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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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擁護と傷心と願い。【中】

ごめんなさい、中編です。

森に行くまでをひとまとめにしてみました。

「ここは?」

 目の前の少女が声を発したのは、一刻も経つかどうかといった頃だった。

「皇族の住む城の中だよ。大丈夫、君に危害を加えるつもりはないから。」

 言っておいて、自分が完全装備をしていた事に気がついた。

最近、抜けていると思わないか?

骨董の鎧から剥ぎ取った黒の篭手と具足を着け、左腕部には三角型の小盾を取り付けている。

胸部・腰部も完全に覆われた銀色の金属鎧。

これは別の部屋にあった鎧から無理矢理剥ぎ取った。

お陰で元々持っていた鎧の留め具を流用するハメにはなったが。

とにかく彼女の見ている前で、ディーンの剣を手に取れない距離に立てかける。

「背中を火傷しているみたいだから、なるべく横を向いておくんだよ?あ、お腹空いてない?」

 きちんと聞き取って把握出来るように、なるべくゆっくりと滑舌よく。

「お腹・・・。」

 小さな呟き。

オレは篭手を盾ごと外し、近くの皿を取る。

「冷めちゃったけど、ごめんね。」

 一掬い、少女に飲ませる。

丁度、ホリンが席を外していて、その間だけこの子を見ていたのだが、どうしようか?

ホリンを呼ぼうか迷っているんだが、どちらかというと食べられる時に食べさせて休ませる方を優先した方がいい気がする。

何回か掬って飲ませ続け、あっという間に一皿完食した。

「良かった、口に合って。もう少し休むといいよ。起きる頃にはホリン・・・あー、ウチのダークエルフがいるから。」

 どうせ、十中八、九は行って戦闘になるんだろう?

オレとしては、あんな失礼千万な一族どうでもいいんだが・・・ほら、ホリンは優しいからな、うん。

故郷を捨てたとは言え、同胞を見捨てるって出来ると思うか?

「はぁ・・・ん?」

 溜め息をついて立ち上がったオレの裾を少女が掴んでいる。

金髪・金眼。

当然に黒い肌。

幼さを前面に出した大きく丸い瞳に桃色をした小さな唇。

そして、とてもあどけない顔つき。

「大丈夫。ここは安全だから。」

 今のトコロは。

心の中でそう続ける。

それでも彼女は、オレを見詰めたまま手を離さない。

離す気配もない。

オレは仕方なく、彼女の手を取り両手で一際優しく包んだ。

「オレもここにいるから。誰も居なくならないから。」

 諦めて再び席に着き、少女の頭を撫でると、そのまま瞳を閉じて少女はすぐに寝息を立て始めた。

しかし、寝てもオレの手はがっしりと握られたまま。

「いやはや、どうしたもんかね。」

 身動きが取れなくなったオレは、仕方なく思考を巡らす事に時間を費やす事にした。

把握するべきは、現状だが・・・多分、コレは最悪に近い。

州府側から何の行動もないのは、良い事なのか悪い事なのか。

とりにかく、事はまだ森の中だけの出来事で済んでいるワケだ。

内乱にしろ何にしろ、きっと出だしの小規模の間なら、何とか出来る可能性はある。

エルフの集落は四つに分かれているという事実から、武力による蜂起や襲撃は、全ての集落で同時に起こさなければならない。

オレだったら、そうする。

後は、迅速に要人を確保をし、内乱ならば政権を奪取。

これを逆順処理で潰していけるのかと問われれば、唸るしかない。

「第一段階は、要人の確保か。」

 オレは頭にラミア姫の強気な顔を思い浮かべる。

・・・乗り気になれん。

助けても、逆に怒られそうだ。

幸い、各集落ごとの連絡に時差があるのならば、こちらは各集落ごとを奇襲して、要人だけ確保すればいい。

「何で、こんなコトをオレが考えなきゃけなんないんだろ・・・。」

 オレはオレの外の出来事に無関心でいたのに・・・。

壁に立てかけてあるディーンの剣を見て、溜め息。

「一体、どうしたいんだよ・・・。」

 気だるくなりながら、オレは寝台の端に頭から突っ伏した。

思考停止→休憩。

「なぁ、ディーン、トウマ・・・オレの手の届く範囲って、広くないんだよ・・・。」

 なんたって、自他共に世間も認めるダメ皇子だしな。

しばらくの間、自分の情けなさにがっかりし続けていた。

でも・・・でもさ・・・。

「きっと今、オレが居なくなったら、確実に誰かが困るよな・・・。」

 我ながら発想の飛躍が著しい。

「じゃあ、死んだら・・・誰か泣いてくれるかな・・・。」

 一番短絡的で簡単な方法。

でも、死んだとしてもトウマとディーンには、平謝りなのは変わらないか。

結局、どっちつかずだな、オレ。

目の前の静かな寝息を立てる少女をぼんやりと眺める。

こうやって・・・。

「誰かが安らかに眠れる日を願って、ディーンは戦ったのかな。」

 きっとそうなんだろうというのが、オレの中のディーン像だ。

じゃなきゃ、あんな状態で次元の穴を閉ざそうとするか?

寝汗ではりついた少女の髪をなんとなく払う。

「アルム様・・・。」

 ホリンだ。

振り向いて確認しなくてもわかる。

「ねぇ、ホリン?」

 オレは彼女を見ずに先に言葉にするコトにした。

顔を見たら、きっとこれからの会話に文句の一つでも出そうだったから。

「ホリン、君はどうしたい?他の誰でもなく君自身はどうしたい?」

 オレは自分自身の事ですら、何も決められない時期があった。

何を選ぼうとしても、ディーンやトウマの事が頭に浮かぶ。

今だって、実は一時棚上げにしようとしている。

ミランダが捨ててもいい、逃げてもいいって言ってくれた時、少し心が軽くなった気がした。

何てヤツなんだろうな、オレは。

「オレは、今ではホリンを大切に想っているよ。だから、正直に言ってみて?」

 ホリンの言葉を待つ。

きっとその答えは、オレの予想通りだとわかっていても。

文句を言いたくても。

「私は・・・故郷を捨てて・・・。」

 捨てて、オレ達の所へ来てくれたホリン。

「アルム様にずっとついて行こうって・・・。」

 うん、ありがとう。

「本当は嫌なんです。私にとってはアルム様が、ご主人様で一番。それでいいはずなのに。」

 充分だ。

こんなオレには、勿体無さ過ぎる言葉だ。

「でも、お願いします・・・もし、助けを求めてくるのならば・・・。」

「うん、いいよ。」

「え?」

「だから、わかったよ。ホリンの望むようにする。」

 文句は言いたいけれど、でもその反面オレは安心しているんだ。

自分が信じてみようと思った人が、そういう風に考えられる人だという事に。

「あ、ありがとうございます・・・。」

 結局は自己満足の一言に尽きる。

ホリンの笑顔が見たい、嫌われたくない。

不純かつ、偽善的だ。

それでも・・・眼下の少女の寝顔を見れば、それも悪くないと思えるのは何故なんだろう?

冷静に考えたのですけれど・・・キャラの暴走っぷりが激しくて、戦闘とか少ない気、しません?

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