乱撃と森と爆音。
完全装備で森の中という初体験中。
最近、本当に初体験ばかりだな。
「ホリン、優先順位を確認するよ?」
順位なんざつけるのは、間違ってはいるんだが、明確にしておけないと行動に隙が出たりする。
死に直結するような要因は、少ない方がいいに決まっているだろ?
「一番は自分の命。」
当然だ。
別にオレ達は英雄ではないし、そんなものになろうとしているワケじゃない。
真剣に頷くホリン。
「二番目は、ラミア姫の身柄の確保ないし・・・生死の確認。」
まだ生きているとは限らない。
しかし、困った事に、きちんと生死を確認しないとややこしい事になるのが、王族ってヤツだ。
それはエルフも人間と変わらないだろう。
「三番目は、他のエルフ達の安否。これは姫を助け出せさえすれば何とでもなるから。」
そして、最後はオレだけの使命。
出来れば奴等の撃退。
まぁ、出来なくても最低一人捕縛できたら、可。上等。
確認の会話を終えると、簡単な合図を決めてサァラの集落付近へ。
妙に明るいな。
何かが燃えている匂いがする。
「あ・・・。」
ホリンが微かな声を上げて、指をさす方向をオレは見た。
集落の中心で男達が酒盛りを始めているんだ。
彼等が囲んでいるのは、木を積み上げて作った大きな火。
・・・人が緊張して近づいているのに、大いに楽しみやがって。
頭の中で人数を数えて、見張りに行っているだろう人数を試算。
あぁ、姫と人質にも見張りが付いているんだろうな。
先に姫の死や位置を調べるか、それともここにいるヤツ等を何とかするかの選択肢。
十人以上の人数をどうやって?
完膚無きまでにとはいかないだろうが、出来なくは無い。
オレは自分の後左腰辺りの箱に触れる。
例の爆裂球が左右にニ個ずつ、計四個。
同じ物がホリンの腰にも同数。
多過ぎる気もするが、ミランダを始め周りの人間が、(ほぼ)強制的かつ、優先的にオレに持たせたんだ。
これを全て使って動けば、少なくとも混乱は起きる。
というか、何人かは戦力にならなくなるだろう。
面で攻撃が可能なのだから、大人数が固まっている今が好機かも知れない。
オレは指でホリンの腰とオレの腰をさす。
そのまま爆裂球を出すと、オレにならってホリンが同じ行動をする。
次は二本指を揃えて、火の中心へ。
すると、ホリンは頷いて親指を立てた。
さっき決めた合図だ。
最後に四本の指で、進行方向を指示してオレ達は左右別の方向に走り出す。
直後、爆発音が鳴り響く。
「早いっての!」
オレは思わず耳を塞ぎそうになる。
そう言えば、この合図で時間を定めるのを忘れてた。
抜けてるよ、あぁ、抜けてるさ!
「このヤロッ!」
オレは四つの爆裂球を次々に全て投げ、耳を塞ぎながら走る。
一つくらいは残しておきたい気分だが、仕方ない。
身体が震えるような衝撃の後、オレは集落の中へ身を躍らせる。
左腰に下げたディーンの剣ではなく、腰の後ろに回された普通の長剣を抜き放って。
ここからは躊躇わず、迅速に判断と行動する事をしっかりと胸に刻んで。