シバられる必要なんてないというコト。【前】(アシュリーヌ視点)
「ハディ?」
顔が熱い。
胸がドキドキする。
「あん?」
当初、ハディが言っていた目的と違うけれど、これはどちらかというと良い流れ。
"私にとって"は。
「皇子様の容姿は?どんな人?」
興味は尽きない。
「黒髪に黒い瞳で・・・あー、背は低い方かな。トシは俺様より下っぽい。」
黒髪に黒い瞳?
「ヴァンハイトの皇子なのよね?」
「第二皇子やけどな。」
彼は第二皇子なのかぁ。
「じゃあ、第一皇子の容姿は?」
「知らん。まぁ、ヴァンハイトのご多分に漏れず、金髪・蒼眼だと思う。」
皇太子の方は、"普通"の皇子様かぁ。
「ま、第二皇子、第二皇子つっても、アルムは皇子っぽくねぇけど。」
溜め息と同時にドサリと音がする。
「ハディ?」 「座っただけー。」
ハディは気配を無意識に消す事があるから、たまにびっくりする。
「で、どう皇子っぽくないの?」
ハディの中の皇子様像というのが、どんなのかが問題だけど。
「まず全然偉そうじゃねぇ。」
「偉そうにふんぞり返っているよりいいんじゃない?」
別に皇子とか貴族が、絶対偉そうにしてなきゃいけないわけじゃないし。
「なんつーか、貧乏性で庶民的?ダークエルフだろーが、亜人だろーが、分け隔てなくイチャついてんなー。」
「庶民的感覚はいいけれど、そのイチャなんとかってのは、なぁに?」
「うまく説明できんけど、アルムは誰に対しても真っ白なんや。外見には拘らんし、種族がどうとかも言わん。相手を信じようと思えば、とことん信じるし、常に愛情を持って接しとるというか・・・。」
何がいけないのかしら?
「博愛精神の持ち主なのね?」
さしずめ、慈愛の皇子ってトコかしら?
益々ステキな皇子様じゃない。
「あぁ、確かに誰かも好かれるな。誠実やし・・・でもなぁ・・・。」
ハディが言葉を濁す。
「何か問題?」
「いやな、誠実すぎるというか、我が身を削ってもってとこがあったり。なんやろな、そういう意味で行き過ぎなトコがあるというか・・・。真っ白ってのも悪く言えば、自分の目で捉えたモノしか信じないというか・・・。」
う~んと唸り声を上げる。
無責任な人間よりは、断然好感が持てると思うのだけれども・・・。
「見ていて痛々しい。あ、いや、俺様としてはアルムみたいな人間が国を治めるっちゅーのは、すげぇ良い事やと思う。ああいう人間が皇王になるなら、世界中の王がそうやったら、世の中もうちょい住み易くなるんちゃうかな。」
人を褒めないハディにしては、絶賛というかベタ褒め。
「ふーん。珍しいね、ハディがそこまで言うの。」
「そうか?クラムとかも認めてはいるぞ?」
クラムか・・・。
「型にはまらないっちゅーカンジがいいな、アルムは。何すっかわからんが面白ぇ。型といえば、長剣使いだし。」
あれ?
「・・・長剣?双剣ではなくて?」
おかしい。
ヴァンハイトの皇子なら、双剣でないと・・・。
そうじゃないと、"愛しの皇子様"ではなくなってしまう。
「んー、まぁ、二本っちゃ二本やな。長剣二本を同時に使っとった。本当、器用や。」
「双剣は双剣でも、長剣を二振り・・・。」
一体全体、私の皇子様はどうしてしまったのだろう?
お兄様の方ではないハズなんだけれど・・・。
「面白いやろ?全部が全部そうなんや。俺様の槍だって付加持ちの円盾で防いでみたり。」
「ハディの槍を?!」
「未解放やけどな。」
未解放も何もハディの槍は神器。
しかも英雄の使っていた最古、最上級の神器なのに!
「全身黒ずくめにも驚いたけどな。」
「黒ずくめ?どんな物を?」
もしかしたら・・・。
「古臭い黒い防具で・・・あ、セイブラムで鎧を貰ってたっけな。銀縁の黒い防具、今は上から下までそれやな。」
「・・・ねぇ、ハディ?皇子って剣も黒かったりするの?」
「剣?うんにゃ、利き腕の武器は銀やった。あれも付加されてんな。あとは普通の剣。」
ますますわかんなくなってきたわ・・・。
「とにかく興味がそそられるというのは変わらないから、ハディ、あとで皇子のトコへ連れて行って。二人きりで話がしたいわ。」
「変なコト言うなよ?俺様と同じようにアルムは繊細なんやから。」
「あら、それは相当なのね?」
私は傍らにいるだろうハディに向かって微笑む。
「頼むで。」
「頼まれちゃった♪」
直接話せばわかるかも知れないものね?
この際、今のハディの溜め息は聞かなかった事にしちゃお。
結局、夏休みなんて知るかスペシャルで、連続更新しまくってしまいましたね。(苦笑)




