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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅰ章:黒の皇子は決意する。
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知見と暗雲と城下町。

 何だ?

この異様な馬車内の熱は?

誰も何も喋らないし。

さっきまでの弾んだ(?)会話はどうした?!

誰か何か言ってくれ。

「そろそろ、城下町前の街道に入るっスよ。」

「良くやった、ザッシュ!」

 最早、神業だ。

今程にキサマのあえて空気を見ずに行動する能力に感謝した事はナイ!

ザッシュは淡々ときちんと仕事をこなす様はスバラシイ。

勤勉は良点だ。

「いや、これも仕事っスから。」

 その我、関せず的なところもまたイイ!

「で、どうよ、大外の町の状況は?」

 馬車の御者窓越しに聞いてみる。

"大外の町"というのは、城下町の更に外側の外縁部にある町並みの事だ。

「どうにもこうにもっス。速度を落としますから、窓から直接見て下さいっス。」

 そうだな、自分の目で見た方が早くていいか。

「なんじゃこりゃ・・・。」

 街道に面した町の店らしき場には、人通りはまばらだった。

宿らしき建物の前には、呼び込みの姿すら見えない。

「あー。もうこの先、嫌な予感しかしないよ、レイア。やっぱアレっぽい。」

 オレは横で俯いていたレイアを手招きして、馬車の窓から外の様子を見せる。

「・・・その3ですか?」

「かなぁ・・・でも、それだと露骨過ぎないか?」

 隠す工夫とか襲撃の幼稚さとか。

「確かにお粗末な気もしますが、そもそも成功していたら私達はこの光景を見ていない訳で・・・。」

 あぁ、そうか、そうだよな。

確かにあの場でオレが死んでたら、この光景を見る事はない。

にしたって・・・だ。

「だったら、失敗した時の事を考慮したり、隠蔽工作をだなぁ?」

 いや、でも、もしかして・・・。

「意外と舐められているのかと。」

 それしか考えられないよなぁ。

まぁ、オレ、ダメ皇子としての定評があるからなぁ。

まさか、ここまでその噂が浸透しているとは・・・。

「有り得るのかなぁ・・・でもさ、ここまでくると、犯人は意外と絞れないか?」

 聞き返して何だけれど、答えを聞きたくない。

ヤだ。

耳を塞ぎたい。

「まだ可能性の段階です。」

 レイアの答えが優しいんだか、優しくないんだか。

「とにかく、レイア、ザッシュ、気をつけろよ。」

 二人は戦闘要員だからな。

気をつけろよ。と言ったが、昨晩の襲撃も淡々と仕事をこなしたザッシュは、刺客(仮)を2人程退けている。

意外と武闘派かつ技巧派。

「そう言えば、ザッシュ?」

「なんスか?」

「君はこの地の出身だったね?ちょっと厳しい状況っぽいのはオレ達も同じなんだけれど・・・。」

 家族だもんな。

大事にしなきゃ。

「何とか暇を見つけて帰れるようにするから。家族とか知り合いとか気になるだろうけれど、少しだけ我慢して。」

 本当に能無しなオレが上司で申し訳ない。

「もしかしたら、人手が必要になるかも知れないから。」

 悔しいが、味方に分類される人間が、現状少な過ぎる。

これから増えるとは限らないのだ。

ザッシュ達も味方で居続けてくれるか判らない。

裏切り者の血だからな・・・誰に裏切られたとしても当然だよな。

でも、裏切るよりは裏切られる方が、断然マシ。

特に自分が信じた人間にならね。

「大丈夫っス。ウチの家族はそんなヤワじゃないっス。」

 ザッシュは御者席で笑っていた。

白い歯が健康的で眩しいぜ。

「アルム様、何時迄そうしているおつもりですか?」

「へ?」

 ミランダに言われて気付いた。

馬車の窓から外の景色を見る為にレイアの肩を抱き、彼女の息がかかりそうな至近距離で密着していた。

「すっ、すみません!」

 そそくさと離れるレイア。

う~ん、可愛い。

「可愛いな。」

「え?」

 ヤベ、声に出た。

「しかし、いいのかね。こんなイイオンナとイイオトコの部下に囲まれてて。オレ、廃嫡状態覚悟なのにさー。」

 レイアへの言葉を誤魔化しつつ。

でも、皇族制が無くなれば確定だしな。

再び顔を赤らめる3人の反応を見たザッシュは、無駄に爽やかに笑っていた。

ぐぬぬ。

こうして城下町を抜けて州府を通り過ぎ、半日以上かけて目的に到着した頃にはもう夕暮れ迫っていた。

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