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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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乎古止点と本番と皇子の裁き。【前】

「アルム様!」

 鍔迫り合いをしている二つの影を見つけて、立ち止まる。

「レイア!」

 オレはすぐさま剣を抜き、レイアと剣を合わせているもう一方の影を蹴り飛ばす。

すると一緒に来ていた兵士達がすかさず剣を突き立てた。

「戦場は一対一じゃないから、気を抜くなよっと!」

 言ったそばから、レイアの後ろに剣が。

それを受け止めた瞬間、再び引き連れていた兵士が、横合いから剣を突き刺す。

訓練された兵との集団戦ってのはこんなもんだ。

しかも、皆、オレを補佐して尚且つ傷一つつけはしないとまでに士気が高い。

「他の皆は?」

 肩で息をしているレイアを気遣いながら、聞く。

彼女の鎧は、返り血で所々赤黒く変色していた。

「ザッシュはカーライル様と太守室へ。バルド様は敵を掃討すべく単独で・・・。」

 流石、"巨大熊"

死んでたら、同じように大爆笑してやろう。

つまりは殿はレイアだったようだ。

「わかった。レイアは地階へ下がれ。退き時だ。」

 レイアの完全装備はそこそこ重量があるので、疲労が早い。

「しかし!」

「見誤るな!」

「・・・はい。」

 死んだら笑わないからな、泣くぞ。

「言ったろ?誓いの時。」

 彼女はオレより先に死んではいけない、死なせないし、そんなのは許さない。

「申し訳ありません。」

「いいよ、あーあ、美人が台無しだ。」

 オレは彼女の肌についた血糊を拭う。

冗談だからな?

こんな事で、損なわれるワケないだろ?

「じゃ、また後でな。」

 短くそう言って、オレは更に上を目指す。

「オマエの部下は女ばかりだな。」

 悪かったな。

大体、連れて来た人間で三人以外はミランダの人選だ。

オレだって、女性をこき使いたくないんだよ。

「大丈夫だ。残りは男と・・・。」

「と?」

「・・・巨大熊だな。」

 熊にも迷惑か、バルドと同列じゃ。

すまん、クマ。

各階ごとに兵士を割り振りながら、上階を目指し続ける。

戦力が分散してくが、上下階からの挟撃なんて御免だからな。

結局、そうやって人手を割くとオレとラミア姫だけになっちまった。

本当、反スクラトニー派の人数が多くて良かったよ。

当然、予想通りに手数が足りないしな。

ふと、目の前の部屋から勢いよく人が転がり出て来た。

「カーライル?」

 多分、そうだ。

きっちりと後ろに回していた髪の何房かが額にこぼれ、汗にまみれてはいたが。

オレは慌てて、疲労困憊の様子の彼に向かって駆け出そうとした。

「アルム様!伏せて!」

 駆け寄ろうとするオレをその場に留めるように、しゃがみこんだままで手を伸ばして叫ぶ。

伏せるしかないだろう!

見るとカーライルもごろごろとその場から転がりながら伏せる。

「うわっ!」

 扉の横の壁が砕け、炎が溢れる。

「熱ッ。」

 炎が治まった壁の穴から転がり出てきたのは、片足に火がついた状態のザッシュだ。

オレは、今度こそ彼に駆け寄り、火が燃え移っていた足を手で叩く。

手に着けていた篭手があれば、多少の熱は耐えられる。

「一体、何が?」

「皇国近衛兵のなんと脆弱な!」

 質問の言葉をザッシュに吐いた直後に、部屋の中からスクラトニーが現われた。

ヤツの腕には、一抱え程の筒が。

先程の状況をかんがみて、アレはあの筒からか・・・オレはじりじりとザッシュの腰の革箱に手を伸ばす。

確認すべき事があるからだ。

誘爆してなければ・・・。

そしてザッシュの性格からして、ギリギリまで使わないハズだ。

果たして、それはオレの予想通りか否か。

「それが荷で作らせた物か?」

 ニヤリと笑いながら、ヤツに問う。

「これはこれは皇子様。貴方も運の悪い方で。」

 他者を見下す目。

やっぱり、人間でもエルフでも変わらないな。

「どうだろうなぁ?確かに運が悪くはあるが、最悪ではないんだよな、コレが。」

 オレは本気でそう思っている。

「これはまた強がりを。」

 強がり・・・なのかな?

あぁ、そうかもな。

でも、その嘘でもいい強がりをくれる相手が身近にいる限り、こうなんだろうなぁ・・・。

矛盾してら。

「そっちこそ、大した玩具だな、ソレ。見世物小屋でも開くつもりか?」

 オレは後ろにいるラミアだけに見えるように、指を床に向かって指す。

「皇子様にはこの画期的な発明が解って頂けないらしい。いいでしょう、これの素晴らしさをお見せしましょう!」 

 スクラトニーが大筒をこちらに向けるのと、オレがザッシュの腰から取り出した爆裂球を投げるのは同時だった。

炎の渦が爆発の風と一緒に廊下に荒れ狂う中、オレはザッシュの上に覆いかぶさってそれに耐える。

背中に感じる熱風。

しかし、本当にさっきの攻撃で誘爆してなくて良かったな。

「ななッ!」

 激突する衝撃の反動で、ひっくり返っていたスクラトニーは傍で倒れているカーライルに見向きもせずに逃げ出していた。

立ち直りの早い小悪党だな。

ん?小悪党だから立ち直りが早いのか?

「あんな発明が画期的だったら、オレのもそうなるじゃないか、アホらし。」

 こんなの一つで胸を張るなんて、ちょっと神経おかしいんじゃないの?

「まぁ、凄い発明ではあるっスよ?」

「人殺しの道具に使ってる時点で、既にロクなもんじゃない。」

「岩盤の破壊工事に役立ちそうですが?」

 ザッシュだけでなくカーライルも立ち直ったようで、的確な助言を述べる。

可哀想に、髪がボサボサだ。

「成る程、そっちの方が建設的な意見だ。カーライル、スクラトニーが逃げた先には何がある?」

「屋上広間しかありませんが?」

 つまりが、次が最後の最後か。

「ラミア、大丈夫か?」

 ザッシュとカーライルがぱっと見無事なのを確認して、後ろのラミア姫に声をかける。

「あぁ、少し耳がキィンとするがな・・・。」

 耳、尖がってデカいもんなエルフ。

「どうした?」

「いや・・・私もあの男のように、ホリンやオマエを見ていたと思うとな・・・。」

 苦々しい表情。

 どうやら、少しわかってもらえたようだ。

「じゃあ、自分だけの世界で他者を見下してばかりいた人間の末路をしっかりと見ておくといい。」

 結局、他者を省みない者は、きっと誰からも省みられる事はないんだと思う。

ここに来て、オレが学んだ事でもある。

「皆、ヤツが次にブッ放した後に飛びかかれ。アレは恐らく連射出来る代物じゃない。」

「何故そうだと?」

 カーライルは冷静だなぁ。

「部屋から出てきた時、オレに向けて撃った時の二つを見てそう考えた。」

 簡単な推理だ。

「砲身が熱に耐えられるかどうかもあるが、連射出来るなら最初の時にザッシュ、次の時にカーライルに向けて撃てた。」

 無駄にオレの会話に付き合ったり、カーライルを無視して逃げる事なんてしない。

その時に確実に二人を黒コゲに出来た。

敵の戦力は削れる時に最大限まで削っておくべきなのだ。

「原理まで憶測するのは、どうかと思うが。弾を装填したような動作がなかったから、炎術の原理を代理で行うというのが・・・。」

 堅いんだよな。

それなら連射が出来ないのは、周囲の媒介物質を急激に使用するから。

一時的に媒介物質の量が薄くなるんだという説が成り立つ。

ま、憶測。

「まぁ、オレならそうするって話だ。中にはそう見せかけるようにして"連射が切り札"というのもある。ヤツはそういう細工する人間か?」

 オレの先入観と憶測はこんな感じなんだが、もしかしたら頭だけはキレるのかも知れない。

先入観って本当に怖いよな。

「基本的に見たままです。例外は金銭に関わる事ぐらいで・・・。」

 金策としての税に関しては、確かに頭回るな。

「たとえ連射出来たとしても、行動には必ず予備動作や息継ぎでの隙があるはずだ。」

 ラミアが言う。

まぁ、達人ではない限りはそうだな。

達人になればなる程、その一瞬の隙を減らしてくる。

同じ達人でも巨大熊はそんなもの吹き飛ばす圧倒的さはあるが、アレは例外。

「何にせよ、次が最後だ。一発さえ止められれば、或いはかわせれば勝ちだ。」

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