Eager! 皇子は意外に気に入られる。【前】
毎年、エイプリルフールは嘘を何つこうと考えているうちに終わります。
これはこれで平和なんでしょうか?
ミリィはオリエの入浴に付き合う為にすぐさま部屋を出て行った・・・と。
「で、何故、君もいるの?」
予定外がもう一つ。
例の決闘女がオレの部屋にいる。
「二人用の部屋を二部屋と聞いたもので。」
・・・つまり、何だ?
もしかしなくても、一緒に泊まる気か?
「却下。出て行け。」
「女性にお優しいのか、冷たいのか、不思議なお方ですわね。」
「面倒が嫌いなだけ。」
大体、何で一人でいたんだ?
「そういえば、従者はどうした?君"も"行くんだろ?」
恐らく、彼女の目的地はオレと同じだ。
「やはり、トウマさんも行かれるんですね?」
そんなにやんわりと微笑まれてもな。
「あぁ、だから、悪いがあまり君に関わりたくない。従者達の所へ帰れ。」
冷静に、冷静に。
「何故ですの?」
彼女、本当にあの武器を振り回そうとしていた人間と同一人物?
「貴族のお嬢様が、平民出身のオレと一緒にいるとね、問題があるの。」
今回のオレの設定だ。
オレは貴族に仕えるようになったばかりの従者級に近い平民。
だから、皇族名もない。
一応、完全な平民だと怪しまれるので、貴族名はあるにはあるが。
「問題ですか?」
「問題だね。貴族達にも平民出の者達にも目をつけられる。目立つのは困るんでね。」
目立ったら、捻じ伏せてやるとかいう発想はない。
労力も使うしな。
動き易い状態でいたいし。
「オレはね、目的があるんだ。」
ちょっと傷ついたような表情をされたので、仕方なく言い方を変える事にする。
「君たちとは違った目的。貴族として決められた将来の目標とかではなく、絶対に、何をしてでも成し遂げなきゃいけない目的。」
それしか持ってないからとも言うが。
「手段は選んでられないと?」
さっきの決闘に割り込んだ時の話をしているのだろうか?
「そうだね。選ぶ余裕が無いというのが正しいかな、今回のは。」
いてもたってもいられなくて、よりによって兄上の提案なんかに乗っちゃったんだもんなぁ・・・。
「・・・なら、私を、私の貴族としての地位を利用なさって下さって構いません。」
「断ル。」
即答。
「まず一つは、君にそこまで言われる筋合いが無い。もう一つは、そんな利用の仕方はお断りだ。」
彼女は完全なる他人で、そして恐らく善人だ。
いくらなんでも、オレにだって良心はある。
「矛盾してらっしゃいませんか?」
「オレは正直、善人とは言えないし強くもない。だから、そこまでの責任を他人にまで持てないだけだ。」
本当、常に初めてだらけでいっぱいいっぱいなんだから。
「そうですの・・・。」
「・・・まぁ、目的地が一緒なら、今晩くらいはいて構わないよ。」
「本当ですか?!」
オレ、やっぱり甘いのかなぁ。
「問題は、どう部屋を割るか・・・。」
信用度をかんがみるに、オレとお嬢様が同部屋が一番いいんだが・・・年頃を考えると、オレとオリエか。
「それは後で決めるか。」
寝台に適当に座ると、買ってきた二振りの剣を取る。
剣を鞘から抜いて、自分の腕が水平になるように片手で持ち、そのままの姿勢で止まる。
今度は、それを逆の手で。
「何をなさってますの?」
「重さに慣れる作業と、どっちの腕を主体に剣を振るうかを考え中。どっちも今日買ったばかりだから。」
身体に覚えさせて、考えて修正しなきゃ。
細身の方の剣が少し軽いな、当然か。
それでも細身の方の剣は、ディーンの剣と大差ない重量だ。
御老体の見る目はやっぱり凄かったと、改めて感謝だ。
細い剣は突きを主体に盾との併用を考えるのが有効だろう。
もう一方は、リッヒニドスで使ってた下取りに出した剣と同じくらいの重量。
でも、少し反りがあるから斬撃はこっちだな。
二振りの重さの誤差は少ない。
「流石。」
剣を鞘に納め、今度は剣帯の点検をする。
「よし、これで大丈夫かな。」
「細かく確認なさるのね。」
不思議そうな目でオレを見る。
そんなに不思議か?
「君の得物と違って、距離が取れたり速度を帳消しに出来たりしないから。」
重くないし。
「斬撃の角度まで気にする?相手と刃の入射角度とか。」
「・・・しませんわね。」
だよね。
ぶっちゃけ、全身鎧に盾持ちが相手だったら鋭利な刃物より、大質量に任せて激突させた方が確実に損傷を与えられる。
「その分、微調整が必要だし、特性の把握は必要なの。」
「勉強になりますわ。」
「と、ミリィとオリエが戻ってきたな。」
「?」
「気配がする。」
「私にはなんとも・・・。」
ふむ。
もうすぐ足音がはっきりと・・・。
ま、新キャラはあと3、4人くらいですかねぇ・・・。