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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ライライぬこ耳皇国ってコト?

「とりあえず、ハディ達の監視はバルドに頼む。欲しい情報を渡すまでだ。」

「御意。」

 他に良い人選がないというか、選択肢がない。

神器には神器で対抗するしかないからな。

受け止めるだけなら、オレの円盾で可能かも知れないけれど。

でも、この円盾の発動条件をオレは知らない。

そもそも任意発動って出来るんだろうか?

命を預けている割には認識が甘いと思うかも知れないが、発動しなくても円盾の強度は良い。

それに神器と戦う事を想定しているって、どれだけなんだよとも思う。

「レイア、選抜試験の結果は?」

 結局、最後まで参加出来なかったからな。

「合格者人数は五十三名です。」

「意外に残ったな。」

「アルム様の望む文武両道は三十名程度ですが、どちらかの成績だけが良かった者もある程度採用しました。」

 確かに三十名前後は少ないか・・・急造のクセに高水準を望み過ぎてもな。

「鍛錬の内容を個々に変えれば問題ないか。じゃ、レイア、その中の高成績者二名を副団長として選出してくれ。」

 オレの騎士団だが、団長はレイアだ。

人選は彼女に任せたい。

ザッシュが言ったように、少しは周りに頼ったり完全に一任する事をしなきゃな。

これからも少しずつ責任の量や質が増えていくからってのもあるが、オレがいなくなったら特に・・・。

「そう仰ると思いましたので、私の方で既に二名選出しておきました。」

 あはは、早速信頼に応えられたね。

嬉しいよ。

「どうかしましたか?」

「いや、なんというか、もう名実共にオレの騎士なんだなぁと。」

「ど、どうもです。あの、部屋の外に待機させてありありますが、お会いになりますか?」

「うん。」

 顔が真っ赤になって照れているのは、突っ込まない方がいいよな?

「二人とも、お許しが出た。入れ。」

 レイアの掛け声と共に二人が入ってくる。

「ちわーっス。」

「し、し、し、失礼します。」

「何だ、ザッシュじゃん。代わり映えのない。」

「酷ッ!」

「て、コトはアレか。武官派代表はザッシュか、文官試験適当だったもんな。」

 下から数えた方が確実に早かったし。

「一応、実技試験は全戦全勝っス。」

 だろうな。

じゃないと合格出来ないだろう順位にいたし。

さて、という事はもう一人は文官派代表なのかな?

オレはザッシュの隣、もとい斜め下に視線を移す。

「る、る、ルチルと申すまひゅっ?!」

 はぅっと呻きながら口を押さえる人物。

今、ガチッて音がしたな。

盛大に舌を噛んだ音だ。

「こ、これから、副団長として頑張りまひゅぐぅっ。」

 また舌を噛んだな。

しかも、またもや盛大に。

「あ、あの皇子?」

「アルム様?どうかしましたか?」

 全く反応を返す事をしないオレにルチルとレイアが心配そうな表情を浮かべる。

別に機嫌が悪いわけじゃないんだ。

呆れているとかそんなんでもないし、レイアの選択が間違っているとも思わない。

ただな・・・あんまりにも・・・あんまりで・・・。

「・・・カワイイ。」

「は?」 「へ?」

 オレは思わず全力でルチルを抱きしめた。

「レイア!何?この可愛い生き物!」

 赤毛の短くてもふんわりした髪に、赤茶のくりっとした瞳。

そして何より、頭頂部より少し横にある二つの物体。

耳。

そう耳!

「はうぅぅ~。」

「はうぅぅ~だって!可愛い!ついに、ついに!」

 心の中で大絶叫。

オレに!亜人の部下が出来たーッ!

「アルム様?」

「あぁ・・・もうザッシュいなくてもいい・・・副団長はルチルだけで。」

「酷い言われようっスけど、皇子は獣人・亜人が大好きって事だけは理解したっス。」

「悪いか?こんなに愛らしく、かつ力強い種族はいないぞ?両立しているのが凄いじゃないか。」

「否定はしないっス。」

 肩を竦め全力で呆れるザッシュを尻目にオレはルチルの耳の付け根辺りを撫でさする。

「うむ、耳だ。」

「そりゃそうっスよ。」

 一々突っ込むな、ザッシュ。

オレ自身もおかしいと思ってるから。

「よし、堪能した。ルチル、よろしく頼むぞ。」

「はいっ!」

「騎士団が結成となれば、次は団章だが・・・。」

「切り替え早いっスねぇ。皇子、それなら自分に案があるっス。きっと皇子も気に入るっスよ?」

「任せた。でも作成に関しては・・・。」

「ちゃんと州内で作るっスよ。」

 こういう小さな事でも商売になるからな。

なるべく州内の民に公共事業として回せば、その分金が回る。

「よし、次は団員の為の防具類だが。」

 得物は自分達の使い慣れた方のがいいから、防具だけでいいだろう。

これもなるべく州内で作製させたいんだが、上質の物を安価で作製出来る職人はいるだろうか?

「アルム様、カーライルです。」

「入れ。」

 試験の残務処理をしていたカーライルが室内に入ってくる。

「アルム様、新騎士団員の宿舎等の手配が終わりました。当分、公共事業と周辺の街道の警備の仕事をさせるつもりです。宜しいですか?」

「任せる。」

「それとアルム様に面会を求める者が来ております。」

「面会?誰だ、こんな時に。」

 一連の流れと経験からして、疲れる展開しか待ってないんだ。

完全に学習したぞ。

「カーライル。」

「なんでしょう?」

「前置き無く突然会うと、かなり疲労するだろうから、先にどんな人物か言ってくれる?」

「北の商人でヒルダという者ですが。」

「・・・ヒルダ?」

 オレの脳裏にすぐさま浮かんだのは、視界一杯のお尻。

うん、あの美尻。

「まさか・・・あの格好じゃないよな?」

「何か?」

「い、いや、何でもない。ん、まぁ、丁度いい。」

 防具の相談が出来る。

なんてたって、特殊な武具商人だしな・・・色んな意味で。

「知り合いだ。通してやってくれ。」

ちょっぴり皇子が壊れたのは罪悪感の反動とでも取ってあげて下さい。

生暖かい目が大事です。(苦笑)

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