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エリア五 9話「終幕のアイス&ファイア』

ガルゼドールが生み出した竜の首が後ろから前に振られる、リヴァの後頭部を狙ってくる死の連撃だ。大量に迫る灼熱の痛みを伴うその大破壊に当たれば命はない、なんとかリヴァは人間形態で回避しつつ、ガルゼドールの懐に入る。


「舐めるなよ、小娘ぇ!」


「一応成人してるなの」


「マジか!?」


ガルゼドールもかなり疲弊していて、なおかつ氷のフィールドである。ハンデにハンデを重ねてようやく勝負になるのがこのスライムの恐ろしいところか。懐に入った氷の双剣を持ったリヴァに対し、ガルゼドールも二つのドロドロとした剣を作り出し応戦する。


ドロドロとした死の溶解液が飛び散りリヴァに降りかかる寸前ですぐに凍り朽ちる。氷でも防げない必殺の一撃を与えようとするも竜の渾身の打撃が効いて中々ガルゼドールも上手くいかない。直撃すれば頭部は吹き飛び、原型すら残るまいという威力、リヴァ側は回避に徹さざるを得ない。


「ガァァァァ!!」

「ちぃ!」

 

それはガルゼドール側も同じことである。本来の竜の姿となったリヴァの渾身の打撃をこれ以上耐えるのは難しい、竜の姿で氷を纏った渾身の打撃をなんとかガルゼドールは後方に退き回避する。だが、今こそこの竜にとどめを刺す大チャンスだ。


「そら、王手だ!」


「そうは行きません」


触れればアウトの死の汚濁、ガルゼドールの放った氷でも防げない必殺の一撃がリヴァに当たる寸前、ジョニーが前に割り込み自分とリヴァを瞬間移動を用いて座標をずらし、なんとか死の一撃を免れる。リヴァも人間形態に戻り、また地を駆けガルゼドールとの距離を一気に詰める。


「コァアアアア!!」


「くっ!?」


ジョニーもリヴァのサポートに向かおうとしたがそれはメタルシー魚が許さない。かの鋼鉄の魚は踊るように宙を舞いジョニーに対して全力の突進を披露し彼の行手を阻む。


「そりゃ!どりゃ!よっこいしょ!」


ジョニーもロストナイトとの戦闘もありメタルシー魚と互角…とは流石に過言であるが、それなりには渡り合えていた。数トンの巨躯による体当たりは当たればジョニーでもかなり痛いが、なんとか己の拳と刃で受け流せている。


ーーさて、何故シャドウロイドが本来の強さを発揮できず力朽ちていっているのか説明しなければならない。ジョニーに場合は意思が込められてるのも大きいが…これの理由はまさしく経験不足、というのが適切だろう。


どんな天才でも初見の難しい問題を簡単に解くのは難しいだろう、それと同じだ。ろくな強者との戦闘経験もないまま実戦に駆り出されても、本来のスペックを発揮できるわけないのだ。ガンダーラ軍もクリフサイドも、そこに気づけなかった。


「そこです!」


「コァ!?」


特級戦闘員より遥か格上の存在であるメタルシー魚にジョニーが善戦できているのも、そこが大きな理由だろうか…すぐ近くにリヴァという強者がいたというのも大きいのかもしれない。ジョニーはメタルシー魚が放つ水鉄砲がジョニーの頬を横切り、黒い闇の力を漏らしながらも重い一撃を避け、なんとか勝利へとしがみつこうとしている…


それでも地力の差は歴然、ジョニーが押されつつあるのだが…ーーさて。


「リスクはあるけどね…!」


「なの!?」


ガルゼドールが脈絡もなしにいきなりリヴァに対して飛びかかり、死の粘液で飲み込もうとする。氷使いであるリヴァに対してこれはかなりリスクのある行為なのだが、ここまで追い詰められては仕方あるまい。


もう体積を大きくするほどの力は残っていないため、溶解液の体積自体は100cmにも満たないが威力自体は本物。リヴァの顔面に襲いかかるその恐怖、しかしリヴァが地面に伏せることでその破壊に触れるスレスレでなんとか免れた。


「隙ありなの!」


「しまっ…た!?」


ガルゼドールによる飛びかかりの失敗で生まれたその隙に、リヴァが氷のハンマーを生み出しガルゼドールをぶち飛ばそうとする。ガルゼドールも焦りなんとかそれを避けようとするがもう間に合わず、放たれた高威力の鉄槌により大きく吹き飛ばされた。


受け身の体制すら取ることさえできず、ガルゼドールは地面に伏す。しかしクリフサイド側だけが優勢というわけでもなく。


「コァア!」

「くっ…!」


メタルシー魚とジョニーの小競り合いはどうやらメタルシー魚に軍配が上がったらしい、ジョニーが傷だらけとなりながら地面に膝をつく。メタルシー魚は手こずらせやがってとでも言いたげな顔をして一度ガルゼドールの元へと退く。


「はぁ、はぁ…正直、君をこれ以上敵に回したくないところだ。これを敵として抱えるのはガンダーラ陣営にとってもかなり不利益だろうし」


「…仲間になれとでも言うつもりなの?」


「いいや、そんなことを言うつもりはない…単純さ。君を、元の世界に帰してあげよう。そしてこれ以上君の世界には干渉しないと約束する…その代わり、君たちもこれ以上は関わらないこと、どうだい?悪くない提案だろ」


ガルゼドールの言葉には嘘は感じられない、リヴァの予感が正しければ本当にこのまま見逃し、そしてもう世界に干渉しないのだろう。しかし、忘れてはいけないことが一つある。


「ディノスは。ディノスは、返してくれるなの?」


「あのワニか………悪いね、グレイド様の命令でそれだけは無理だ」


「そうなの…ならば交渉決裂なの」


「ふむ」


ディノスが返還されないのならば、これ以上の話に価値はないとリヴァはガルゼドールの提案を即刻切り捨て戦闘体制へと戻る。その様子を見てガルゼドールは何かに思い当たったようだ。


「あーーー…なるほど、薄々勘付いてたけど君がグレイド様が警戒してた一人のリヴァってことか。あのワニと君にどんな関係があるかは知らないが…いや、大体はわかったよ、なるほどね」


ガルゼドールは何か納得したようにそれだけ言うと、途端に静まり返り…そして独り言でも言うかのようにこう話し始めた。


「そうだね、君と僕は似たような存在なのかもしれないな………僕が生まれた地に氷を操る獣王が侵略しにきたことがあってね」


「聞いちゃいねえなの」


「僕の世界は暖かくて平凡なものだったけど、あの獣が来てから全ては変わった。全てが氷漬けになり、僕はあの獣におもちゃにされた。ーーそこに現れたのがグレイド様だった」


ガルゼドールは一呼吸置くと、静かに、だが確かに強く意志を込めてこれだけ言った。


「グレイド様は自身を魔龍と名乗る、他のみんなも彼をそう呼ぶ。だけど、僕はその呼び方は嫌いだ。あの日全てを凍らした氷帝を一撃で葬り、瀕死の僕に力を分け与えた。まさしく、神龍様なんだよ」


「……」


沈黙が辺りを支配し、冷気が静かに包み込む。その押し黙る雰囲気の中最初に発言したのは、ガルゼドールであった。


「このような立場でなければ、もしかしたら語り合える日もあったのかもね。ーーじゃあ、決着をつけようか」


リヴァとガルゼドールは同時に踏み込み、お互い苛烈な死闘を再開する。金切り音が響き渡り、それらも竜の精神を削ぐ。氷の剣と粘液による交差は止まることを知らない、どちらか一方の命が尽きるそのときまでは。互いに攻撃を受ける余裕などなく、破滅の弾丸がリヴァの髪先に触れ先っちょが腐り落ちる。


「そこだ…!」


連撃の合間に音すら掻き消すほどの魂を込めた暴力性が伴い、ガルゼドールから放たれし必殺の一撃が最高速度でリヴァへと迫る。回避はもう間に合わない、咄嗟に右腕を軌道に割り込ませて体の芯からその一撃を外す。


「ぎ、ぃいい!」


だが、代償は重い。リヴァの右腕がその破滅の粘液により血飛沫を上げながら弾け飛び、リヴァの顔は苦痛で歪む。その隙にガルゼドールは一歩、足を後ろへ下げて距離を開けようとした瞬間、リヴァは粘液による痛みに歯軋りしながらも前に出る。


「これで、どうなの!」


リヴァは竜化し再度氷を纏いし竜の渾身の一撃をお見舞いする。ガルゼドールも避けようとは試みたが右腕を捨てた捨て身の戦法の前には厳しくあと一歩のところで大打撃が直撃する。


「み、ぁぁ!?」


分厚い凍てつく爪先がガルゼドールの顔面を抉り、液体をまきちらしてのけ反らさせる。

頭部の外から内側へ、五指の刃に刻まれたも同然の傷、液体をぐちゃぐちゃに掻き混ぜるのに十分な破壊力から為る痛みだ。流石の厄災も顔を顰め、悲鳴を上げながら倒れ込む。


「コァァァァ!!」

「ちぃ…!」


ガルゼドールが倒れるのを確認したリヴァがすぐさま追撃を試みるが、それはメタルシー魚が阻止する。リヴァは突進してくるメタルシー魚と向き合い、それと真っ向に対峙する。


数トンの質量が、爆発的な突進力を伴って迫るのだ…

それは魚の打撃力とはもはや言えず、巨大な鉄塊が空から降ってくるに等しい質量弾だ。


「ガァァァァァ!なの!」


両足を踏ん張り、今の自分が放てる竜の力を最大限に解放する。

右腕は地に落ち、左腕しかないが、全身の筋肉が盛り上がる躍動感の前ならこれで十分だ。


巨大な質量弾は竜の姿であるリヴァをも押したが、地面に足をつけ踏ん張りなんとかそれを抑える。そしてメタルシー魚を完全に押さえつけると、自慢の怪力でメタルシー魚の首を捩じ伏せようとする。


「コァ!コァ!」


メタルシー魚も抵抗しようとするが時すでに遅し、リヴァがかの鋼鉄の魚の頭に噛み付くとワニが獲物を噛み砕くかのようにその鋼鉄を折ろうとする。


「ぁ、今なら」


しかしガルゼドールも瀕死ながら隙を見てメタルシー魚を怪力で捩じ伏せようとするリヴァに対してとどめの一撃を放とうとする。もう動けはしないが攻撃はできる、これでかの竜を倒すしか…


「そうはさせません…!」


しかし、ジョニーはその粘液の行動を許さない。己の出せる最大限の力でビルの一部を斬り捨て、そのビルの一部は瓦礫と名称を変えてガルゼドールに降り注ぐ。瀕死の粘液を瓦礫が埋め尽くし、一時的に行動不能とさせた。。


「ガァァァァァ!!!」


リヴァもそれと同時にメタルシー魚の頭蓋を噛み砕き、鉄の体に隠されていた肉と血が容赦なく道路にぶち撒かれる。そしてすぐさま人間形態へと戻ると…


「おのれ…!」


ガルゼドールも瓦礫を破壊しすぐさまリヴァに対して攻撃を再開しようとするが…ーーもう、遅すぎた。


「正直、アホみたいに強かったなの」


四つに分かれた巨大な氷の礫…と言うにはあまりにも大きすぎる巨大な氷がガルゼドールを囲み、それらがガルゼドールに避ける暇も与えず一気にぶち込まれる、氷はガルゼドールを貫き、そして巨大なバークアウトを起こし爆発した。


これにて、ガルゼドール攻略戦、終結である。


   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「決着と行こうじゃないかぁ…!」


ハクジャが再び大地を操り始める。しかし………首を二本焼き切る前と比べると、あまりにもその動きは鈍くなっていた。大地がまたも押し寄せるが、それらを回避するにはとても容易となっていたのだ。


「確実に弱っている証拠ね」


「だが中央の首は焼き切ってもダメか…それならば」


ルビーとノアはノアが空中に生み出した氷を足場としながら動きが鈍りつつあるハクジャと戦闘を繰り広げる。確かに動きは鈍くなったが、ハクジャが不死身なのもありこのままでは戦いは永遠に終わらないだろう。ならば…


「アルマ、ルビー。少し時間稼ぎを頼む…あいつを倒せる方法を思いついた」


「了解っす!」

「わかったわ」


アルマは捲りあがり襲いかかる土と岩を二つの盾で防ぎながら、ルビーはハクジャに対し光の大量の魔弾を飛ばし牽制しながらノアにそう返す。ハクジャも光魔法に対し土の壁である程度は防いでいくが、土の壁も硬度が弱まっているのか光の小球は岩ごと全てを薙ぎ倒していく。


「こっちは健在だよぉ…!」


「む…!」

「これだけは当たらない方がいいわね」


ハクジャは中央の首から毒々しい色合いをした猛毒の吐息を放つ。猛毒の吐息の威力と効果は健在、つまり当たれば彼らの命はない。アルマとルビーは真正面から迫るその吐息を二手に分かれて回避する。


「ほらこんなのどうかなぁ?」


ハクジャは己の足元を異常なほどにまで隆起させ突進する、狙いはアルマだ。凄まじい風速でアルマに迫り、その巨躯による猛攻で一気に畳み掛けようとする。あらゆる建造物を蹂躙し尽くしその勢いのまま目の前のアルマジロも…


「よいしょおおおおおお!」

「なに!?」


小さき存在であるアルマが二つの盾で大きな存在であるハクジャの猛攻を止め、ハクジャの表情は驚愕に変わる。しかしハクジャもこのまま黙っているわけにはいかない、アルマに対して噛みつこうと…


「私のことも忘れないでほしいわ」

「…!」


横から割り込んできたルビーが光の薙刀でハクジャの首を斬り落とし、ハクジャの中央の首が胴体から離れ地に落ちる。もっとも、すぐに再生するとは言えハクジャの攻撃はそれだけでキャンセルされてしまった。


「おのれぇ…!」


ハクジャの首が再生し、ハクジャの顔が怒りで染まる。地操の加護も上手く機能しておらず、このままではハクジャ側にとって不利的状況もいいところである。


ハクジャが今度はルビーに対して狙いを定めようとしたその時、突然光の剣がハクジャの胴体に突き刺さった。猛毒の黒い血がそこから漏れ地面が腐食していく。


「その巨体は飾りか?とっととかかってこい」


「…!上等だよぉ…!」


ハクジャはノアの挑発に乗り、その巨体で一切合切を破壊し尽くしながら迫る。

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『グァ』

『ハクジャ、あなたは窮地に陥ると冷静さを失ってしまう弱点があります。そこは気をつけるべきですな』


『あいあい、了解だよぉ』

『了解だねぇ』

『あーい』


ハクジャのもう一つの弱点、それは既にグレイドとバーディアに指摘されていた。それをここで思い出していれば、もしかしたら勝敗は変わっていたのかもしれない。

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「クソ、ちょこまかと…!」


ハクジャは我を忘れてアルマとルビーを眼中から外し、執拗にノアを追いかけ回す。ドタバタと地面が踏み荒らされ猛毒の吐息がハクジャの口から繰り出されるが、ノアはうまくそれをも回避する。


「く、今度はどこへ…!?」


氷のカウンターを土の壁で防いでいるとノアの姿がどこかに消え去ってしまった、しかしそう遠くはないはず、熱探知を使い…


「遠い昔にも、ある英雄が

三本の首を持つ不死身の怪物を退治したという逸話がある」


「!?」


「そいつは最後に、怪物の三本目の首を岩の下敷きにして倒したのだと…

───お前の倒し方は、ずっと前から知れてたのさ」



どこからかノアの声が聞こえ、ハクジャは驚く…否、それどころではない。ハクジャを押し潰そうとビルの一部が弾け飛び、大量の瓦礫が頭上から迫っていたのだから。不死の怪物の動きを抑えようと、大量の岩がハクジャに狙いを定めていた。


「ぬおおおお…!」


もちろんハクジャも地操の加護は健在、その力で大量の瓦礫を抑えようと…


「いい加減、もうおねんねしなさい」


「ぐぁ…!?」


ハクジャはほとんど力の使えなくなった地操の加護を扱うので精一杯、真正面にいたルビーの存在すら気づけなかった。ルビーは光の薙刀で血眼になりながら瓦礫を扱うハクジャの首を一太刀、斬り捨ててしまうとその力は均衡を取れなくなり遂に崩壊。


ハクジャの首は弾け飛び、その結果干渉を受けなくなった瓦礫がハクジャの体に覆い被さりハクジャを生き埋めにしてしまった。轟音が鳴り響き、粉塵は舞う。


これにて、ハクジャは三人の勇者を前に遂に敗れたのであった。




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