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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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漏出と抱擁と居心地。

「アルム様。」

「何?」

 城へ向けて走る最中にホリンが話しかけてくる。

とてもすまなそうな表情しちゃって、まぁ。

「あの、私・・・。」

「気にするな。」

 オレにとってなんの問題も無い。

「前にも言ったろ?ホリンはホリンだ。」

 想像は出来るけれどな。

"純血じゃない王族"ってコトだろ?

嫌な立場だ。

オレの立場ですら、こうなんだしな。

「今は、さっさと帰って全部解決して・・・そうだな・・・。」

 元来の目的の一つに戻ろうじゃないか。

「メシをたらふく食って、風呂に入って、ぐっすりと寝よう。」

 しばらくは皆と隠居生活を楽しもう。

「あはは。じゃ、一緒にお風呂入って、一緒に寝ましょうね。」

 ようやく笑ってくれたか・・・。

彼女はここに来て、本当に良く頑張ったと思う。

彼女だけじゃない。

皆を褒めてやりたい・・・だから、オレも働かないとな。

「随分と仲が良いんだな?」

 後ろから追いついてきたのはラミア姫だ。

彼女の背後からは、数人のエルフが付き従っている。

「そうだなぁ、ラミア姫もホリンとまでは言わないが、サァラちゃんくらいに素直だと仲良くなれるかもね。」

「嫌味か?」

 ジロリと睨んでくる。

つか、コイツは人を睨むのが見るって事なのか?

「うんにゃ、サァラちゃんはちゃあんと自分の立場を理解して、自重してくれたから。だから現状が最悪にはならなかった。」

 上に立つ者としての優先順位を守って行動した結果だ。

責務と言い換えてもいい。

「アレは、私の自慢の妹だ。」

 そこは素直なんだな、どうした?

「私と違って、誰からも愛される・・・。」

 話がズレているような・・・。

「あのなぁ・・・。」

 コイツ、本当にバカなのか?

あぁ、バカなんだな。

「そういうコトを言ってんじゃねぇ!」

 何だ、エルフって極端から極端に走る種族の事だったのか?

「素直に相手を認めたり、受け入れたり、自分の立場を自覚しろって言ってんの!」

 ダメ皇子だってダメ皇子になりに、必死で今やってんだよ、オレは。

そりゃあ、周囲の期待なんて皆無だけどさ、やれる人間が他にいないのなら、やるしかないだろう?

「何が・・・。」

「そうだろ?最初から相手がこうだと決めつけて拒絶してんのは、オマエだけだ。」

 違いはソコなんだよ。

「誰もかれも否定したら、誰も認めないし信じない。サァラちゃんが誰からも愛されるのは、彼女が周りの存在を認めて愛してるからだ。」

 じゃなきゃ、オレの城まで裸足で走って来られるかってんだ。

「オレはホリンの過去を聞かない。そんなのはどうでもいいから、だからホリンは今のホリンでいい。」

 それ以外の何が意味がある?

それ以外の何が必要だ?

「アンタも同じだ。別にオレがアンタが醜いとも愛せないと思っていない。後ろにいる人達もだ。だから、オマエに付いて来ている。」

 オレはチラリと後ろを走るエルフ達を見る。

一様にオレの怒鳴り声に驚いていたが、確かめると皆、しっかりと頷いていた。

大体、このダークエルフの血筋(?)は美人なんだよ。

「そ、それは・・・。」

「結局、受け入れられるか否かだ。仲良く見えているのであれば、成立しているってコト。・・・だよね?」

 オレは最終的な確認をホリンに任せる。

人間のオレより、まだ同族のホリンからの方が説得力あるだろう。

「そーですね。ラミア様、アルム様の腕の中は居心地良いですよー。」

 ソコハカトナク微妙ナ表現デス。

振らなきゃ良かったか?

「そうか・・・。」

 ただ一言、そう呟くとラミア姫は黙り込んでしまった。

「ま、お婆様とやらが言っていた結婚を断ったのが、多少惜しいと思うくらいにはね、ラミア姫もホリンも美人だと思うよ。」

「え?」「あはっ♪」

 だが悪いがオレは後宮だろうが、嫁だろうが、きちんと自分で選ぶ派だと言ったろ?

あ、ちなみに我が国は、一夫多妻制も可だ。

何でもそういう国皇がその昔にいたらしく、その際にそういう事が出来る決まりにしたらしいが。

オレは多人数を平等な愛で包むなんて、そんな器用な真似が出来ないから無理。

絶対、無理。

「しかし、スクラトニーもヤキが回ったな。下策過ぎるし、お粗末。」

 思わずヤツの小悪党っぷりに苦笑する。

「そうなんですか?」

 無邪気にホリンが聞き返してくる。

「オレだったら、奇襲は全ての集落を同時に。且つ、要人の捕獲を優先して、人質にする。」

 以前も考えた策だ。

「下劣なっ!」

 例え話だろうに。

「んで、税率は一割だけ上げて、天領以外の領地をこっそり開墾して、少しずつ税収をチョロまかす。」

 大々的にやると反感や密告を喰らうしな。

「で、ダメ皇子は手駒にする。あー、その為には邪魔な副官を謀殺して・・・。」

 あぁ、そうか。

「どうしました?」

「副官の人徳があるのか、スクラトニーの人徳がないのか、反抗は少ないけれど、手駒になるような人材も少なかったんだな。」

 どうやら人員不足で苦しんでいるのは、オレもヤツも同じらしいな。

そして質の悪いのだけがヤツの手駒になり、質の良いのだけがオレの部下になった結果がコレか。

「ならば、急ぐとするか。」

 流石にニ往複目だとコツが掴めて速度が出せてきている。

「帰還後にザッシュ達に合流。迎合する民・役人達と共にリッヒニドスの大掃除だ。」

 どうか、黒幕カーライル説、兄上説でありませんように。

心の中でそう呟いて、一人苦笑した。

"アイツ"の顔を思い出しながら。

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