Blade! 皇子は得物を探す。【前】
Ⅰ・Ⅱ章の展開の間延びを少しでも抑えられるといいなぁと、詰め気味を・・・無理か・・・。
「しっかし、この砂漠のド真ン中に都市があるのが驚き。」
国境のど真ん中にある砂漠。
正確には砂漠があったから国境になったんだが。
ほら、誰も国境付近が砂漠なら侵攻しづらいだろ?
もし、侵攻してもこんな砂漠を得ても何の利益もない。
軍隊が駐留するのだって、莫大な費用がかかる。
お陰でこの地は、ほぼ中立状態で国境にして棚上げってワケ。
ここだけに限らず、大抵の国境線は火山地帯だったり氷原だったりする。
「オアシスがあるからなんですって。」
キョロキョロと周囲を見回しながら、興奮気味な声をもって報告してきたのはミリィだ。
今回の旅は、ミリィを連れて行く事にした。
勿論、これにもそれ程には深くはないが理由がある。
いや、あるんだって、本当。
「あんまりキョロキョロして街ではぐれるなよ?売られちゃうからな。」
「ひゃぃっ!」
ちょっぴり驚かせただけで、この反応だもんな。
少し先が思いやられる。
オレの目的にとっては、ミリィは足手まといに近いんだが、兄上の好きにしてもいいという言葉の揚げ足をとっての犯行。
「おっちゃん、少し見てもいいかい?」
「おうっ、見るのはタダだ。」
流石、商人。
この街は、交易の中継地点としてオアシスの横に造られた街だ。
ここなら、砂漠を半分だけ越えただけで商品を卸せる。
まぁ、中卸しの街だな。
砂漠を全部越える費用と中卸しで安く売るのとの天秤にかけた結果がコレ。
・・・まぁ、もう一つ栄えている理由があるんだが・・・。
「坊主も"例のアレ"に行くクチかい?」
愛想の良いオヤジがオレに気さくに話しかける。
この街は、活気があっていいなぁ。
リッヒニドスもこうなって欲しいものだ。
オレが覗いた店には、所狭しと武器類が並んでいる。
「まぁね。入ったらこう買い物にもちょくちょく来られないから、買い溜めしておこうかなと。予備とか。」
ディーンの剣が無くなってから、別の武器を手に取る気もなく、オレの元には一本の長剣しか残っていなかった。
剣は手入れさえきちんとしていればそうそうダメになるものでもないが、流石に神器と比べれば摩耗する。
「成程なぁ。得物は何だい?」
得物・・・。
深く考えてなかった。
この際、得意ではなかったりする物にも手を出してみようか?
何しろ、今は自由だ。
「とりあえず、双剣をまずは。」
「お?"ヴァンハイト"の出身かい?」
このやりとり、絶対後々何度もやって飽きるな。
「まぁね。」
「何かクセとか拘りはあるかい?左右対称とか非対称とか。」
勉強しているな。
意外と細かいところの対応が可能らしい。
「対称・非対称問わないよ。比重差もある程度なら大丈夫だから。刀身は1キュビト以内におさまるなら、左右の差があっても大丈夫。」
実はオレ、右利きのハズなんだけれど左手の方が筋力があって、純粋な力だけなら左の方が強い。
だから、差があっても大丈夫と言えば大丈夫。
両手剣や槍に至っては左手主体で使った方が楽という、器用なんだが不器用なんだかわからん仕様。
「・・・お客様、製法や原料に拘りはあるかの?」
オレが店のオヤジの質問に何気無く答えると、奥から白い髭をたくわえた老人が出てくる。
「オヤジ!またそうやって突然に!すみません、お客さん、このオヤジはこうなもんで。」
不躾な質問を発した老人の事で、オレにしきりに謝る店主。
「・・・個人的には鋳造じゃなくて、鍛造で。原料は・・・値段次第だな。だが、銅の割合が低い方がいい。」
簡単に言うと、鋳造は金属を溶かして型に流し込む製法。
対して、鍛造は熱した金属を叩いて形にする製法。
「お客様。」
問われた事にちゃんと返答したオレに対して、鋭い眼光で睨む老人。
「私共はこれでも、お客様方に合う盟友をお渡しして信頼を得てまいりました。それが私共、武器を扱う商人の誇りです。」
何やら口調が・・・怒っていらっしゃる?
「ですから、そのように不誠実に嘘をつかれては、こちらもお客様に合った本当の友をお渡し出来ません。」
「あのなぁ、オヤジ。」
「お前は黙ってなさい。この方の剣は、私が責任を持って選ぶ。」
持っていた杖をビシッと自分の息子に突きつけると、クワっと目を見開く。
怖いっての。
その迫力に負けたのか、済まなそうな目線をオレに向けてくる店主。
声を出さずに唇を大きく動かして作ったカタチは『ヤ・ス・ク・ス・ル・カ・ラ。』
・・・生け贄か?オレは。
「いや、確かにオレが悪かった。実はとある事情で愛剣を失ってね。半ば呆然自失状態でこの街に入ったんだ。」
話さない事と嘘は別だよな、うん。
「何と!それは御心中察せなくて申し訳ない。して、剣の損傷具合は?」
急に優しくなったな。
そりゃ、剣を戦う者の友と位置づけて売っているくらいだもんね。
「それが・・・奪われてな。実はこの旅のもう一つの目的がソレを探すというものでもある。笑うか?だが、物心付いて10年は使っていたんでな。」
言葉に出すと、今頃になって涙が溢れそうになった。
「アルム様・・・。」
じっと成り行きを見ていたミリィが声をかけてくる。
いやだなぁ、最近、涙脆いや。