表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
31/207

拝受と首輪とご主人様。

少し休みたくなりにけり(苦笑)

 一日、朝からすったもんだの騒動があり、カーライルの嫌味(?)合戦も潜り抜けた。

その後、剣を振って鍛錬し、心身ともにぐったりとした頃にシルビアとの一悶着あったと。

我ながら、休む暇すら無く。

暇は鍛錬に割り振ったとも言うが。

「で、ホリンは何を買って来てもらったんだ?」

 怒濤の展開の中、夕食を終え、今や夜。

待望の就寝時間だ。

待望といっても、エロい事を期待しているワケではなく、言わなきゃいけない事があるから。

「ん?ちゃんと身に着けてますから、今見せますよー。」

 昨夜のレイアと同じ外套で部屋に入って来たホリンが、上機嫌で答える。

余程、良い物でも頼んだのだろうか?

「じゃーんっ!」

「ぐはぁっ!」

 上着を脱いでお披露目。

どころじゃないって!

「オマエもその格好はなんだ!?」

「なんだって・・・だって、アルム様、私の肌を褒めてくれたしぃー。」

 ホリンは、頭からすっぽり被るタイプの一繋ぎの服を着ていた。

膝上の辺りで裾がひらひらとしている。

しかも・・・すっけすけ・・・。

流石に上下は下着を着けていたが・・・というのがはっきり分かるくらい透けている。

他は薄い紫に彩られて透けた黒い肌が、全身堪能できる仕様。

「だからって、オマエも大胆過ぎるだろ!」

「そーですか?肌褒められたし、そこが"寵愛される点"という設定なんですよ!」

「だからってなぁ・・・。」

 年頃(?)の女性がそではどうだろう?

「てゆーか、"も"って何ですか?あ、まさかレイアさんと被っちゃいました?」

「近いが、被ってない。寧ろ、ホリンのが過激。」

「よし!勝ったー!」

 喜んだり勝負したりする観点が違うだろう・・・違うよな?

「本当は迷ったんで、良かった良かった。」

「・・・迷ってそれか。」

「えぇ、流石にどーかなぁって、下着をつけるかどうか。」

「そっちかよっ!」

 突っ込む所だ。

確実にここは突っ込んでいい所だ。

「私は別にどっちでも良かったんだけど、レイアさんに止められちゃって。」

 良くやったレイア。

「こういうのは"足並み"をそろえないと妾の順列問題?とかゆーのになるからって。」

 待てレイアよ。

いや、待たなくていい。

足並みを揃えずに今すぐ中止しろ。

「で、肝心の・・・。」

 彼女の体の上下に視線を動かして見てみると、首の所に彼女の肌より黒い輪がついている。

「黒に黒か・・・。」

「通でしょ?」

 留め具らしき位置に硬貨程の紅玉がついていて黒い色に映える。

「首輪の方が、ご主人様に飼われてるーってカンジが出てていいでしょう?」

 か、飼われてるって・・・あのなぁ。

「寧ろ、ダメ皇子じゃなくて、鬼畜皇子の間違いなんじゃ・・・。」

「私は気に入ってますよー。う~、寒い寒いっ。」

 外套を放り投げて、ぴょんっと寝台の布団に潜り込む。

寒いなら、その格好やめりゃいいのに。

「気に入ってるなら、いいか。」

「はい、ありがとーございましたー。」

 満面の笑みで言われちゃな。

勝てないよな、うん。

「ところでアルム様?」

 ホリンが急に真剣な表情になる。

珍しいっちゃあ、珍しい。

「何だ?」

「昨夜はレイアさんとどんなコトしたんですかー?」

 ホリンが興味津々とばかりに近づいてくる。

「は?」

「お堅いレイアさんが、あんな風になるんだから、きっと物凄いんですよねっ!」

 恐らく赤面しているんだろうが、夜に黒い肌だからわかりにくい。

「えぇと・・・。」

 何だろう、この瞳は・・・。

「えっと濃厚な愛され方はいーんですけどぉ、あのー、私、初めてなんで、最初は優しくがいーかなぁと・・・。」

 何を真剣になるかと思えば。

初めてなら真剣になるのも仕方ない事か。

「って、違ーうっ!」

「はい?」

 突然の絶叫にきょとんとなるホリン。

「昨夜は、オレに騎士の誓いをしただけなの!」

 だけと言っても、それは魂の誓いだから、ある意味で心身ともにオレのモノになったに等しいんだが、全く同じではない。

「それだけぇ?」

「それだけ。あとはこれからの話・・・て、ホリン?」

 危うく本題を忘れる所だった。

「何です?」

 オレは彼女の手を握った。

シルビアやレイアの時の事もあったから、これ以上彼女を不安にさせたくはない。

「もしかしたら、エルフの森にすぐに行く必要性が出てくるかも知れない。」

 だから何だと言われたらそれまでだが、一応な。

「森に?」

「うん、行くだけ。争いになるような事は全力で避けるから。」

 まだ可能性だし、そうだったとしてもダークエルフとの交易は、オレ的には悪い事だとは思ってはいない。

「必要なんですよね?」

 表情はわからないが、彼女の握る手の強さで気持ちはわかる。

「場合によってはね。どうしても。」

「なら、仕方ないですねー。ちゃぁんと私も連れてって下さいよ?案内しちゃいますから。」

 彼女はにっこりと微笑んでいた。

「無理強いはしないからね。」

 彼女の手を握っていない方の手で、髪を撫でた。

思っていた以上にさらさらしている。

「大丈夫ですって。私のご主人様はアルム様なんですからね。」

 そう言って彼女は、自分の首輪をオレに見せつける。

「そうだね、きちんと飼ってあげなきゃね。」

 もう一度、彼女の髪を撫でる。

「もー、アルム様ったらぁ、そのテでレイアさんも落としたんでしょー?」

 笑いながら、くすぐったそうにオレに撫でられるホリン。

「"も"ってなんだよ、"も"って。」

 さっきの会話を真似てみた。

「あはは、被ったってコトですよー。」

 意図を理解したのか、こんな風に返してオレの胸にすり寄ってくる。

この町のこの場所にあって、ホリンもきっと不安定なんだ。

オレはそれをしっかりと認識しなければいけないんだ。

「大丈夫。ホリンがオレから離れていかない限りは。」

 いずれ嫌でも離れる事になるとしても。

オレは、それ以上の言葉を続けなかった。

ただホリンのするままに。

「ダメですよ、私は飼われてるんだから、自分から離れられないんですよん。」

 すり寄った胸元からオレを見上げた彼女は、オレの顔に自分の顔を近づける。

「ご主人様が捨てない限りは、です。」

 そう言って、オレの唇をぺろりと舐める。

「ね?」

 悪戯っぽく笑った彼女は、出会ってからの何時もの彼女だった。

オレはそれならソレでいいと思いながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。

勿論、彼女を抱きしめて。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ