プロローグ ~Happy Birthday。~
身体中の感覚がない。
剣を・・・。
あれだけ力強く握り締めていた剣の感触もない。
瞼も開かない。
声は・・・。
「・・・・・・ぁ。」
喉もひりついて、言葉を出すのが辛い。
オレはどうなったんだろう?
人の・・・気配?
「気がついた?」
オレの声じゃない。
誰もいないハズの空間に?
「ぅ・・・。」
なんとか、うっすらだけど片方の瞼だけを開く。
天井?
見た事もない、見知らぬ天井。
「気づいたのね、漂流者さん。」
長い藍色の髪の女性。
というか、漂流者?
「浜辺に倒れてたのよ?名前も判らなかったから、漂流者さんて呼んでたの。今、お水持ってくるから。」
そう言うと、"白いワンピース"の裾を翻す。
白い・・・ワンピース?
波音が聞こえる。
海が近いのか?
白く泡立つ波の・・・。
ふと、開いた片方の瞼から、涙が一筋流れ落ちていく。
感覚の抜けている重い身体の中で、ようやく首だけを横に向けたオレの視界に、一枚の写真が。
少し幼い先程の女性と・・・。
「・・・ぁ・・・ただいま、姉・・・さん。」
オレは。
オレの中の魂がそう呟いて、また深い眠りについた。
→To the next Prince→
→To the next Prince→
ここまでのご愛読ありがとうございました。
この後もお楽しみに。