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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Feel! 皇子の手が掴みたいモノ。

「ちわー。」

 底抜けに明るい声を出してみた。

段々と下がってきた気分が嫌になってきたから。

「お、来たかい。」

 朝早めにも関わらず、しっかりとした反応。

例の施設に行く前に調整を頼んだ武器を取りに来ていた。

「朝からまた刺激的な・・・。」

 今朝もやっぱり彼女は下着姿だった。

「アンタだって、今日は見違えてるじゃないか。」

「あー、もうそれは突っ込まないで。」

 今のオレは正装なのである。

あぁ、勿論、皇子としての正装ではない。

「それ以上言われると、立ち直れないから。」

「そうかい?ふぅん、双剣の白獅子ねぇ・・・。」

 あぁ・・・あぅ・・・一番聞きたくない事を・・・。

一応、ヴァンハイトからの推薦という事で施設に入るので、国の何処かに属さなければならなくなった。

それを見越して、兄上が用意していたのがコレ。

"双剣を掲げし白き獅子"の姿の紋章が入った服。

"兄上の近衛第一師団所属の証"・・・勘弁しろ。

本当に。

まさか、これが本当はやりたかっただけじゃないだろうな?

ヴァンハイトの兵士の何割の人間が、この服に憧れてると思ってんだあの兄上は。

「本当にヤメて・・・今すぐにでも脱ぎたいくらいなんだから・・・。」

 肩もがっくりと落ちるさ、そりゃ。

「ま、"アレ"に行く人間は基本的にワケありか、優秀かのどっちかだから驚かないケドねぇ。」

 ニヤリと笑う。

「とにかくだ。出来てます?」

「勿論。」

 そう言って、銀色に光る長剣を投げてくる。

「ほっ。」

 鞘と柄を掴み、即座に抜き放つ。

空気を切る音がするほど円形の軌跡を描きながら、柄の端に指をかけくるりと回し納剣。

「へぇ。」

「少し、手元を重くしてくれるか?」

 驚いた。

意外に軽く、硬質。

しかも何だ?この外見は?

買った時は、もっとずっとくすんだ銀色だったぞ?

「ん?磨いたら、そんな感じになったのさ。」

 訝しげなオレの表情を見て、すぐさま答えをくれた。

「どうやら、銅と鉄の比率がえらく低いらしい。」

「それで軽いのか。何が使われているんだ?銀か?それにしては硬い。」

 銀は細工物に使われるくらいで、本来は硬質なものではない。

「銀と鋼と白金かな。」

「ヲイヲイ。そんなモノをあんな値段でいいのか?」

 どう考えても素材の時点で高価だ。

大体、鋼だけでも高価だっていうのに、そんなもので剣を造ろうとすらしないぞ、普通。

「剣との出会いなんて運命だよ、女と同じ。」

 ディーンの剣もか?

「実感してるよ、そんなの。」

「ん?」

 聞こえなくて良かった。

「簡素な形も多分計算上の事なんだろうな。」

 ぱっと見て、鋳造に見えるから、型も硬度を上げるのに一役買ってるんだろう。

「次はこっちだね。」

 双剣の柄を手に取り、鞘を残して抜く。

両手で交互に円を描き、空中で左右を持ち替える。

どちらの剣が、どちらの手により馴染むか。

それを確かめて納剣すべく柄を彼女に向ける。

「これも何か・・・不思議なカンジがするな。」

 何とは言えないが。

「どちらも年代物だからね。付加がかかってるかもね。」

「何か触ってもはっきりしないんだよ。」

 明確な反応があるワケでもないんだが、それが余計に気になって何とも。

・・・う~ん。

「振っているうちに気づいた事があったら教えてくれよ?調整するにも、付加が判明しても。」

「ああ、そうする。」

 微調整された長剣を確かめ、相槌を打つ。

「いい仕事だ。そういえば姉さんの名前聞いてなかったな。」

 こっちの店も常連になる事を決めた。

「アタシかい?ヒルダだよ。そっちの名前を聞いてなかったね。」

 確かにオレも名乗らなかったけど、ミリィは店内で名前呼んでいたんだが?

「・・・・・・"アルム"だよ。」

 オレはヒルダに本当の名前を告げた。

多分、彼女は口が堅いと思う。

そんな気がした。

それにこれから、オレの愛剣を調整してくれるんだからな。

「また大変だねぇ、そんな格好までしてさ。」

 アレ?

ヴァンハイト皇国生まれのアルムってだけで、正体完全にバレてたり・・・する?

まさか・・・。

「わざわざ、こんな所くんだりまで来て。」

 しかも少し同情された?

「来なきゃならなかったんだ。絶対に諦められないモノを掴みに。」

 挑戦を受けたからにはな。

だって諦めたら、オレはオレでなくなる気がする。

「アハハ。アンタ面白いね。よっぽどなのかい?」

 豪快に笑われる。

「よっぽどだから、何だってやるのさ。」

 オレも笑った。

「何か困った事があったら何時でもおいで。次は紹介状いらないよ。それと・・・。」

 クスリと笑って、オレの目の高さにその視線を合わせる。

「そんなに想われる仲に入れさせる気になっても、来ておくれ。」

 何だよ、ソレ。

確かに今まで出会った女性のとは違った魅力があるのは認める。

「それはそれで楽しそうだ。」

 この台詞をどちらが言ったのかは、秘密にしておこう。

ようやく名前が出てきたヒルダさん。

いや、なんとなく気にいっちゃって・・・(苦笑)

果たしてレギュラーになれるのか?!(ヲイ)

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