普請と指示と愛想。
前話でご褒美に指輪を買っていたシルビアさんが、腕輪を買った事になっている謎現象を指輪に改訂。(爆死)
気力は萎えた状態のままの朝食だったが、周りに居た皆の表情は明るかった。
昨日買った品が、皆に配られていたからだと思う。
ミランダの髪飾り、ホリンの首輪に続いて、昨日まで身に着けていなかった装飾品で飾られていた。
シルビアは例の指輪をさりげなくしていたし、ミリィは丸い耳飾が耳たぶについていた。
驚いた事にレイアは、深紅の首輪をしていた。
ホリンとは色違いのものだ。
誰だ、こんなの買ってきたのは。
が、昨日、買いに行かせたのはレイアとシルビアだ。
ホリンは自分で頼んだとしても、レイアはレイアで自分で見て買ってきた事になる。
何と言って良いのやら。
「皆、似合っているけれど、もっといいのにすれば良かったのに。」
全員、宝石のような石がついているようだが、小さいものばかりだ。
何だか申し訳ない。
「あら、大事なのはアルム様が下さったという事実なのですよ~。」
シルビアの言葉に皆が頷く。
「普通、主が何の前触れもなく宝飾品を下賜するなど聞いた事がありません。」
と、レイア。
「そうです!すっごぃ感激ですっっ!」
これはミリィ。
興奮し過ぎ。
「う~ん・・・そうか・・・。あ、ザッシュの分を忘れてたな、どうしよう?」
「家族に会う機会をくれただけで充分っスよ。」
「でも、それは普通、誰でも故郷に帰ったら家族に会いたいだ・・・ん?」
今の独特の口調は・・・?
「ザッシュ!」
相変わらず、空気を読んでも見ない気ゼロの男がそこに居た。
「只今戻りましたっス。」
爽やかな笑顔でオレに近づいて来る。
「朝食はとったか?ホレっ!」
手近にあった林檎を投げる。
「あ、どもっス。」
受け取った林檎を自分の袖で拭ってから、下から齧る。
あ、やっぱそう食べるんだ。
なるほど、地元出身者。
オレは彼の咀嚼の間をぬって話しかける事にした。
「んで、家族は大丈夫だったのか?」
その声におかしそうに笑い声をあげる。
「何だよ?」
「自分の頼み事の報告より、部下の家族の事を先に聞くからっスよ。」
何を言ってるんだコイツは?
「どっちも大事な使命だろ?」
オレは両方言ったんだしな。
「そういうアルム様だから、皆、味方なんス。」
にっこり笑う爽やか野郎の言葉に皆が微笑んでいる。
「よく、わからんけど・・・ザッシュが言うんだから、そうなのか。」
「はい、そうなんス。」
ザッシュは林檎を食べ終わると、そのままオレの傍に跪く。
「で、頼まれ事のもう一つの方っス。」
真剣な彼の表情にオレは辺りを見回す。
察してくれたのか、レイアが食堂の出入り口付近へ行って、外を確認している。
彼女は、そのままその場に立って外を見てくれているようだ。
「で?」
先を促す。
「現在の太守になってから、税率は約1.5倍。6割に到達してるっス。払えない者は労役の上乗せっス。」
高いとは聞いてはいたが、破格だ。
通常、どんなに高くても4割が限界だ。
「町から逃げ出す者が続出するな・・・。」
住民が逃げ出せば、町が廃れる。
税を払う人間が減るのだから、税収も下がってしまうのではないか?
「それが・・・区画ごとの連座制にしているようで・・・。」
「アホか・・・。」
つまり、区画の誰かが逃げたら、その分の税が区画内の誰かに上乗せされると。
「んで、労役ってのは?」
「それが天領の田畑労働と治水・開墾事業でこき使われてるっス。」
何だ?
この変に頭が回る感じは?
「税率の2、3割分と公共事業の人件費分丸儲けか・・・。」
と、なるとその行き先がやはり重要になってくる。
「ザッシュ、徴税は物納か?」
「基本物納っス。」
「はぁ・・・。」
嫌だ、嫌だ。
思わず天を仰ぐ。
「民の反乱や上奏の兆しはあるか?」
コトが大きくなると、オレでもキツい。
第一、この地でオレに委譲されてるような権利は無い。
しかも、人徳皆無。
「中には。そうすべきだという者もいるみたいっスけど・・・。」
ニヤリと笑うザッシュ。
「けど、何だ?」
ロクな事を言わないな、コレは。
「ウチの周りの人間には早々と改善されるから、早まらないように周囲に言うようにと伝えておいたっス。」
何だかな、コイツは。
「上司使いが荒いぞ?」
溜め息が止まらんな、こりゃ。
溜め息の中に少し楽しくなっちゃうものが混ざってしまうじゃないか。
「またまたご謙遜を。」
「オマエもこき使ってやるからな?」
「了解っス。」
乗りかかった船というか、背水というか。
「レイア、州府の兵力を調べて来てくれ。出来れば配置と交代時間を。」
「はっ!」
「ザッシュ、オマエは物納された荷の行方と金の流れだ。」
「あいっス。」
人手欲しいな。
割り振る度にヘコむ。
「ミランダ。君はホリンとオレ用の武具・防具を用意してくれ。」
「ホリンさんのも、ですか?」
困惑した表情のミランダ。
「頼む。」
一瞬、首を傾げたが、すぐに頷いた。
「シルビアは、カーライルに会って皇子が蜜月を楽しみたいから、明日一日、他の管理人を下がらせるようにと言ってきてくれ。」
頼むよ、カーライルの旦那。
「内容が内容だけに、他言無用とな。」
「はいですぅ~。」
他は・・・?
「ミリィ、後で書き出した物を市で買ってきてくれ。ホリンはこれからオレと地図の睨めっこだ。」
行きたくないけど、行くか・・・。
本当、面倒だな。
「以上を夕食迄にやってくれ。それとレイア・ホリン。」
「?」
命令したはずの二人を更に呼びとめる。
「今夜は二人で寝所に来てくれ。」
「二人でですか?」
訝しげなレイア。
「今度はまとめてー?もーご主人様ったら、お・さ・か・ん・♪」
楽しげなホリン。(絶対ワザと。)
「まぁ、一度に二人もですかぁ?次は是非、私とミランダさんのお姉さん組でお願い致しますねぇ~。」
ヲチをつけないと気が済まないのだろうか・・・シルビアさんわ。