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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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抜目と食事とご褒美。

 ズバリ、視線が痛イ。

そして、沈黙が痛イ。

既に壊れたミランダの様子と上機嫌なレイアの様子から、何かが起きたのだろうと空気が明確に表している。

空気はそのままその場にいる他者に向かっていくワケで。

「何で皆、こんなに静かなのか・・・かな?」

 朝食を食べ終わって、食堂で休んでいる今でさえ誰一人発言しない。

普段は・・・前の城にいた時は、常に一人で、周りにはミランダしか居なかった。

こんな静かな食事は、当たり前ですらあったんだが・・・今は寂しいと感じる。

「弱ったなァ・・・。」

 精神的にも少し脆くなったみたいだ。

「大丈夫ですよ、アルム様、私はちゃんとお傍にいますから。」

 オレの呟きに、"オレだけの騎士"になったレイアがすぐさま反応する。

昨日の夜から、彼女はことあるごとにオレに"大丈夫"と言ってくる。

自分の弱さに嘆いたつもりだったが、レイアにはちょっとズレた風に取られたらしい。

それにしてもレイアの積極さは、意外だった。

ちなみに今も、さり気なくオレの肩に手を触れてから、離れて行った。

積極的というより、情熱的?

「わ、私もしっかりとお仕えいたしますっ!」

 慌ててミランダが追従する。

この展開、朝から一体何度目だろう・・・。

「ん?」

 ホリンが何でか、にっこりと微笑んでいる。

何が楽しいんだ?

「ホリン?どうかした?」

「今日は私の番だなーって。」

 楽しげに述べたホリンの一言に、ミランダとレイアがピクリとする。

何だ?

「まぁ、そうだけど、それがそうかしたか?」

「もー、アルム様ったらー。だって"あのレイアさん"が一晩でこーなんだよ?」

 朝からにこにこしていたレイアをホリンがびしっと指差す。

失礼だぞ、ホリン。

"あの"が何をさしているのかは、何となくは理解できるが。

「私、今日、一晩でどれだけ価値観変わっちゃうんだろーなって。」

 きゃっと、その場で赤らめた顔を手で押さえる。

「にゃっ?!」

 奇声と共に肩が震えてるミランダが見える。

「きっと明日の朝日が、これまでと違うモノに見えたりするよね!ね!」

 力説されても・・・。

「確かに、価値観というか、朝日が違ったモノに見えた気はします。」

 レイアが真面目にホリンに答えを返す。

真面目なのは、美点だよ、美点なんだが・・・。

「やっぱり!そうなんだ!」

「何と言いますか、生まれ変わった気分、ですか。」

「うっわーっ!うっわーっ!」

 絶叫してはしゃぐホリンに、したり顔をして赤面しまくるレイア。

つか、オレは無視かい。

オレも当事者なんだが。

「やっぱり、"経験者"の言葉は違うね!」

「け、経験者・・・。」

「あの、ミラ?ホリンは何か勘違いしているだけでね・・・。」

 小刻みにガタガタ震えだしたミランダを何とか宥めようと思った。

「えぇ、"一生に一度"の事ですから。」

「一生に・・・一度・・・。」

 ヲイ。

レイア、何だよ、それは。

突っ込みを入れようとしたオレだったんだが、マテよ?

・・・。

・・・・・・確かに一生に一度だけだわ、"騎士の誓い"は。

基本、主の生涯に渡ってずっと仕えるものだからな。

って、勘違いじゃないか!しかも、ミランダとホリンの両者共!

場合によっては、レイアも。

いや、ミランダとホリンの考えてるのは、共通であって・・・。

あー、もー、余計にこんがらがるな、もう!

「ホリン、いい加減にしろ!レイアもいちいち真面目に返さなくていい!」

 何だか、ノリが軽いんだよな、真剣さというか、緊張感に欠けるというか。

「あ、そうだ。レイア、シルビィ、ちょっと頼まれてくれないか?」

 ミランダは使い物にならないから除外。

最近、自覚があるんだが、自分は変な点で完璧主義かも知れない。

面倒ごとが嫌いで、不真面目なクセに。

「何也と。」「何でしょう~。」

 やる気満点とのほほんとした二つの返事。

「お金を渡すから、レイアとホリン用に宝飾品を一つずつ買って来て。

「えっ!」「どういう意味ですか?」

「どうもこうも、設定は忠実に。」

 そういう設定だったろ?

馬鹿皇子に貢がせた宝飾品とか、つけてても不思議じゃないだろ?

「二人共、解り易い所に着けておけよ?馬鹿皇子の貢ぎ物なんだから。」

 しっかりと前面に出さないとな。

「その代わり、決着ついたらあげるから。」

「いいの?!」

 真っ先に食いつくホリン。

「別にオレは宝飾品には興味ないし。」

 だって、腹の足しにもならいし、どうにも実用性が低い物には興味が湧かない。

綺麗だとは思うけれど。

「迷惑料かな。」

「あはは、気にしないでいーのに。」

「私は生涯を誓った身ですし・・・。」

 二人共遠慮はしているが、嬉しそうだ。

「あらあら、羨ましいですねぇ~。」

 シルビアは二人の様子にクスクス笑っている。

「あー、多めに渡すから、シルビィ、ミラ、ミリィの分も買っておいで。ただ優先は二人の分な。」

 不公平は良くない。

皆、貧乏くじの中、オレについて来てくれたんだから。

「呼びました?」

 給仕をしていたミリィが、ぽよんぽよんと・・・いや・・・すまん、とてとてとこっちに歩いて来る。

「皆にご褒美の話だよ。直接は行かせてあげられないけれど、皆、相談して決めるといい。」

「え?えぇっ!?い、いいんですか?!」

「大袈裟な。あ、クリス用には、何か違うものを宜しく。料理人は髪も短いし、宝飾品は無用って人多いから。」

「承りましたぁ~。」

「了解しました。」

「あ、男共には酒でも・・・。」

 酒と言えば・・・。

「・・・酒をバルドの部屋から失敬して振舞え。適度に。」

 使えるモノは有効に使わないとな。

うん、バルドの教えだ。

忠実に師の教えを守るオレ、何て素晴らしい教え子なんだ、うんうん。

「本当は、オレが直接行って、皆の分を選んで渡したいんだが・・・仕方ないか。」

 何たって現在の主役、渦中の人の一人だからな。

当然、監視されているの前提だ。

やれやれ、溜め息が出るぜ。

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