報告と明道と指針。【前】
一話にするには長くて、前後にするには短い・・・ダメだ、自分。
別作品【いつ君】も宜しくです。
エルフの森は四つの集落に分かれているそうだ。
そのそれぞれを現族長・長女・次女が治め、更に族長の母が治める特別区がある。
この城から一番近いのは、娘達の集落だ。
奥の森に単独で忍び込んで行くのは、至難のワザらしい。
よって、接触するのは娘達。
特に次女の集落が堅いらしい。
何故?とホリンに聞いたところ。
『次女のサァラ様が一族内で、一番人間に友好的だからでっす。』
だそうだ。
話している間にシルビアが帰還し、了承の旨を伝えられ、次にミランダが帰還した。
彼女の用意した防具は、行き先が初めての森という事もあって、軽装用のモノばかり。
勿論、ホリン用の短剣と弓矢も購入してあった。
流石、よい判断です。
「あとは・・・ミリィとザッシュとレイアか・・・。」
夕食までにと強気の発言をしたはいいが、レイアはとっもかくザッシュの仕事内容は厳しいな。
エルフの森からの帰還後までを期限にしても良かったんだが・・・。
余りの人手の少なさと、人材の優秀っぷりに思わず強気発言をしてしまった。
大体、こんなのオレの仕事じゃないんだからねっ!
「ふぅ・・・思わず、現実逃避しちまったい。」
明日はオレがしっかりしないと、ホリンの命の危険性があるんだ、気を抜かないようにしないと。
正直、"生殺与奪の権利"という言葉が、頭からチラついて離れない。
周りの皇侯貴族はよくこんなの振りかざしたり出来るな・・・はぁ、ヤダヤダ。
「アルム様。」
そのうちにレイアが帰還した。
「どうだった?」
「交代の時間まではわかりませんが、兵員と配置はバッチリです。」
ほら、優秀だろ?
優秀な彼女が、今まで一兵卒で埋もれているってんだから、我が国の人物評価制度はどうなってんのかね、全く。
「アトで兄上に告げ口したろ。」
「は?」
「いや、レイア、何でもないよ。それじゃあ、兵員数の割り当てと配置を図にして、五人分作っておいてくれ。」
バルドの分が間に合うかは別として。
「レイア、ザッシュ、ミランダには、一両日中に頭に入れておいてもらうからね。」
大丈夫、大丈夫、優秀だから皆。
きっと、覚えるのが一番遅いのはオレ。
あ、ますます現実逃避したくなってきたわ。
「さて、ザッシュは別としても、ミリィが遅いのは怖いなぁ・・・。」
ひっじょぉ~に心配だっ!
信じてないワケではないが、その・・・迷子とか・・・お金を落としておろおろとか・・・。
考え出したら、キリの無いくらい不安要素が出るわ、出るわ。
「シルビア、ミランダ、ちょっと半時程、様子を見に町へ出てくれる?」
うぅ・・・人手不足のハズなのに・・・。
バルドがいない、ダークエルフのホリンは外をうろつけない。
料理人達は、調理場から離れられない。
・・・ぐぬぬ。
絶対に、この先、人員不足で事に当たるなんて事はしないからな!
「ん?つか、そもそもこんな事をやる予定自体無かったんだよな?」
あれ?
「意外と、オレ、頑張れてる方?」
「いやはや、何というか、そこがアルム様らしいっスよ。」
パチパチと拍手でもしそうな笑顔のザッシュがそこにはいた。
「だから、こんな事になってるのにねー。」
にこやかにホリンも笑っている。
「何だ、ソレ?」
確かに発端は些細な事だったが・・・。
「結局、なんだかんだで、こうなった確実の要因は君達なんだけれど?」
まぁ、だから何だと言われたら、そこまでなんだけれどね。
選んだのは自分だしな。
「愛ですネ。」
「愛っスね。」
こらこら、何時の間に共通な反応を起こせるようになったんだ、二人共。
「んで、帰ってきたという事は収穫はあったのかい?」
ザッシュの帰還は、予想以上に早かった。
ザッシュならば出来ないとは思わなかったが、これは余にもだ。
別に無理だったのならば、それはそれでいいとは思っていたし、もう少し時間を与えてもいいくらいだったんだが・・・。