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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Connect! 皇子はその手を離さない。【前】

 オレを引っ張っていた手を離し、最後には人だかりに突撃しだしたミリィを尻目に人だかりの一人に声をかけた。

「何があるんです?」

「んー、何でも、賭けの決闘だか何だか。」

 決闘?

穏やかじゃないな。

つか、見物人の証言がはっきりしなから、イマイチよくわからないが。

「決闘って・・・この街じゃよくあるんですか?」

「ないない。だから、人だかりが出来んだろ?」

 ・・・そうだね、うん、ごもっとも。

オレは仕方なく先行したミリィを探しながら、人ごみを掻き分けだっ、あだっ、足踏まれたし。

「全くミリィは後先考えずに・・・ホリンに似てきたんじゃないか?」

 オレはようやく人ごみの前列にいたミリィを見つけて、襟首を掴む。

「アルム様・・・。」

 オレを振り返って、困った表情をするミリィ。

何だ?

見ると、二人の男女が互いに向かい合っている。

その真ん中には、中年のオヤジと薄汚れた服を着た少女。

・・・流れがわからん。

「なんですか?コレ?」

 思わず横にいた見物人に聞く。

「ん?あぁ、役売りに女がつっかかって、その女に男がつっかかったらしいぜ。」

 役売り・・・あぁ、奴隷売りか。

ちなみにヴァンハイトじゃ、人身売買は違法だ。

しかる人権と最低限賃金を保障している。

まぁ、労働者斡旋という形に変化して、この役売りという商売が現れ始めたんだよな。

奴隷も逃げて役所に訴えるなんて、本当に命がけだから、やる奴もいない。

形骸化された法になってきている。

「しまった・・・。」

 リッヒニドスで定義を定めて厳罰化するのを失念していた。

これは早急にカーライルに相談しなくては。

「んで、突っかかったってのは?」

「女の子の余りの扱いに怒った娘に対して、男が何か言い出したのよ。」

 今度は違うおばさんが、教えてくれた。

「アルム様・・・。」

 う~ん・・・。

悩んでいる間に金の量ある髪を腰下まで伸ばし束ねた女性が、自分の得物を持ち出す。

長い杖のような棒の先についた斧。

「槍斧使い・・・。」

 相性悪いなぁ。

そうこういしているうちに藍色の髪を肩口まで切り揃えた男も、自分の得物の細剣を持ち出す。

力と速さの対決か。

ていうかアイツ等、馬鹿か?

両者共、剣(一人は斧だが)を抜くという事の意味をわかっていない。

死んだら、全部お終いなのに。

ふと、ミリィがオレの服の裾を掴む。

「はぁ・・・ミリィ、約束した事を覚えてる?」

「・・・はい。」

 その割りには、"アルム"という名前を連呼していたような。

「"次から"ちゃんと守るんだよ?」

 守る約束には、こういった事には首を突っ込まないってのが含まれていたんだがなぁ・・・。

オレ、甘いのかなぁ、もぅ。

自分の荷物をミリィに預け、まさに激突しようとしていた二人の間に一枚の金貨を指で弾き入れた。

二人の間で、くるくると回転しながら落ちてく金貨。

強制的に視界に入れられたソレに思わず反応してしまう二人をよそに、オレは得意の瞬間加速で一気に間合いを詰める。

二人の中央辺りの距離に立つ中年オヤジの前にだ。

そして、四人がきっちり反応してオレを見つめる中、有無を言わせず金貨三枚をオヤジに突きつける。

「コレで、そのコを買おう。足りるな?」

 呆気に取られた後、全力で首をぶんぶんと縦に振るオヤジに金貨を渡し、少女にオレが羽織っていた外套をかける。

思ってた以上に細い。

完全にやつれきっている。

確かに扱いが悪かったんだろうな。

きっとオレがこの子を買った金貨三枚は、あのオヤジにしたら破格値だったんだろうな。

ま、命の幾つか分得したならいいか。

第一、額を度外視したら、既に武具屋で一回得しているしなぁ。

「はい、皆さん!三人目の大馬鹿が登場して大損こいて、今日も世界は平和という方向で、お話は終わりってコトで!」

 一瞬で静まる観衆。

・・・・・・ダメだった・・・かな?

「いよっ!平和を愛する男!」

 誰かの声が何処からかあがる。

「あはは、財布の中身大丈夫かいっ?」

 また声が。

「ウチの店なら安くしとくよー!」

「酒一杯ならおごってやらぁっ。」

 口々にあがる声。

何だかんだで、陽気だなこの街の人は。

どうやら観衆は、流血沙汰による事態の終結は望んでいなかったらしい。

ちょっと汚い気はするが、ミリィの心配の一つは消せた。

オレ的には、今のところはこれで満足。

皇子は"平和を愛する男"の称号を得た。(某RPG風に)

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