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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Awake! 皇子は絶対立ち止まらない。【後】

「"国境"、"砂漠"、"がく"・・・あぁ、最後は、がくなんちゃらだよな。」

 カーライルやエルフの森との関係の話し合いの中でも、他に考える事はシルビアの顔だ。

しかも、今回はスクラトニーの時のようにはいかない。

シルビアの消え方、アレが"術"だとしたら。

剣の拒絶の抑え込み、アレも"術"だとしたら。

黒幕はそんな強大な力を持っている。

そして・・・。

『待っています・・・"本当の私"を見つけて下さい。』

 彼女の言葉。

あれが彼女の本心だとしたら、一人の人間を本人の意思とは別にある程度は拘束する力も持っている事になる。

「それでも取り戻してヤル。」

 諦めるのが得策。

そうなんだろうな、きっと。

けれど、何だろうな・・・多分、もうシルビアは"オレという存在"の何割かは持っているだろうと思う。

「欲しいのは、力と情報。」

 相手はディーンの剣と術の力を少なくとも持っているんだ。

それに近しい格の武器が欲しい。

出来れば、協力者も。

人手の無さは実感しまくったものな、このリッヒニドスで。

とりあえず、国境付近の地図を眺めてみたものの。

「この国の国境とは限らないんだよな。」

 範囲が広すぎる。

次の砂漠だが、この砂漠という地形。

あるにはある。

実に多数の国に跨って・・・。

このヴァンハイトから北の国境線付近は、ほとんど全て砂漠と言ってもいい。

うぅむ。

シルビアは最後、何て言おうとしたのか。

「が、が、がく、がく、がく・・・がぅ・・・。」

 これで身体とか震えてたりしたら、危ない薬を飲んだ皇子と思われるな。

人海戦術は相変わらず取れないし。

「本気で出奔を考えるか?」

 思わず苦笑い。

ディーンの剣も無く、皇子の肩書きもない、ただのアルム。

その響きだけで、急に心細くなるから不思議だな。

反面、好きな事をやり放題出来るという・・・何だろうな、コレ。

例えると、人間は飛べずに地を歩かなければならないを"不自由"と仮定して。

翼を得て解き放たれた状態を"自由"と仮定すると・・・逆に選択肢が多すぎて、余計に不自由に感じるという・・・うん、そんな。

イマイチ、理解してもらえないか。

「と、言っても最終的にはいらなくなる肩書きななんだから・・・さっさとヤメちゃおっかな、皇子。」

 座っていた椅子の前脚を上げて、プランプラン。

考えが全く前に進んでいない。

珍しいなぁ・・・勢いも出ないなんて。

皇子辞めたら、誰かついて来てくれるかな・・・。

「んあーっ!もう、わからん!わからんもんはわからん!」

 叫んでも何もわからないのだけは、わかるな。

「何がわからないんだ?アル。」

 来たよ、無駄な美声。

「また来たんですか、兄上?」

 金髪・蒼眼。

ヴァンハイトの血を体現した容姿。

「アルがまた面白そうな事をしでかしてくれるんじゃないかと、期待してな。」

 爽やかに微笑む様はザッシュのそれを圧倒的に上回り、美しさすら感じさせる。

この笑みには慣れ・・・免疫が必要だ。

「はいはい。どうせ、オレのやる事なんざ、兄上からしたら子供の遊びか、悪戯の範疇でしょうよ。」

 椅子の前脚を上げたまま、両手を上げる。

コレ、高等技らしい。

昔、バルドに体幹を鍛えられまくられたからな。

エルフの森でグラつきはしたが、転倒しなかったのはコレのお陰だと思う。

「意外性と実用的かつ効率主義なのは良い事だ。だから現地の役人には支持されているだろう?」

 褒められたのか?

いや、まさか。

この人が単に甘いだけだな。

オレが病に倒れて過保護になったのは、ミランダだけじゃなく兄上もだったから。

「ま、オレがダメ皇子という貴族達の評価より、貴族姓を持たない民達の方が大事だもの。」

 目下、全ての手柄は兄上とカーライルにそっくりそのまま渡したから、オレの評価も支持率も低いままなんだよね。

「全く。アルの事を知りもしない貴族達の評価など取るに足らないだろう?」

 流石、弟馬鹿。

きっと、そういう貴族は兄上の視界にすら入ってないんじゃないだろうか?

それもそれで問題な気もする。

「今回だって、アルが自ら先頭に立って、私は一口も噛ませてもらえなかったし・・・。」

 あ、それが本音。

何だソレ。

それでも貴族達の言う、"シグルド皇太子の劣化代替品"という立場は果たせた。

ちなみにコレは兄上には"禁句"な。

それにエルフの森の民の一部はある程度の理解を示してくれた、同じように城にいたカーライルの部下達も。

それで充分過ぎる程だ。

「何より、以前見せてもらったっきり放棄していた"爆発する粉"を実用化させたとか。」

 あ゛・・・。

全力で目線を逸らすオレ。

「スクラトニーが大金を注ぎ込んで作らせた兵器と同程度だと聞いた。それを大分前から編み出したアルは、やは凄い。」

 ぐっ・・・スクラトニーの兵器はバルドに壊させたし、他の者にも口止めしたのに!

誰だ!喋ったヤツ!今すぐ出て来いっ!!

「ア、アレハ、記憶カラ抹消サセテ下サイ・・・。」

 出来れば永遠に。

「人殺しの道具にもなるもんなので・・・。」

「ふむ。」

 兄上はあっさりと納得したようだ。

いいんだろうか、こんなにも弟の言う事を丸呑みで。

「次は、私も仲間に入れてくれるか?今度は何だ?」

 兄上はうきうき気分で、オレが広げたままにしていた地図を覗き込む。

「今度は国境付近の砂漠地帯周辺に興味があるのか?」

 あぁ、無駄に子供みたいに瞳をキラキラさせてっ!

「アル、どうやら今回は、私も一枚噛めそうだぞ?というか、正しくはアルが一枚噛むかだな。」

 兄上の情報網は広い。

砂漠地帯で何やらあるのか?

しかも、兄上が出張りそうな問題が。

でも、それって・・・。

「兄上の"双刃の白獅子近衛師団"が出張るより、オレのが適任てロクな事じゃないような・・。」

 兄上の直属の近衛騎士団、例の双剣を掲げた白獅子の旗の一団の事な。

あれは、選りすぐりの部隊だ。

「アルの好きな様にしても良い事案で、且つ面白さはアル好み。どうだ?」

 くそぅ・・・楽しそうだなぁ・・・何を期待してるんだ?兄上は。

「詳しいハナシをオ願イシマス。」

 こうして、砂漠に向かって旅立つハメになったワケである。

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