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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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和協と進撃と城内戦。

ようやっと、ここまで来ましたねぇ・・・(トオイメ)

「ミランダ!」

 帰城するなり、オレは大声で叫んだ。

「アルム様!」

 相変わらず、オレの呼ぶ声に対しては素早く反応が返ってきた。

「彼女に服を!着替えさせ次第、サァラ姫に会わせてやってくれ。」

 なにやら嫌な予感がする。

「ザッシュとレイアが!」

「どうした?」

「バルド様がご帰還されました。」

 どばっと出る冷や汗。

ちょっぴり遅かったか?

「どれくらい時間が経ってる?」

「まだ半刻も・・・。」

「ちっ。ラミア姫、早く鎧返せ。いや、いい。」

 身に着けている時間が勿体ない。

「ミランダ、ホリン、町を回って大声で触れ回れ。」

 本当はこういう手を使うのも好きではないんだが・・・非戦闘員でも、監視の目にはなる。

「首都から来た役人が、太守を更迭する為に州府に乗り込んで、戦闘になっているってな。」

 オレは腰に回していた剣の剣帯を確認する。

鎧が無くて、少し不安定になっていたからだ。

「悪い、ラミア姫、この城にいてくれ。私兵達も姫だけを守れ。」

「オマエは何処へ?」

「仕方ないだろ、オレはこの国は大嫌いな事だらけだが、この国に住む者は嫌いになれん。」

 ホリンがそうだったように。

偉そうにふんぞり返っているだけの貴族や官僚は、嫌いだがな。

好き嫌いがはっきりしていると言ってくれ。

後発とはいえ、幸いな事に厩舎にはまだ馬があるハズだ。

「帰ったら、大宴会だ。大量に食って飲んで騒ぐぞ!」

 オレはそうミランダ達に向かって叫ぶと、厩舎に全力で走る。

すると併走してくる影が。

「ラミア姫?」

「一つ、聞き忘れた。嫌いになれん者の中には、私も・・・私達も入っているのか?」

 コイツは・・・本気でアホだ。

そろそろ確定してもいいよな?

「そんな事を聞いてくるヤツを嫌いになれると思うか?」

 オレは馬に飛び乗り、彼女に向かって手を伸ばした。

「飛ばすぞ!」

 馬には悪いが、現状州府まで最速で辿り着きたい。

「あとでサァラに会ったら、オマエにもう一つ聞きたい事がある。」

「ん?何だって?」

「・・・あとでいい。」

 馬の蹄の音でイマイチはっきり聞き取れんが、今は州府に着くのが先だ。

喋ってると舌噛みそうだし。

州府の門まで、この速度なら半刻。

合わせて一刻近くの遅れだ。


 無言で走り続けて、州府の大門が見えて・・・こない。

つか、大門が無い。

というか、門ごと砕けて倒れている。

「何だ?何が起きたんだ?」

「・・・巨大な"クマ"が暴れたんだろうよ!」

 オレは通常なら馬で進入しない中庭を駆け抜け、州府内の中央、吹き抜けの廊下で馬を降りた。

「誰ぞいるか!我が名はアルム・ディス・ヴァンハイト!」

 何か久しぶりに名前を全部名乗ったな。

両親には悪いが・・・自分で名乗った割りには違和感がある。

「アルム様?」

「アルム様だと!」

 ぞろぞろと出て来る人、人、人。

「皆の者、無事か?」

「はい!カーライル様がアルム様が動くまで待てと。」

 流石、カーライル。

オレの行動が読まれているのは、全然悔しくない。

悔しくないぞ、本当だ。

「良し。カーライルは?」

「アルム様の部下という方と太守室へ。」

 率先して行く意気も良し。

死んでたら、大爆笑して盛大な葬式をあげてやろう・・・国費で。

「皆の者、指示を与える!」

 皆が息を呑んだ音がした。

オレ的にも結構、重圧。

「不忠義者のスクラトニーの一族の拘束と逃亡しない様に街道の閉鎖。」

 やるからには徹底的にだ。

「町の者が押し寄せてくるが、監視と街道封鎖を協力させろ。それとダークエルフとは協定を結んだ。間違っても攻撃するな!」

「おい、協定は・・・。」

「黙ってろ。」

 実際は協定を結んでいないのだから、不服を言おうとしたラミア姫を制す。

これも計算のウチだ。

腹黒いと罵りたければ罵ればいい。

役人の中からは、少なからず驚きと感嘆の声が上がる。

そうだろうな、引き籠り一族と協定を結ぶなんて、土台無理で今まで誰も成し得ようとすらしなかったんだからな。

だからこそ、皆、オレの声を聞く。

「皆には苦労をかけた。だが!皆の我が国への忠誠心こそ、我が皇族の誇り!」

 我ながらよくもまぁ、ぽんぽんと・・・。

「汝等の為に私は、力を尽くす事を誓おう!」

 大喝采と共に皆、一斉に州府の外へ出て指示された事を実行しに行く。

何人かの武装した人間は、オレの前に進み出て跪く。

「たいしたもんだよ。」

 ラミア姫は完全に呆れている。

オレだって恥ずかしいんだよ!

やらなくていいなら、やりたかなかったよ!

「色々と反論したいが、一つ。オレは第二皇子だ、それを忘れんなよ?」

「ん?だから何だ?」

「こういうのはオレの仕事じゃないし、ガラじゃないの!本当は!」

 いや、本当に。

もう今すぐ城に帰って、布団にくるまってしくしく泣きたいくらい恥ずかしかった。

「行くぞ!」

 オレは太守の部屋があるという上階へと駆け出した。

「レイア!ザッシュ!バルド!」

 無用心ではあるが、先行している三人の名を叫びながら。

道のりは楽。

三人の名前を呼ばなくてもいいくらい。

倒れたり、絶命している人間の姿を見ればわかる。

鎧の隙間を縫って、手数で確実に戦力を奪われているのがザッシュを相手にしたヤツ等。

腕一本とか、首とかそういうのをばっさり斬られているのが、長剣を使っているレイアを相手にしたヤツ等。

判り易い。

ん?

バルドを相手にしたヤツ等?

武器破壊をくらって、骨ごと断ち切られて、一発で絶命しているヤツ等。

・・・もう逆に憐れに思えてくる・・・本当に運が無かったとしか言いようが・・・。

次回!前後編2話にてⅡ章完結!

これにともなって活動報告(タイトル:念願の!)にて、次回作・続編等のリクエスト受け付け中です~。(ヲイ)

みなさまのコメントよろ☆(爆死)

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