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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅰ章:黒の皇子は決意する。
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交縁と準備と大荷物。

 人数が少ないのが準備期間を短くさせた。

手数も少ないが、用意するべき物も少なくなるからな。

そんなこんなでほとんど事後承諾的にコトを進め、兄上を激しく落ち込ませ、父上を怒らせ、母上は笑いながら父上を黙らせた。

流石は皇妃。

兄上の(オレのでもあるぞ)母だけあって無駄にオレの味方だ。

普段から、"母上を一番愛する息子"の称号だけは死守してきた甲斐があった。

途中、何回かミランダの動きというか、頭のネジがおかしくなりかけたが。

愛しの姉なので、弟として優しく見て見ぬフリをすることにした。


 あとはタコジジィの酒が大変な量になって、皆の大ヒンシュクを買ったり。

限度とか加減とかをこの人は知らないらしい。

できる加減と言えば、"いい加減"くらいだろう。

 途中、旅装品の試着時にはレイアから熱い視線を浴びてしまった。

皇族が双剣じゃなくて、長剣をさしてんだからそりゃそうだ。

これはオレが悪い。

城門を出て城下町を抜けるまでは、少なくとも双剣を下げておこうと思う。

ザッシュ用の双剣もあるしな。

別に双剣を使えないワケじゃないけれど、やっぱり習熟度の問題がね。

 旅の用意の時間のうちオレが一番時間を割いたのが会話。

オレについて来てくれる8人との対話だ。

勿論、ジジィは除外。

タコと人間は会話が出来るハズもないからなっ。

 特に一番大変だったのは、クリスの相手だ。

彼女はオレの味の好み、好物、嫌いな物、好きな料理法・料理名。

ともかく事細かに聞いてきた。

最後の方は、もう文書回答後に質問を受け付けるという流れで。

クリスは特に野菜料理が得意で、レーダは魚料理。

ホビィはなんとデザート作りと飾り包丁細工が得意らしい。

大柄な男が、目の前で自分の親指大の根菜の花を作るを見せられたんだが、オレは絶句した。

いい仕事するじゃねぇか。

ともかくクリスは自分の仕事に関しては、一切の手抜きはしない完璧主義らしい。

 ミリィ・ホリン・シルビアのメイド三人娘。

まとめて"ミホシ組"はミリィが失敗、ホリンが突っ込み、シルビアがフォロー。

そんな流れが出来ていて、随分と打ち解けたらしい。

三人の中で、一番話したのはホリンだ。

彼女は正直に突っ込んでくるので、話が早くていい。

これから向かう城の周りにあるエルフの森の出身なのも大きい。

多少古い内容だが、情報集にはちょうど良かった。

そのエルフの森の男女比率は、女性体の方が多く部族の戦士もその割合を投影している。

族長は男性で、子供は娘が3人。

次の族長は娘3人の誰かか、その夫になる予定だそうだ。

部族の気質は手放しで友好的ではなく、閉鎖的。

排他的という程ではないが、刺激しない方が得策らしい。

「それにしてもホリンの褐色の肌は綺麗だ。」

 初対面の時にも言ったが、もう一度言ったら笑いながら

「何時でも触っていいよー。」

 と、軽く返された。

曰く。

『差別するクセに下品に触ってくるスケベ貴族よりは、皇子は何億倍もマシ。』

 だそうな。

誰だよ、そんなコトするヤツは・・・。

と、思ったが、スケベなのは男は皆そうなんだよ。

オレだって彼女の肌が綺麗だから、触りたいと公言している1人なワケだし。

だが、彼女的にはそれでもマシだと言う。

「皇子は物珍しさとかじゃなくて、ちゃんと褒めてくれてるのがわかるしー。」

 それが一番の理由らしい。

気前いいな。

「綺麗なモノを綺麗と言って何が悪い。」

 胸を張って言い切ってやったら、大爆笑された。

オレ、これでも皇子・・・。

 ミリィはミリィで一日最大3回くらいの失敗する。

失敗のうちの何回かはオレも被害を被ったが、彼女は彼女で頑張っている。

その証拠に一度やらかした失敗は、その日はもう同じ失敗はしない。

まぁ・・・翌日はその限りではないんだが。

頑張りを見てると責める気も失せるし、周りも明るくなるのでいいかとも思う。

ピコピコ動く小ささも可愛い。

胸はピコピコというより、ぽよんぽよんと動いているが。

いや、オレ、ソコマデエロイワケジャナイヨ。

胸よりお気に入りなのが、彼女のそばかす顔だ。

愛嬌があって、事あるごとに鼻を押したりしたくなる。

寧ろ、押ス、摘ム。

彼女的には微妙らしいので、失敗するごとに押したり摘んだりしてやる事にした。

お陰で今じゃ、一日一回は確実に押し放題だ。

(基本的には)隠居する皇子に巻き込まれたのを貧乏クジと思ってないのもいい。

動機が動機だけに。

あと、失敗の内容も取り返しのつかないモノは実は皆無なんだわ。

 一番の問題はシルビア。

彼女は・・・その、優秀なんだが・・・優秀過ぎるんだ。

例えば喉が渇いたなと思う。

誰かに頼むかなと呼ぼうとすると、彼女が飲み物を呼ぶ前に持って来る。

確かに優秀な家令は、言わなくても仕事をするものだとはいえ、そこまでオレの読み易い生活パターンじゃないハズ。

だが彼女は先回りして仕事をする。

それも半端じゃない先読みで。

(心が読めるんじゃないだろうか?)

「読めませんよ~、心なんて。」

 というやり取りがあったりと。

思っている事を的確に見抜いたり(?)する。

本当は解り易い性格しているのだろうか、オレ。

今度から念力で呼んでみようかと密かに思うくらいだ。

優秀さを発揮する一方で、時折よくわからん言動もする。

「という事で、次から"シルビィ"とお呼びくださいな~。」

「はぃ?」

 前振りナシ。

且つ突発的に発生。

「ミランダさんもお姉さんで愛称呼びなんですから~、私もお姉さんなので愛称でお呼び下さいませ~。」

 ・・・・・・。

二人きりの時以外は、ミランダを親称呼びした記憶は全くないんだが?

何故知っているんだ?

しっかし初対面の時からこんなような事言ってたな、彼女。

「じゃあ、シルビィ?」

「はい~。たまに"お姉さん"というのを付けて下さって結構ですよ~。」

 ナンダコレ。

もう付き合うのすら面倒になってきたぞ・・・。

「はいはい、シルビィお姉ちゃん。」

「はぁ~い。いいですぅ。"ちゃん"というのがステキですぅ~。」

 ちなみにうっかりこのやり取りを聞いてしまったミランダは、一日中使い物にならなかった。

時折、『私のアルがぁ・・・。』とか『お姉ちゃん・・・交代・・・。』とか、

ブツブツ呟いていたりと、もう何が何だが・・・。

ただザッシュ1人だけが淡々と仕事をこなしてくれていたのが唯一の救いだった。

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