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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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約束と左手と絆。(ミランダ視点)

正直、疲れてきた(ヲイヲイ)

 帰って来てから、何か変でした。

何時も彼を見る度に不安になる時が、必ずあります。

この城に来てから、その不安に感じる時が日増しに増えていって・・・。

彼は常に自分を演じている。

何時も誰かの為に・・・そんな錯覚さえ覚えるくらいに。

「"アル"・・・手を出して・・・。」

 何時もの動きではない違和感。

彼は帰城してから、一度も右手を開いてはいない。

そして、何も言わない。

私は、我慢できなくなって、彼を、愛すべき弟の名を呼んだ。

「・・・どうして、何時も我慢するの?」

 肉が裂けた手。

所々、火傷にもなっている。

傷跡が残らないと願わずにはいられない。

どうして何時も彼だけが、こんな目に合わなければならないのだろう。

好きで、その道に生まれたワケではないのに。

「我慢?あんまりした事ないけど?」

 それが我慢でなくて、何が我慢だと言うのだろう?

「毎日毎日、我慢して、自分を削って・・・。」

 こんな事ばかりしていたら、何時か彼が壊れてしまう・・・大切な彼が・・・。

もしかしたら、もう既に・・・少しずつ・・・。

「なんでだろうね・・・。」

 ぽつりと呟いた。

「自分でも不思議なんだ・・・今迄、皇子としてのオレをちゃんと必要としてくれた人はいなかった。」

 選ぶ事の出来なかった自由。

「アルムとしての自分も、ミラ以外は必要としてくれなかった。」

 それは私が貴方を愛しているから。

「でもね、今は、何時も誰かが見ている。それは、ちょっと昔とは違う視線なんだ。」

 目の前の自分の剣を見詰めている彼。

「オレは普通とはちょっと違った処に生まれてしまったけれど、何て言うのかな、少しはマシになった気がするんだ。」

「だからって怪我をしていいという事にはならないでしょう?」

 誰かの為に、彼だけが傷ついていいという理由にはならない。

「あはは、うん、そうだね。ごめん。」

 されるがままに手に包帯を巻きつけている様が痛々しくて、私は泣きそうになる。

「でもさ、ちょっとだけ・・・たまに踏ん張ってみようかなって思っちゃうんだ。」

「踏ん張る?」

「何も期待さていないオレだけど、手に届く範囲くらいはさ・・・。」

 どうして彼はこんなにも優しく出来るのだろう?

今迄、周りの人間が見向きもせず、まともに扱おうとすらしなかったのに。

どうして、優しく人を信じようと思えるのだろう?

「だから、我慢してないし、こんな傷は何とも思わないよ。」

「思いなさい!」

 彼の顔を見られなくなって、俯いた。

どうせ、顔を上げても、涙で滲んで何も見る事は出来ないから。

「それじゃあ、ダメなの!いい?アル?確かにアルは立派。でも、それじゃ、何にもならないのよ?」

 包帯で包まれた手を優しく撫でる。

「大切なモノが傷つくのは嫌かも知れない。でも、貴方を大切に想っている人間は、貴方が傷つくのも嫌なの!」

 彼はわかっていない。

"自分の価値"を。

「責任を持たなきゃと思うのはわかる。でも、それを一人で全部背負い込むのは別。苦しかったら剣だって捨てていいのよ?」

 元々、彼は剣を握って戦うなんて向いていない。

彼は優しすぎるから、きっといつか、自分が斬り伏せた血と魂の重みに耐えられない。

壊れてしまってからでは遅いのだ。

「・・・ごめん、ミラ。」

「謝ってもらいたくて言ってるわけじゃないの!」

 理解している。

きっと彼は、ここで謝ったとしても、悪いと思ったとしても、自分の身を削る事を惜しまないだろう。

その時がくれば、そうしてしまう。

予言に近いくらい理解しているつもり。

「ねぇ、ミラ・・・やぱりオレは、どうしようもないダメ皇子なんだね。」

 それは彼が人間や自分の弱さを知っているから。

それは悪い事じゃない。

包帯を巻いていない方の手で、私の手を優しく包み込んでいるのがその証拠。

「知らない、そんなコト。」

「ミラ?」

 私は涙に濡れたままの顔を上げて、彼に微笑む。

「だって、貴方は"私の弟のアル"だもの。」

 もし、彼が本当に壊れてしまう日が来るとしたら・・・。

私は、ずっと彼の傍に居続けて、その日を見届けよう。

そして、最後の最後迄、私の愛を、全てを捧げよう。

「今日は・・・ミラと一緒に寝ようかな・・・。」

 彼は何時でも私の太陽だから。

たまには、ミランダにマトモな愛を・・・(苦笑)

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