気品と奉仕と愛情。(ミランダ視点)
私が報告の為に部屋に戻った時、何度と部屋の扉を叩いても返事がなかったので、
一声かけてからそのまま中に入る。
窓辺に佇む彼。
その手には、珍しく長剣が握られていました。
彼が武器類を持つ事自体、見る機会はありません。
それにこの部屋には、何処にも刀剣の類は備え付けてはいない。
あるのは、部屋の隅に置かれた騎士像が携えている物のみ。
私はそれを鞘から抜く事が出来るのを初めて知りました。
掃除はちゃんとしてはいますよ?
「アルム様。」
「なんだい?」
彼は振り向きはしなかったが、返事があったので、私は話を続ける事にしました。
「先程の件ですが、現在、侍女は私を含め6名程、料理人はご指名の者も含め3名、
同じく近衛兵も3名。隊長の任も了承を頂きました。」
淡々と報告。
仕事は仕事で、きっちりしなければ。
そうでなければ、彼の迷惑になる。
私のミスが、彼の立場を悪くする事があってはならない。
そうでなければ、私は彼の傍にはいられない。
「予想以下だったわ、人徳ないねぇ、オレ。」
くすくすと笑う声。
酷く自嘲的な。
「そんな事はありません!私は、私は、何処までもと!」
「ねぇ、ミラ?」
優しく私の名を呼んで、彼が振り返った時、
一振りの刃が私の首のすぐ真横に。
「オレが死んでくれと言ったら、どうする?」
彼は・・・私の愛する彼は、どんな答えを望んでいるのだろう?
どう言えば・・・伝わるのだろう?
今更、こんな事をしなくても・・・。
「・・・貴方が、それで私を永遠に忘れないと言うのでしたら、喜んで。」
一瞬の間の後、彼は刃を引いた。
泣きそうな表情が、夕日の中に落ち込む。
「それじゃあ、ミラ。君の全てが欲しいと・・・君を抱かせてって・・・言ったら?」
本当に今更ですね。
わざわざ口に出さなくても良いのに。
でも、私は口に、声に出そう。
彼が、そう望んでいるのなら。
「勿論、喜んで。」
答えて、今度は私から彼の頬にくちづけた。
「ありがとう・・・いつも。」
にっこりと微笑む彼。
彼に笑顔を作る事が出来た。
それだけでも私の心は、打ち震えるのでした。