表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
34/207

平叙と慣性と温度。

あと四話じゃ、確実に終わらない・・・Ⅰ章より長くなる事が確定しました。

 最近、考え事が増えまくった気がする・・・。

何時も一人の時は、何もする事がないから、多々あったけれど。

今は違う。

考えている内容に何人もの人が介在する。

顔を見ぬ誰かでも、一括りの名詞でまとめられる人間だけでない。

個々の顔が浮かぶ、そんな距離の人達がオレの考えを乱す。

「で、イラついたり、不安定になると誰か居るんだよなぁ。」

 振り返ってみるとミリィがいた。

「あの、買出しの品を聞きに・・・。」

「ちょっと待ってな。」

 オレは手近にあった筆を取り、紙に書き出していく。

勿論、それがどういったものかという説明文を書いて。

「ミリィ、一人だけで大丈夫か?」

 人選ちょっと失敗。

お金落としたりしないかな?

「大丈夫です!皆さん頑張ってるみたいだし。」

 そうだった、ミリィは一番の頑張り屋さんだった。

「あ、あのっ、アルム様?」

「何だい?」

「アルム様は、今、ご不安なんですか?」

 何だ?

「い、いや、先程・・・。」

「あー、言ったな、そんなコト。」

 ミリィはすごく心配そうな顔で見詰めてくる。

何?

そんなに参ってるように見える?

「んー、ちょっとな。ほら、人の上に立つってさ、下の人間全部の人生を左右するって事だろ?」

 上に立つつもりなんて、元々なかったのだから。

「責任ですか?」

 ぎゅっと両の拳を握る様が可愛い。

「それにさ、誰にだって不安になる事なんてあるだろ?ないって奴は少ない。」

 今迄だって、こんな事から逃げてばっかりだったんだし。

出逢った運命は、自分の存在意義を打ち砕くのなんて、簡単だったし。

「そうですね・・・あ!私、いい方法を思いつきました!」

 ミリィがとてとてと走ってくる。

おぉぅっ、とてとてが上半身で、ぽよんぽよんに変換。

これが"慣性の法則"・・・いや、違ったか。

見事なぽよんぽよんを眺めていると、それがどんどん近づいてきて・・・。

ぼふっ。

そんな音がして、顔面に。

意外と沈む?埋まる?

今朝のホリンより柔らかいな・・・と、思ったら、頭に腕が回ってきて、ぽんぽんと肩口辺りを優しく叩かれる。

「小さい頃、私のお姉さんが泣いている私にしてくれたんです。」

 言うとまたぽんぽん。

心地良いが、少し息苦しい。

んで、温かい。

心音は精神安定の効果があるというのは知っていたが。実感。

すげぇ、驚き。

「どうです?」

 身体を離して、自分の胸元辺りのオレを見下ろしてくるミリィ。

「ん・・・何だろ・・・どうしてミリィ達は、こんなにオレに優しいんだろ?文句言わないし。」

 どう見てもこき使ってるよな?

流れて的に酷い展開だよな?

対してミリィは赤面する。

「わわっ、気づかないんですか?」

 何が?

首を傾げるオレに対して、ミリィは赤面する。

「気づくも何も・・・何で?」

「あぅ・・・じゃ、じゃあ、私の胸に聞いてください!」

 そう叫ぶと、思いっ切り彼女の胸に顔面を押し付けられた。

新手の拷問?

先程よりも早い心音。

ふと、生きているって事は、こういう事なんだな。とか、アホな事が頭に浮かぶ。

温かさがそれを補完して・・・。

昨日のホリンも、一昨日のレイアも、ミランダも同じ事を思ったんだろうか?

オレに触れて思ってくれたんだろうか?

そうだとすると、自分が生きているという事が少し嬉しいかも知れない。

ほんの少しだけだけれど・・・。

「わかりました?」

 顔を真っ赤にしたミリィが聞いてくる。

息が少し荒い・・・て、オレもか。

「少しだけ・・・あと、これを発見したミリィのお姉さんが凄いって事も。」

 オレは素直にそう思った。

「エヘヘ。」

 この照れ方、馬車の中でも見たな、癖か?

「とりあえず、この紙に書いた物を買ってきてね。薬屋と石屋と雑貨屋に辺りに行けば、きっとあるから。」

 だと思う。

ミリィでも大丈夫・・・多分。

人選的に残っていたのがミリィだけだから、苦肉の策ではあるけれど。

常に苦肉の策だけどなっ!

もう慣れてきたよ。

料理人達は、他の人間からの情報収集の役目もあるしな。

彼等は食事を取る人間のほとんどに会うし。

「じゃ、行ってきます。」

「気をつけて。」

「はい!」

 言ったそばから、入れ違いに部屋に来たホリンと激突しそうになっていたのは、見なかった事にした。

「ご主人様ー。あなたのホリンが参りましたよんっ。」

 茶目っ気たっぷりに言いやがって、可愛いじゃねぇか、コンチクショウ。

「はいはい。」

 オレは流し気味にあしらいながら、机いっぱいにこの城周辺の地図を広げた。

結局、エルフの森に行くことにしたからだ。

まぁ、ザッシュに頼んだ事の報告次第では行かなくて済むが、明日を行動日にした以上、今のうちにある程度決めておかねば。

「森の集落の位置と進入経路を決めておくよ?」

 本音としては、彼女を置いて行きたかった。

故郷を捨てるという事情は、きっと大変なモノに違いない。

オレだって悩んだしな。

それなのに彼女は、自ら案内を買って出たんだ、信じないでどうする。

「本当に、いいのかい?」

 オレはこれを最後だと決め、彼女にもう一度聞いた。

「ご主人様の為になるなら、やりますよんっ。」

 座っていたオレの膝の上に乗る。

・・・・・・これくらいは今回は許してやろう。

「わかった、じゃあまず位置取りからだ。」

 オレは彼女の胸に下辺りを抱えるようにしながら、話を続けた。

「はーい。」

次回、前・後編になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ