Eager! 皇子は意外に気に入られる。【後】
問題がありまくりの一日だったが、残るべくして残った最後の問題。
"部屋割り"だ。
ミリィと今日会ったばかりの(オリエは別)アレと一緒というの躊躇われて・・・。
仕方なく、ミリィ・オリエという組み合わせに。
「なぁ?オレ、君の従者に無礼討ちにされない?」
思わず、今晩のお隣さんに聞いてみた。
「大丈夫ですわ。私、貴族位高くないですし。それに当家は傍流ですわ。」
この説明がさらりと出来る時点で、問題の主旨は理解はしているようだな。
「貴族位が低くても、他国のお嬢様には変わりないんだがな。」
貴族は貴族。
他国なのは、彼女の得物を見ればわかる。
どう考えても"ヴァンハイト以外の国"の貴族だ。
あー、正確にはヴァンハイトの皇子と他国の貴族の子女の構図なんだが。
・・・て、こっちのがマズイよな、外交的な意味で。
「ゾっとするな。」
「何か?」
「い、いや・・・そっ、そ、そう綺麗だなって。」
何だソレ。
自分で自分に突っ込んでしまった。
今の彼女は、例の部屋でオレが選んだ最高級の絹の夜着を着ている。
・・・言っておくが、透けたりとかしてないからな。
全身を覆っているからな。
「うふふ。お世辞が上手ですわ。」
「別に取り入ろうと思ってないからな。でも、その髪は美しいと思うよ。」
彼女には悪いが、レイアの綺麗な髪を思い出す。
「あら、トウマさんもそう思います?家族にも言われるんですよ。」
よし、何とかきっちり誤魔化せた。
「あぁ、思うよ。それと明日から"トウマさん"はやめてくれよ?そっちはお貴族様なんだから。」
平民って何時もこんな事を考えてんのかな?
能力別登用制度の導入をカーライルに提案して良かった。
アイツも何処か実力主義だったしな。
いずれは、どんな地位にでもなれるように出来ないと。
「あら、ダメなんですの?」
ワザとだろ、この女。
「少なくとも位が上なので呼び捨て・・・いや、もう面倒だから声かけなくていいです。」
大体、武器さえ持たなければ、美人でお嬢様なんだから絶対目立つ。
寧ろ、貴族の男性陣の不況を買う。
下手したら、何人かのさなきゃなんなくなりそう。
「でも、折角お知り合いになれたのだし・・・。」
やりにくい、この人。
「大丈夫。美人なんだから、貴族様の殿方が放っておきませんよ。」
男が美人に弱いのは、世の常だ。
「どうぞ、貴族同士で仲良くしてくださいな。」
オレは彼女に向かって首を竦めてみせた。
「それではつまらないですわ。」
つまるつまらないの問題じゃない。
こちとらこの先の安穏な生活がかかってるんだ!
「そういう問題じゃない。」
コイツはデカい子供か。
全く、貴族ってヤツは・・・って、オレが言うのもなんだかな。
すっかりしょげてしまった彼女の姿・形は、今はいない者達を思い出させる。
やっぱり、オレは甘いんだな・・・。
甘過ぎるから、失う事になるんだな・・・もっと慎重に冷静にならなきゃいけないハズなのに。
「・・・誰も見てない二人の時ならいいよ。声かけても。」
言ってしまった・・・。
まぁ、多分、そんなような状況になる事は皆無だろうからいいか。
「本当ですか?!」
「あ、うん。でも、なんか、オレに拘り過ぎてない?なんで?」
ちょっぴりね、うざったい気もするのよ。
「考えた方が違う方と一緒にいる方が、自分の為になりそうなのと・・・純粋に興味ですわ。」
やべぇ・・・純粋に気に入られた?!
「ち、ちなみに更にお聞きしますが、何がご興味を引かれたのデショウカ?」
今後の参考にさせて頂きたいデス。
「最初は長剣使いかと思っていたら、二振り腰にさしていますし・・・。」
唇に指をあてて言葉を続ける。
「双剣まで買い求めていらしたし、盾や鎧まで見ていらしたから。」
・・・まぁ、買った品物的には、重装機甲歩兵に近いよな。
「あ゛。」
・・・槍斧とか戦斧とか使う国の騎士団て・・・重装兵じゃね?
て、コトは・・・。
「何やら色々と通ずるものがありそうなので。」
いやいやいや、オレはバルドも認める剣の軽さなんで!
重装とかしたら、動けない事受け合いなんで!
「全然戦法すら違うと思いマス・・・。」
いや、本当。
「という建前もありつつ、トウマさんというお人柄自体に興味津々だったりしますわ。」
ぱんっ、と笑顔で手をたたかれてもオレ的にどう反応したらいいのやら。
「後悔しても知らないですからね。」
ぐったりだ。
明日からこれよりも更に大変だと思うと、先が思いやられるな・・・。




