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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅰ章:黒の皇子は決意する。
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縁談と計画と我が儘。

初投稿一日目のアクセスをチェックしたのだけれど・・・どれくらいが概ね良好な線なのかわからない・・・。

 朝食を摂った後に例の長官とやらに部屋に帰る途中の廊下で

見事に捕まったのだが、彼の話は予想通り過ぎてオレは辟易とした。

「ですから!」

「却下。嫁などイラン。第二皇子の血はお終い。

 兄上の血が絶えそうな気配がない限り、例外はナシ。」

 大体、皇室行事や吉凶を占う役人が、皇太子でもないオレに持ってくる用件なんぞ、

たかが知れている。

当然、オレにとってロクなコトじゃない。

「しかし、それでは私達も安心出来ませぬ。」

 意外としつこいな。

この押し問答も10分以上が経過している。

「心配をしてくれるのは感謝しよう。

 だが、嫁はとらんと以前から言っておるであろう?」

 別段、婚姻自体が嫌なワケじゃない。

内容が確定で政略結婚なのが嫌なんだ。

「皇子は何時もそう申されますが、こちらとしても一方的にそのような事を仰られても。

 その心は如何に?と、勘ぐってしまいます。」

 何時もなら、全力で逃走するんだが・・・彼は、オレに心を砕いてくれる数少ない人間だ。

こうしつこくされると邪険にしづらい。

「女を政治の道具にはしたくはない。皇侯貴族としては、些か甘くて愚かな事だが、

 まだ見ぬ彼女等の想い、心を殺してまで婚姻しようとは思わんのだ!」

 兄上の嫁になる者は、男子を産む産まないに関わらず、

皇妃になるのだから慎重にその相手を選ばなければならない。

対して、オレは(兄上の)保険的存在以外は、全く重要じゃない。

つまり、さして重要ではないが、政略的に必要な相手が選ばれる。

そんなもの、こっちから願い下げだ。

オレは、例え後宮を作るような事があったとしても、相手は自分で選ぶか、

相手が望まない限り嫌だ。

おぅ、皇族のクセに我が儘という誹りなら、いくらでも受けてやろう。

もうそんなモン既に気にならん。

「何とお優しい。確かに甘いかも知れませんが、この私めは愚かだとは、

 断じて思いませぬぞ!」

 なか、無駄に目がうるうるしてるんだが、長官。

「ですが、ですが、そのお優しさをお持ちの皇子だからこそ、

 私はお相手を選んで欲しいのです。」

「何?」

 今の長官はオレが産まれる少し前に任官した。

キャリアとか大貴族というワケではく、叩き上げの役人だ。

その公正明大さと誠実さは、オレも買っている。

だから、なるべく大人しく話を聞いているんだ。

オレは、こうまで言う彼の言葉の裏が何となく読めた。

だが、悪い。

・・・オレはこれから、彼の事を利用する。

「ミランダ!ミランダはいるか!」

 自室に歩を進めながら、彼女の名を叫ぶ。

「ここに!御用でございましょうか?」

 呼んで1分もしないうちに彼女はオレの前に膝まづく。

本当は、彼女を傅かせるのも好きじゃないんだが。

「今週中にこの城から出る!」

「は?」

「へ?」

 ミランダと長官が素晴らしく間の抜けた返事をする。

意外と面白い。

「居城を皇領地の外れ、森側の州の城へ移す。

 私の荷物のまとめと、従者・侍女の選出を君に任せる。

 君が信用でき、かつ希望する者を頼む。

 料理は城にいる・・・何と言ったかな、料理長の3番弟子の・・・

 彼に頼む。」

 言うだけ言って、くるりと長官の方に向く。

「これなら問題はないだろう?確かに国を割る危険性のある第二皇子など無用だ。

 婚姻を結んで、子供が産まれでもしたら、私共々バカな貴族共の御輿に乗せられるかも知れぬしな。

 わざわざ、そんな危険を冒してまで私に嫁を奨めんでも良い。」

 どんどんと孤立化していく第二皇子に気を利かせようとしただけなんだ。

それはありがたい。

「なに、嫁がいなくともミランダのような出来た侍女や部下がいれば、寂しいなどという事はない。

 変な気遣いをさせて済まなかったな。」

 こんな風に城を出る口実に利用した事も。

「長官、近衛兵隊の隊長は、先の剣術指南役のおじじを引っ張り出してくれ。

 近衛隊は左遷と同じになるからな、希望者がいたり・・・そうだな、森方面の出身者がいたら、

 ミランダに教えてくれ。新兵だろうと、例え一人もいなくても構わん。

 責めはせんよ。」

 国の安定とオレの身の安全・家族という形とを天秤にかけようとしてくれた。

それは例え、お節介でも嬉しかった。

「・・・わかりました。ですが、向こうに行って、皇位と関係なくなったという前提で、

 婚姻相手をお探し致します。勿論、全ての方を私、自らお会いして吟味致しますし、

 何より本人の意思を尊重致します。

 そうですな、相手の事をよく知るという期間を設ける事も前提条件に付けますかな。」

 言うだけ言いやがった。

反論しようがねぇじゃねぇか。

伊達に叩き上げで、長官歴20年近くはないな。

仕方なく、オレは頷いてひらひらと長官に手を振った。

もう正直、精神的に皇子みたいな偉そうな口調で話すのもダルい。

長官は恭しく礼をして、去っていった。

「ふぅ・・・あ、ミラ?」

 オレは傅いたままの彼女の肩を掴んで立たせる。

「はい。」

「ミラは・・・どうする?さっきも言ったけど、希望制にするつもり。

 付いて来てくれる?」

 無理強いはしない。

絶対したくない。

「喜んでお供致します。」

 そう言って彼女は微笑む。

「ありがとう。」

 オレはまた彼女の頬にくちづけた。

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