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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅰ章:黒の皇子は決意する。
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憂いと愛と重さ。(ミランダ視点)

長さがバラバラなのは、ご勘弁。

 彼が私の頬にくちづけをして去ってから、私は数秒間固まっていた。

彼の・・・その、あ、愛情表現というのは、とても嬉しい。

・・・すっごく嬉しい。

たった一人の弟。

その弟が姉として扱ってくれるのは、既に家族がいない私にとっては嬉しい。

でも、彼はもうこの国の第二皇子で、私はその侍女なのだ。

「アル・・・。」

 それでも私は、彼が私を二人きりの時だけ呼んでくれる親称。

子供からの親称で、私も彼を呼びたいという衝動に駆られる。

彼が、相変わらず"ミラ"と二人の時は呼んでくれるという事実。

それだけでも幸せだと考えなければいけないハズなのに。

「嫌なオンナ・・・。」

 それでも、昔と身分が違ってしまったとしても、子供の頃の時のように傍にいたい。

何も報われなくても、弟を。

大切なアルを愛したい。

小さな頃、私は本当に弟として彼が好きだった。

彼もきっと、姉として私を好いてくれていたに違いない・・・と、思う。

四六時中、私の傍を離れない彼を見て、乳母だった母が、

『これじゃあ、どちらが乳母かわからないわね。』

 そう笑っていたくらいだったから。

仲の良い姉弟と誰もが私達を見て思ってくれていた。

でも、その彼が病に倒れ、それが死に至る可能性があると知った時、

私は無理矢理に気づかされた。

身を引き裂かれるような想いと共に。

私が彼をどれだけ【愛して】いるか。

「アル・・・。」

 声に出して呟いてみる。

鼓動が高鳴る。

彼は今、ここにいないというのに・・・。

「あぁ・・・アル・・・。」

 私は自分の身体を抱きしめた。

今の彼は、この国の第二皇子だ。

でも、私は知っている。

彼が、本当はこの国では望まれる方が少ない存在だと言う事を。

でなければ、彼付きの侍女が私だけなんて事は有り得ない。

「アル・・・私の皇子・・・。」

 妄想だとわかっていても、口に出すだけで身体が震えた。

心だけでなく身体も、自分は皇子のモノになってしまっていて、

彼以外は受け付けないだろうという自覚。

それだけが、脳裏に焼き付く。

「・・・アル・・・愛してる・・・。」

 彼が先程まで横たわっていたベットに手を伸ばす。

少し、温かい・・・。

これが彼の熱だ・・・彼の温もりなんだ。

どんどん、自分の身体と頭がふわふわしてくる。

全てが彼に支配されていくような錯覚。

そう・・・この温かいと思える距離に・・・私はいたい。

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