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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅰ章:黒の皇子は決意する。
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イイオトコと祖国と神器。

設定・説明が多いのはご勘弁下さい。

 少し、この国の説明をしよう。

この国の起源は古い。

それ程に強大な国ではないが、その歴史の古さと歴代の皇王の善政のせいか、

貴族や臣民の信頼に厚く、その強固さ故か、大国と言われる国にも負けない力を有している。

あれだね、民は宝だね、ホント。

で、起源はというと、大戦の英雄の一人が建てた国とされている。

わかり易い。

ちなみに国土の半分以上が森と山に囲まれれている。

皇城は山側を背にして川沿いに位置し、森の産物と山の鉱物資源を川で輸送するせいか、

街も大抵川沿いになるのだ。

話が逸れた。

大戦の英雄っていうのは・・・あー、まぁ、歴史は苦手なんだが、

世界に次元の穴が空くという、まぁ、そんな大騒動を起こした輩達をやっつけた戦士達を意味する。

何処までが本当かどうかっつーのは、ぶっちゃけ建国の歴史なんて何処もそんなもんだろ?

勿論、他にも同じように英雄達が建てた国やその流れを組む国もある。

それ以外の国もある。

今じゃ新興国や種族単一国家みたいなのもある。

獣人とかエルフとかの国とかね。

「アル、眠そうだな?」

「シグルド兄さん。いや、眠いってワケじゃないよ。これは第二皇子の余裕ってヤツ?」

 無気力に食堂まで歩いていたオレに声をかけてきたのは、兄のシグルドだ。

我が国の第一皇子様。

金髪蒼眼の麗しいお兄様様。

絵本物語から飛び出してきたと言われても、信じてしまうような美しさだ。

「そうか・・・私が死んだら、アルも忙しくなるんだがな。」

「ご冗談を。まだまだ父上も元気だし。それに英雄の再来と言われた兄上様に誰が危害を加えられると?」

 この兄上、外見だけでなく全てにおいて完璧超人。

全国民・貴族で人気投票したら、シグルド皇子>母上(皇妃)>父上(国皇)>>>超えられない壁>>>オレ。

確定。

実際、オレの中の評価もそんな感じだから、反論は全くナイ。

寧ろ、これ以外の結果・評価が国民・貴族から出たら、誰かの作為か投票者がアホのどちらかだと思う。

「う~ん、英雄の再来か・・・実感ないんだがなぁ・・・。」

 涼しげな顔で微笑む。

オレが女だったら、きっとこれだけで堕ちるな。

兄上のこの発言は、オレを前にしているからに他ならない。

何というか、兄上は兄上で気ィ遣いなんだよね。

「実感はあるでしょうが。」

 オレは兄上の腰元に下げられている剣を指さしてやった。

皇城内での帯剣は、原則許されてはいない。

警備の兵士は仕方がないけれど、物騒なモノを持ち込まれて刃傷沙汰でも起こされたら困る。

じゃあ、何故兄上は?

例外の理由は、その剣が特別だからだ。

その前に説明すると、この国の基本剣術は双剣だ。

特に皇族は。

理由は、建国の祖。

例の英雄が、双剣使いだったからだ。

古く閉鎖的な国のせいか、そういう所だけは厳格だ。

で、我が兄上が腰にブラ下げている剣、その双剣の片方がコレ。

所謂、伝説の武器ってヤツね。

神器でも可。

ちなみにもう片方は、国王である父上が持っている。

剣を渡され、剣と契約の儀式をする事で皇位継承とするから、両方渡したら禅譲で皇位が移動しちゃう。

だから片方だけ。

じゃあ、何故英雄の再来とか呼ばれちゃってんのかと言うと、

"剣を継承すること"と"剣を使えること"は別だってコト。

腐っても伝説の武器なんだし、使う人を選んだって別におかしい事ではない。

まぁ、代々の皇王全員が剣術が得意なワケがないってのもあるけど。

"継承できる"ってだけでも大変なんだ。

3,4代前の皇王は継承すら出来なかった。

でも、まぁ、文治政治の手腕が凄かったし、皇族の中から継承者が再び出ないとは限らないから、

皇族廃絶とまではいかなかったらしい。

歴史があって厳格な分、皇族が半ば神聖化されているってのもあるかな。

・・・くだらない。

「アルも儀式を受けてみれば良かったのに。」

「は?」

 何をのたまわっているんだこの兄は?

期待を込めた眼差しで見るのヤメい。

「冗談にも程がありますよ、兄上?」

 説明するのもダルい。

確かに選ばれる気も、継承する気もなかったから、資格選者の儀も出なかった。

「二人共選ばれたらどうするんですか?国を二つに割るとでも?」

 内乱でも起こすつもりか?

確かに朝、国を滅ぼそう案は出したが、そんな国の滅ぼし方は嫌だぞ、オレは。

「ふむ。北と南で二分か・・・共同統治でもいいな。」

 ちょっとマジで考え始めちゃってるよ。

あ~、ダメだ、この人。

軍事的にも政治的にも手腕があって、カリスマがあっても弟であるオレに甘過ぎる。

「オレ以外の前で、そんな事を言わないで下さいよ?

 それに儀式は誰が何を言っても受けません。恥かきたくないです。」

 弟用の思考回路のみ欠陥品なんだわ、コレ。

「なんでだ?」

「何でって・・・それは前者に対してですが?それとも後者?」

「前者はわかる。私はアルムには甘いとよく言われるからな。」

 言われてコレかいッ!!

「後者は何でだ?確かに二人選ばれたとしても、現状は私が第三段階の継承者なんだし、

 アルムが"使える人間"じゃなきゃ、皇位の移動はない。

 恥をかくと言っても、選ばれないとは限らないだろう?」

「あ~、"使える人間"がいる以上、選ばれもしませんよ。」

 神器を継ぐって意味、本当に理解しているのかも妖しくなってきた・・・。

「双剣なんだから、二人"使える人間"がいても。」

「それじゃあ、双剣って言わないでしょうに。」

 神器と祖皇に対する敬意はないのか、兄上よ。

「はぁ・・・もうさっさか朝議に行って下さい。オレは朝食を摂りに行きますから。」

 兄上は政治の経験を積む為に、現在は王に四六時中ついて勉強している。

「そんな時間か?アルと話していると楽しくて時が過ぎるのを忘れるな。

 あぁ、そう言えばアル、皇室執務長官が話があると言っていたぞ。」

「え゛・・・。」

 言うだけ言って、兄上は颯爽と去って行った。

その後ろ姿だけでも無駄に格好いい。

だが、その爽やかさとは反対にオレは最大に落ち込んだ朝食が待っていた・・・。

皆さんの生温かい目が、書くエネルギー。

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