・・変に知識がある分・・・。

「ミリィのスケベ。」

「トウマ様に言われたくないですっ!!」

「あはは。」

 いやいや、どうだね、楽しいね。

皇子という地位が無かったら、こういう風に同世代の女の子と接していたのかね、オレは。

「・・・誰だ?」

 ふと、扉の外に人の気配を感じた。

扉が叩く音がする中、オレはすぐさま自分の剣を一振り手に取る。

「アイシャ様の使いで参りました。」

 扉越しに聞こえるくぐもった声。

「アイシャ?そんな人物は知りませんので、お引取り下さいな。」

 大人しく引き下がってくれないかなぁ・・・なんて。

「え?!でも、他にトウマという方がいらっしゃらなくて・・・姫様は、"トウマという人物"を連れて来いとしか言わなくて・・・。」

 あれ?何故かすすり泣くような声が・・・。

何だ?これじゃあ、オレが悪者みたいじゃないか。

「・・・君、一つ質問していいか?」

「はい・・・なんでしょう?」

 二百歩程譲ってやろうじゃないか。

「君の所の屋敷、浴場広い?」

「はぃ?」

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