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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
最終章:黒の皇子は三度生まれる。
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このロクでもない世界で。

「予言か・・・。」

 元々、オレはそんなのは半信半疑というか、信じない方だ。

以前にホリン達のお婆様にもそれは言った。

だが結果として、予言は完全には外れなかった。

解釈によって、取り方も対応の仕方もまちまちだったけれど。

でも、ヴァンハイトは皇王にはなれたけれど、世界を統べる事は出来なかった。

ただ、確かにヴァンハイトの皇子は今、双つ剣を持っている。

今は皇太子の方の皇子ではなくて、第二皇子の方だが。

祖皇だって、こんな事態、予想だにしなかっただろう。

オレが聞いた予言の"太陽"と"月"だって、この二つの剣の事かも知れないし、"オレ"と"トウマ"の事かも知れない。

今なら、"ディーン"と"ディアナ"の魂の事だったのかも知れないとも思う。

そんなの受け取った側の持っている情報によってだって、変わっていく。

たださ・・・。

「ドイツもコイツもそんな不確定なもんに踊らされやがって・・・。」

 それよりも、自分の傍にいてくれる人達、目の前の現実の方を見るべきじゃないのか?

目の前の息巻いている相手を見る。

「オマエもオレも、何も知らなければ、何も持たなければ、もっと楽になれたのにな。」

 事実を知っても、見て見ぬフリが出来ていれば、こんな事を背負おうと思わなければ、違ったかも・・・そう思うけれど、それ以上は意味がない。

考えたところで、今更変わるわけでもないから。

結局、"この世界はロクな世界じゃなかった"って事だ。

ロクでもないけれど、オレには大切な世界だ。

「さぁ・・・。」

 オレは誰ともなく呟き、そして先程と同じように突進する。

オレが選んだ道は結局、コレで。

アイツの選んだ道は、ソレだった。

オレの動きに痛み堪えて投げられた無数の短剣を見て、更に速度を上げる。

円盾を前面に構え剣で弾き落とす事はしない。

次に振るう左右の一撃ずつが最後だろうから。

甲高い金属音がして弾かれていく短剣、その内何本かが、身体に突き刺さる。

だが、痛みは一瞬で出血もしない。

【黎明の如き慈愛の光剣】

"ディアナの剣はその慈愛で傷すらも黎明の中に消し去る。"

「ヤァッ!」

 左足の蹴りを相手の膝めがけて蹴り出す。

一瞬にして姿が掻き消え見失うも、それは"見る"という事においてだけだ。

気配はしっかりと追えている。

その気配の方向に身体を向けると、ヤツは剣を一振り握っていた。

武器を手に取るのが目的だったらしい。

「死ネッ!」

 怨嗟の声を上げ、姿を小刻み消しながら距離を詰めて来られると、距離感を見失いそうになる。

だが相手の剣は、今度はただの剣だ。

オレの真正面からの刺突。

・・・と、見えたのは一瞬だけで、その姿のまま姿を消して、左側から突っ込んで来る。

きっと、相手の真正面からブツかるということをした事がないんだろうな。

身体も心も。

突き出された剣の下から盾を滑り込ませ、身体を沈ませる。

そのまま下から相手の腕ごと上へと弾く。

上がった左腕。

ディアナの剣を上段から、さしたる力を籠めず振り下ろす。

オレに突きを繰り出していた剣と一緒に宙を舞う腕。

これで、もう相手は武器を持てない。

詰んだ。

「バァーカ、燃えちゃぇっ!」

 チリッという音がした後、剣を振り下ろしたオレの脇の辺りで、熱く光る球体が!

「チィッ!」

 その火球は、一瞬でオレの頭部より大きく膨張する。

術使いであるヤツには、これくらいの芸当は造作も無いという事か。

そうだよな・・・空間に干渉出来るんだもんな。

肉薄したこの状況じゃ、回避しても間に合わない。

互いにただでは済まないだろう。

ただ大事な事を忘れている。

【宵闇の如き無慈悲な黒剣】

"ディーンの剣はソレすらも宵闇の彼方に消し去る"

「アァァァァーッ!」

 今までに出した事のない咆哮を発しながら、渾身の力を籠めて火球ごと奴の胴を逆袈裟に薙ぎ払った。

盛大に飛び散る鮮血。

そして、その後にどちゃりという音。

オレの足元に赤い池が広がってゆく。

即座に命を絶つ一撃ではなかったが、間違いなく致命傷だ。

そう確信してオレは息を整える。

身体は剣の能力もあってか、大した傷を負っていないから、体力的には何ともない。

だが気力・精神力はかなり消耗している。

・・・神器二本の同時発動とか前代未聞だもんな。

そういう意味で、もうそんなに動きたくないというか、動けない。

ふと、オレの足元でうつ伏せになっている人間を見る。

「結局、オレもオマエも器用には生きられなかったってコトだな。」

 我ながら呆れ果てるしかない。

だって、オレは殺し合いをしている相手の名前すら知らないんだから。

知ったら、決心が鈍りそうだったからというのも、お粗末な話だけれど。

「さて・・・。」

 オレはずっと気にしないように、視界に入れないように努めていた、"ソコ"を見る。

拳大くらいから成長を始めた穴。

それが今や、人一人が入れるくらいの大きさになっていて、そして"更に成長を続けて"いた。

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