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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅱ章:黒の皇子は立ち上がる。
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鍔迫り合いと面会と戦端。【後】

「バルド、オマエ帰レ。」

「若?!」

 ま、そういう反応するよな。

「話しを聞け。そうだな、兄上に無事着いたという報告の手紙を届ける。"という事にして"おけ。」

 後半の言葉にニヤリと笑うバルド。

流石、長年一緒にいるのは伊達じゃない。

「一筆書くからな。兄上から返事を貰ってきてくれ。遠くの城で暮らして心細いしな。」

 笑い返すオレ。

「弟は兄上からの便りを心待ちにしていると、な。」

 嘘じゃない。

手紙の返事は欲しいぞ、今回のは。

「委細承知。」

 一番危険度が高いからな、最大戦力を使うしかあるまい。

「ザッシュ、君は実家に帰りたまえ。優しい皇子は暇をやろう。積もる話もあるだろう?今の太守が来てから色々あっただろうしな。」

「了解っス。"今の太守になってからの暮らしぶり"でも聞いて来るっス。皇子は本当に優しいっスね。」

 的確な返事をして、にっこりと微笑む。

流石、デキる男。

「オマエもイイオトコだぞ。」

 オレはそんなザッシュに笑いかけた。

「ミラ、シルビィ、ミリィ。オマエ達は当面一人で動くな。動く時は最低二人一組で。それ以外の日中は必ずオレの部屋の外の扉で待機。」

 何もそこまでして危険に踏み込む必要もないしな。

部下を傷つけるだけの上司なんて、無能だというのは理解してる。

三人はしっかりと頷いた。

「あの?私は?」

「あ、私もー。」

 名前の呼ばれなかったレイアとホリンが聞き返してくる。

「ホリンとレイアは今夜から、交代でオレと褥を共にしろ。」

「はいぃっ?!」

「夜伽!?」

 まぁ・・・そうなるよな。

「ホリンは目立つからね。スクラトニーのあの反応からして"ダークエルフの魔性に取り憑かれたアホ皇子"とでも思ってくれるだろう。」

 好都合だ。

「ついでにエルフの森との関係性を匂わす為に普段から一緒にいるのがいい。偏見を利用しているようで気が引けるんだが・・・。」

 苦肉なんだよ。

オレ、本当に無能の上司ギリギリだからさ。

ただ噂を短期間で広める為には、派手な方がいい。

「大丈夫って言ったじゃーん。アルム様には私が必要なんでしょー?私、頑張っちゃうから。」

 腕まくりをしてみせるホリン。

頑張るって何をだろ?

まぁ、理解が得られて良かった。

「私はどのような理由があるんです!?」

 今度はレイアがオレに喰ってかかってくる。

「ん?レイアを抱いてみたいから。」

「なっ?!」

 おーおー、口をパクパクさせて面白いの~。

「という性的欲求は置いといて。"近衛兵に扮装させてまで連れてきたかった寵愛の女"という設定ね。」

 意外とオレ演出家に向いてるのかな?

「動きやすくなる迄、しばらくは伏兵という位置だ。真っ先に疑われるだろうから、相手は直接的な手段は取ってこないと思うけど。」

 何やらバルドが期待に満ち溢れた目で、楽しそうにオレを眺めてやがるのを横目で見つつ。

ダメ皇子に期待し過ぎだっつーの。

「この方が愛欲に溺れるダメ皇子っぷりが出るでしょ?これで引き籠って噂流せば、油断を誘えるかも知れない。」

 動き易くなる分にはいくらでもなって欲しい。

「と、言うワケでミラ、シルビィ、ミリィ。上手く噂を流してな。クリス達にも言っておいてくれ。」

 浸透するかな。

これが向こうに伝わるといいな。

伝わったら、不本意だが向こうの誰かの手の者が入り込んでる証拠にもなる。

「バルドとザッシュは速さが命だ。こっちは手数が圧倒的に少ないんだからな。」

 頷く二人。

「アルム様ぁ~。取っ替え引っ替えついでに~三人目は如何ですか~?」

「だぁぁっ。」

 一気に力が抜けたよ、シルビアさん!

「あの、二人を選んだ理由もしっかり聞いてたでしょう?別に本当に夜伽とかってワケじゃないんだから、二人で充分です。」

 相変わらず突発的だよ、この人。

「え?そーなの?」

「それは本当ですか?アルム様」

 ホリンは意外だと言わんばかりの表情で、レイアは真剣な表情で聞き返してきた。

「一体全体、どうすれば納得するんだ?というか、オレを何だと思ってるんだ?いくら二人が魅力的でもそこまではしなぁ・・・いよ。」

「アルム様、今の間は何ですか?」

 さっきまで黙って聞いていたミランダが静かに呟く。

「仕方ないだろ?ミラを始め、皆魅力的なんだから。」

 ミランダを始めってのが重要。

弟の一番の座は、絶対に誰にも譲れないって人だからな。

「まっ、止められなかったら、仕方ないよね。ね?レイアさん?」

 ホリンがうんうんと頷きながら、レイアに同意を求める。

本当にどうしたんだ、ホリンよ。

今迄の話をきちんと聞いていたのか?

「え!?あ、はぁ・・・確かに"若気の至り"という言葉もありますが・・・。」

 それで話は全て済んで納得する事なのかレイアよ。

至ったらダメだろ、倫理的に。

「あーもー!掻き回さない!はい、各自動く!って、ザッシュもういねぇじゃんよ。」

 空気は読むが、空気は見ない男、ザッシュ。

本当に我関せずだなぁ。

仕事をきっちりこなす男だからいいか、うん。

激しく当初の目的と思惑からズレて行く皇子。

果たして、その結末や如何に?!ってコトで・・・。

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