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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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擁護と傷心と願い。【前】

またとか言わないで・・・。

 ダークエルフの持つ情報内に城に住む皇子の名がアルムだというのがあるってコト。

そこまでは思考してしまった。

「やっかいだな。」

 情報ダダ漏れで、情報戦完敗してるわ。

困りモノだ。

「ま、今更か。」

 どんなに頭を回転させた所で、無理なものは無理と割り切るしかない。

すると、ドタバタと人が駆ける足音がして、人を抱えたレイアが寝台に件のエルフを寝台に乗せ、ミリィが手当てを始める。

「レイア、どうだ?」

「軽い火傷と裸足で駆けてきたのか、足に大小の切り傷があります。」

 火傷?

焼き討ちじゃないだろうな?

冷や汗が出てきそうになる。

「どんな火傷だ?」

「背中に円形状のですね。」

 円形?

火矢ならそんな傷にならないよな。

冷静に考えたら、森で焼き討ちとか火を使った攻撃なんて浅薄過ぎる。

「あ~、ホリン、ホリン?」

 さっきとは違う冷や汗が・・・出てるな、もうコレは。

レイアの後から部屋に入ってきたホリンを手招き、手招き。

「あのさ、エルフって炎術使いっている?」

 この世界の大気中には、目に見えない細分化された粒がある。

その粒を媒介にして、様々な現象を引き起こすという事が、実は可能なのだ。

だた何故か媒介にして使う事の出来る人間は少ない。

使用条件が血であったり、言語体系であったり、他の触媒、或いはその組み合わせの場合があるんだが・・・。

何でこんな詳しいかというと、いや皇子って国書読み放題なんだよね。

例の宝物庫の本も全部読んだし。

「規模を別としたら、何人かはいますけれど・・・数えられるくらいに少人数ですね。」

「厄介な。」

 他に読んだ本によると、現在の大気中の粒の残量は、例の次元の穴を開ける為に大半が使用されてしまっていて、限りなく少ない。

ここにきて、大半の人間はその技術(?)を放棄したんだが・・・。

「用心はしないとな。」

 仮説の一つは、炎術での攻撃。

仮説のもう一つは、他の兵器だ。

オレの爆裂球のような発明。

全く、兵器を進化させる情熱なんざ、何の得にもならんのだよ。

効率良く人を殺せる技術を競ったり、自慢したりなんざ、逆に非生産的だ。

何故、それがわからないんだろう?

「レイア、外の警備をザッシュと一緒に頼む。」

 さてはて、流れがキナ臭さを増したな。

大炎上する前に何とかしないといけないか?

「・・・て、気力がもつかな。」

 絶対に体力よりも先に気力が尽きる自信がある。

「アルム様、手当て終りましたよ。」

 さしあたって、情報収集か・・・。

ミリィに呼ばれ、寝台に近づく。

「ミリィ、ありがとう。」

 普段、自爆して自分で治療しているせいか、怪我の手当て等は上手いんだよ、彼女。

しかも完璧で、失敗無し。

・・・あー、そこに至るまでにどんだけ失敗したかは、聞いてあげないのが紳士の対応だ。

しかし、あのコワーイ女と対面すると思うと萎えるなと考えていた。

考えていたんだが・・・。

「誰?コレ?」

 思い込みは良くないよな。

オレの予想は見事に裏切られた。

もっとも、これは思い込んでいたオレが悪い。

眼下に横たわっていたのは、予想していたエルフの第一王女ではなく、ホリンより幼く、ミリィより小さな女の子だった。

「えぇと・・・。」

 ホリンが苦笑いして言葉を濁す。

何だ?

嫌な予感。

「仕方ない。気がついたら教えてくれるかい?それまではホリンが面倒見てくれ。」

 この時点で、ホリンに問い詰めたりする事も出来る。

でもま、そんなのは"まだ"どうでもいいか。

目の前にいるのは怪我人の幼い女の子だ。

それで、とりあえずはいい。

予想をつけたりも出来はするけれど。

「それじゃあ、オレ達はもとの仕事に戻るか・・・。」

 オレは部屋にあったディーンの剣と、昨日まで着ていた鎧を掴み部屋を出た。

多分、準備が必要だろう。

この後の。

「ミラ、厨房に預けていたモノを取って来て。」

 総力戦。

一瞬、その言葉が頭を過ぎった。

「あと、レイアとザッシュに制圧戦の対人用装備をとるように伝えてくれ。」

 こう彼女に告げたオレは、先程見てきた部屋内に飾られてある防具を再確認しに行った。

オレもしっかりした対人用の装備をしなければならないからだ。

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