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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅰ章:黒の皇子は決意する。
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気品と奉仕と愛情。(ミランダ視点)

 私が報告の為に部屋に戻った時、何度と部屋の扉を叩いても返事がなかったので、

一声かけてからそのまま中に入る。

窓辺に佇む彼。

その手には、珍しく長剣が握られていました。

彼が武器類を持つ事自体、見る機会はありません。

それにこの部屋には、何処にも刀剣の類は備え付けてはいない。

あるのは、部屋の隅に置かれた騎士像が携えている物のみ。

私はそれを鞘から抜く事が出来るのを初めて知りました。

掃除はちゃんとしてはいますよ?

「アルム様。」

「なんだい?」

 彼は振り向きはしなかったが、返事があったので、私は話を続ける事にしました。

「先程の件ですが、現在、侍女は私を含め6名程、料理人はご指名の者も含め3名、

 同じく近衛兵も3名。隊長の任も了承を頂きました。」

 淡々と報告。

仕事は仕事で、きっちりしなければ。

そうでなければ、彼の迷惑になる。

私のミスが、彼の立場を悪くする事があってはならない。

そうでなければ、私は彼の傍にはいられない。

「予想以下だったわ、人徳ないねぇ、オレ。」

 くすくすと笑う声。

酷く自嘲的な。

「そんな事はありません!私は、私は、何処までもと!」

「ねぇ、ミラ?」

 優しく私の名を呼んで、彼が振り返った時、

一振りの刃が私の首のすぐ真横に。

「オレが死んでくれと言ったら、どうする?」

 彼は・・・私の愛する彼は、どんな答えを望んでいるのだろう?

どう言えば・・・伝わるのだろう?

今更、こんな事をしなくても・・・。

「・・・貴方が、それで私を永遠に忘れないと言うのでしたら、喜んで。」

 一瞬の間の後、彼は刃を引いた。

泣きそうな表情が、夕日の中に落ち込む。

「それじゃあ、ミラ。君の全てが欲しいと・・・君を抱かせてって・・・言ったら?」

 本当に今更ですね。

わざわざ口に出さなくても良いのに。

でも、私は口に、声に出そう。

彼が、そう望んでいるのなら。

「勿論、喜んで。」

 答えて、今度は私から彼の頬にくちづけた。

「ありがとう・・・いつも。」

 にっこりと微笑む彼。

彼に笑顔を作る事が出来た。

それだけでも私の心は、打ち震えるのでした。

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