道と傾向と対策。
翌日、朝食と道中の食料を運ん来たミランダが、更に壊れたのはもう説明しなくていいよな?
食事を終えて、ミランダが買ってきた装備に身を包む。
身体を計ってもいないのにオレの身体にぴったりなのは、ミランダの仕事だからだろう、流石。
左のみの肩当・胸当がある軽装用の上半身鎧に、剣帯がついた腰当。
この国用の標準装備のせいか、剣帯が両腰にあるのが邪魔でイラつくがな。
そして、一番困っていたのはコレだ。
「剣・・・ね。」
眼下にある二振りの長剣。
「どうかしましたか?」
ホリンの着付けを見ていたレイアが、声をかけてくる。
「いや・・・。」
言葉を濁したオレの視線の先を見て、得心したようだ。
「私の経験上、迷うなら両方取るか両方取らないかですが、後者は在り得ないので、何故迷うのか理由を考えると良いですよ。」
忠告ありがとう。
迷っている理由か・・・。
どちらも剣である事には代わりはないんだが。
オレは一振りの剣を腰に下げた。
黒い長剣、ディーンの剣を
「護る為の剣だものな、君は。」
小さく呟いた。
ホリンにも言ったが、戦いに行く為じゃないんだ。
抜く可能性は、限りなく低くいきたい。
その想いを込めて選んだ。
「ホリンの準備はどうだい?」
「あとちょっとー、この服動きにくくて。」
ホリンはオレと同じような胸当と腰当をしているが、中の服のせいで窮屈そうだ。
短剣と使って、腹部の辺りの服を切り裂いて取り除いてた。
「こうなるんだったら、上は下着から直接つければ良かった・・・。」
それそれで、鎧が擦れて痛くなる気がしてくるが。
あ、人間と肌の質が実は違うのか?
オレは昨夜のホリンの痴態・・・いや、肢体を思い出してしまった。
肌にはデキモノ一つどころか、荒れた所もなかったな。
やっぱり肌質が違うのかも。
「おしっ、できたー。」
両腰に短剣と細剣、背に弓矢といういでたちのホリン。
勿論、ヘソ出し。
「お腹壊すなヨ?」
「あはは、過保護。」
「うっさい。」
過保護が、完全にからかいの言葉として定着してしまったじゃないかっ。
実感は、未だに全く無いんだけれどね。
「それじゃあ、ザッシュ、レイア、後は頼んだよ?」
残された二人には、影武者をやってもらうのだけれど、丸一日暇な時間なんざ、与えはしない。
効率重視。
「きちんと説明書き通りにやるっス。」
ザッシュが見せた説明書きは、オレが昨晩書いたものだ。
内容は昨日のミリィ(やっぱり迷子だった)の買ってきたものの使い方。
結構、簡単というかきちんと説明書き通りにやれば、単純作業なので大丈夫だと思う。
「一応、細心の注意を払ってな?」
同じ手順で作った見本品は、一つだけオレの革箱に入れて、腰に下げている。
まぁ、きっとこれも使うような事はないだろう。
そう願いたい。
ちなみに、作り方は例の宝物庫で読んだ書物で学んだものだ。
例のってのは、ディーンの剣を見つけた宝物庫な。
「えと、何が出来るんですか?」
自分の買って来たモノがどう使われるのか、興味津々といった顔のミリィ。
そういえば、何を作るのか彼女には言ってなかったな。
「出来てからのお楽しみ。」
完成したモノを兄上の見ている前で、昔使って見せたのを思い出した。
「きっとびっくりするよ。」
確か、呆れ果てた口調で。
『最低、あと20年は使わない方がいいな。』
と、あっさり却下されたとだけ今は、言っておこう。
「じゃ、行ってくるよ。」
人手も惜しいが、時間も惜しいんだ。
何せ今日、一日で往複しなきゃなんないんだからな。




