エリア五 7話『三つ首の大蛇と鬼神の粘液』
「さあ行くよぉ」
「手加減はしてあげようかな」
「でもあんまり期待しないでねぇ」
「むむ!?」
ハクジャはそう言いながら尻尾で地面を叩き、大地を操り始める。足元全てが敵となり全員驚きを隠せないが、それでも立ち止まるわけにはいかない。アルマにノア、ルビーはとにかく立ち止まることなく動き回る選択肢を取る。なにせ…
「地割れに落ちたら飛行手段も何もない俺たちじゃ一巻の終わりだ、全力で逃げろ!」
「わかってるっす!でもノアさんって飛べるって話じゃ?」
「どうやらこの世界に来てから一部能力が制限されてるようでな…!」
大地全てが揺れることも何よりの脅威だが、一番の脅威は地割れだろう。彼らには飛行手段がなく、おまけに空中に足場を作ることもできない。そういう意味ではハクジャは彼らにとって何よりの天敵なのであった。
「天敵といってもぉ」
「僕たちが頂点捕食者だから」
「仕方ないんだけどねぇ」
ハクジャは三方向に飛んでいく猛毒の吐息で自分との距離を詰めようとする彼らの動きを牽制し、岩柱をどんどん向かわせ徹底的に近づけないようにする。
時々ルビーの光の魔法やノアにより投擲された光の剣が飛んでくるも、それらは地面を隆起させ全て即席の防壁で防いでいく。
近づけないならば遠距離から攻撃をぶつけるしかないのだが、大自然の防壁の前では全てが防がれてしまうのだ。
「そりゃ!っす」
「このままじゃジリ貧だな…!」
アルマは双盾で迫りゆく岩柱を防ぎ、ノアも冷や汗をかきながら剣で辺りを覆い尽くす粉塵を切り裂きこの白き三つ首の大蛇への対抗策を考える。
遠距離攻撃が防がれるのならばどうにかしてあの白蛇相手に近接戦を持ち込むしかないのだが…地操の加護と毒の吐息による攻撃が激しく、近づくことすら到底無茶である。
「どうする、ニンゲン?」
「どうするもなにも…相手から隙を晒してくるまで耐えるしかない」
ルビーも光の薙刀で襲いかかる電柱を斬り捨てながらノアに意見を伺うが、流石のノアもいい作戦が思いつかない様子。
当然だ、相手の強さに対してこちらは手札も何もかもが不足しているのだから。ノアとルビーは足元を掬う不意打ちの岩柱を上に跳んで避けるが、それもハクジャにとっては想定済み。
「おやぁ、引っかかってくれたねぇ」
「でもその状態で」
「これは避けれないんじゃないかなぁ」
「…マジか」
「驚いたわね…」
民家すらも地から離れ、意思でも持ったかのように自分たちに迫ってくるのを見てノアやルビーも驚きを隠せない…しかし、大振りなその攻撃ならなんとか避けれると思ったのも束の間。
足場が崩落して大穴が開きうまく着地すらできそうにもない。地割れは今か今かと獲物が飛び込むのを待ち、瓦礫はその餌を横取りしようと勇者たちに迫る。
____大地の凶刃に飲み込まれるか、瓦礫に全てを消されるか。
死の二択を叩きつけられたノアとルビーはその二択を選ぶ間もなく悪夢のどん底へと…
「うりゃーーー!!」
突如割り込んできたアルマが二人をドンと突き飛ばし、彼らの体は前に大きく突き出され大穴と瓦礫の二つの脅威から抜け出す。それとすぐ同時のこと、怒り狂う瓦礫がアルマに直撃し、愚かなアルマジロはそのまま瓦礫の餌食と…
「「まだまだいくよぉ!」」
「あとで文句言わないでねぇ」
足元が隆起し、土壁が地面から競り上がる威力と速度を利用してバネじかけのように射出されたハクジャは、瓦礫に飲み込まれたアルマ目掛けて突進する。勢いは加速し、その威力は質量に比例する。
軽くトンはあるであろうその質量攻撃は、瓦礫すら次々吹き飛ばしアルマの肉体も捉え、渾身の一撃をお見舞いした。威力は申し分なく、こんなものまともに喰らって仕舞えば気絶どころか即死は間違いない。
その末路に至らず生存を許されたのはアルマが有するのがあり得ないくらい耐久面で恵まれているから、であろうか。
「う…ぁ」
ハクジャの二段階にも渡る悪夢の猛攻を防御すらできずまともに喰らったアルマの体は力を失ったかのように地に落ちていき、やってきた餌にこのチャンスを逃さまいと大地は喝采し歓喜しながら口を開ける。
アルマが力を取り戻した頃にはもう遅く、既に彼は大地の餌食に…
「アルマ、無事かしら!?」
彼が地割れにゆっくりと飲み込まれる寸前のところでルビーが間に合い、アルマの首根っこを掴み前に跳ぶことで獲物を待ち構えていた落とし穴の思惑が外れ、なんとか脅威からひとまず抜け出すことに成功する。
「へぇ、いい連携プレーじゃん」
「でもそれだけだよねぇ」
「それだけじゃないぞ」
「おや」
アルマの首根っこを掴みながら一生懸命岩柱と瓦礫を避けるルビーに追撃を仕掛けようとしたハクジャだったが、突如背後から聞こえた青年の声に意識を削がれる。
それに対応しようとした頃にはもう遅く、光の剣が一閃、ハクジャの左の首が宙を舞う。白蛇の首がついに一つ落とされ、傷口から大量の鮮血が飛び出る。
かつて読んだことのあるギリシャ神話ではヒュドラはその血にも猛毒を含んでいる…と記載されていたことを思い出したノアは、光の剣で自分にも飛び散るその大量の血を振り払う。
案の定このハクジャもそうだったらしく、血を浴びた剣は赤く染まるどころか毒々しい紫の色となり朽ち始めたため、身の危険を感じたノアはすぐに剣を捨て新しい剣を生成する。
「だが、一つ首が飛んだ…!これで前よりかは戦いやすくなったはずだ」
「と思いたいよねぇ」
「…そう来たか」
これで首は残り2本だと思ったのも束の間、切り落としたはずの首の断面が蠢き、そこから収まっているはずのない肉が溢れ首の土台を作り、あっという間に元通り。
ハクジャはそのノアの反応を愉しみながら何事もなかったかのように声を上げて再び相対。三つ首の大蛇、ノーダメージである。ノアもこれは予想しておらずひとまず逃げの一手を取ろうとするが少しばかり行動するのが遅すぎた。
「感心してる暇はないんじゃない?」
「このまま噛まれてみたらどう?」
「チィ‥!」
蛇はその二つの首でノアに噛みつこうと迫り、ノアは一発目の噛みつきを光の剣で受け流すが二発目の噛みつきに足元を救われたことにより体制を崩し、再生した三つ目の首から放たれる猛毒の吐息がノアの命を蝕み…
「うおおおおおおお!!!!」
「おっと」
アルマが盾を構えながらハクジャに突進してきたためその一連の動きは中止。すぐさま大地を隆起させ位置をずらすことで、難なくその侮ることはできない威力を誇る特攻を避ける。
当たればかなりの威力を誇るその体当たり、だが当たらなければ藻屑に等しい…まあ、当たったところでどうせ再生するから意味はないのだが。
「中々やるじゃん」
「中々ね」
「中々程度だけどね」
ハクジャは感嘆の声かつ嘲笑の声を上げながらその巨体に似合わぬ猛スピードで迫り、隙だらけのアルマにカウンターとして突進した後一度距離を取ろうとした。
ハクジャを巨体だからと甘く見ることなかれ、並大抵の者にかの大蛇の猛突進を避けることは不可能…避けて反撃などと思わないことだ。
「趣向を変えてこんなのはどう?白蛇さん」
「「「!?」」」
ルビーがアルマを守るため光魔法、ではなく炎の魔法を扱う。サブウェポンであり元の世界ではほとんど使うことのない魔法であるが…
応用すれば、炎の防壁として用いることも可能なのだ。不可視の炎の防壁はハクジャが迫る直前で文字通り火を吹き、ハクジャの体を丸焦げにする。
今まで小馬鹿にするかのような態度しか見せなかったハクジャ…だが彼は今回は驚愕の表情を浮かべた後、火に触れるや否やすぐさま地面を隆起しバネのようにすることで後ろに避けた。
「…?」
「ノアさん、どうしたっすか?」
追撃を仕掛けたいところだが岩柱や地割れ、崩落、隆起に地震の恐怖は続いており中々近づけないアルマはそれらを対処しながらも何か思考に耽るノアに対して疑問を抱きそう問いかける。
先程まで氷漬けだの大穴に突き飛き落とすだのといった無力化する方向でこの大蛇の討伐方法を考えていたのだったが……ハクジャが炎の防壁を目の当たりにした際の反応を見て少々違和感を覚えた。
再生するならば結局避ける必要など微塵もないというのに、ハクジャはあの炎の防壁を前にした際慌てて避けたように感じた…以前までの余裕さを全く見せずに、だ。もちろん、結局あの炎もハクジャにはノーダメージではあったのだが…
「待てよ」
ハクジャの血には猛毒が含まれているのも、再生するのもギリシャ神話のヒュドラと全く同じ。ならば、ハクジャの攻略方法はギリシャ神話のヒュドラと全く同一のものではないのか。
アルマもルビーもギリシャ神話については全く知らないゆえそのタネには気づけなかったのだが、唯一人間でありギリシャ神話の伝承が残っているノアはこの突破方法に気づける。
ギリシャ神話でヒュドラはどのように倒されたかというと……
ヘラクレスは甥のイオラオスと協力し、頭を切り落とした後に火で焼き、再生を防いだのであった。
「ハクジャ、お前の弱点がわかった…炎だろう。炎で断面を焼き切れば再生もしまい」
「――あーあ、気づかれちゃったのかな?」
「気づかれちゃったねぇ」
「でもよくわかったねぇ」
ノアはハクジャと向き合い、ハクジャの動揺を誘うためカマをかけてみたがどうやら当たり…ハクジャの弱点は炎である様子。だが依然としてハクジャはその笑みを崩さない、理由は単純だ。
「で?それがわかったところで」
「僕の首を焼き切るのは難しいんじゃないかなあ?炎も断面じゃないとノーダメージだよぉ?」
「そもそも近づけるかなぁ?」
弱点がわかっただけでこの怪物を突破できると思わないでほしいものだ。なぜ厄災と呼ばれているのか、それは手の施しようがないくらいに強いから。
大蛇の巨影は尚も堂々と君臨し、相対する勇者全員に冷や汗を掻かせる。ハクジャ側も弱点を悟られたのならば手加減は無用、つまり。
――ここからが、本番なのだ。
△▼△▼△▼△
「そぅら、まず一発…受けてみなよ」
ガルゼドールはそう言い放つと自分の身体をくねらし粘液で作られた破壊の奔流をお見舞いする。その死の斜線は一直線にリヴァの方へと迫り、巻き上がる石材たちが圧倒的な威力に呑まれて砂ほどまで噛み砕かれるのが見える。
「ちぃ…!なの」
一撃でも掠りさえしたら触れた箇所が消し飛ぶであろうことを察知したリヴァは、歯を食いしばりながらその破壊の途上を横に避ける。
実際、全てを蝕む酸が地面を焼き尽くす音が耳に刻まれる。いかなるものに原型を留めることすら許さない酸だが当たらなければ問題ない。反撃としてリヴァもガルゼドールの脳天に氷の礫をぶつけてやろうと…
「お嬢様、失礼します!!」
「む!?」
ガルゼドールに反撃しようとしたリヴァの首根っこをシャドウロイドのジョニーが掴み、そのまま軽やかな跳躍で一気に横へと移動する。リヴァはジョニーのその行動に理解できず困惑するが、まもなくその行動の意味を理解することとなる。
なんとガルゼドールの射線の着弾地点からさらに弾丸のような勢いで酸が放射され、リヴァの耳の真横を抜けていったのだった。
本来背後から高速で吐き出される猛毒と強酸によるその破壊は万人に避けることを許さず万物をも溶かす、はずだった。間違いなくジョニーがいなければリヴァの命はそこで尽きていただろう。
「おや…これを対応できたのなんてほとんどいなかったんだけどね、いい従者を持ったんじゃない?ーーまあ、これで格の違いってのがわかったかな」
「な、なの…!」
ガルゼドールは自分に氷という打点のあるリヴァ相手でも余裕そうに体をくねらしながら、いけしゃあしゃあとそう宣言する。
まさしくその姿は厄災を冠する者たちの中でも規格外の危険度であることを示唆していたのだった。緊張感が漂う中、零れ落ちる冷や汗が凍り落ちて地面に落ち、その粘液の執行人はこれだけ告げた。
「さあ、ここからはペースアップだ。ーー君はどこまで着いてこれるかな?」
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四方八方から破壊の液体が押し寄せ、異臭を放ちながらリヴァとジョニーを洗浄しようと迫る。当たれば痛いですますことはできないその激流に耐えれる者はゼロ。
リヴァはまるで舞のようにそれらの迫撃を回避するが…時々本気の一撃として放たれる神速の溶解液は人ならざる者でも回避することは容易ではない。
「ジョニー、そっち!次こっちなの!」
「はい!」
「優秀なシャドウロイドだね…どこから拾ってきたんだい?」
舐められがちなシャドウロイドであるが、侮ってはいけない。正規の使い方であれば彼は雑兵としては規格外な力を発揮するのだから。
リヴァはジョニーに指示し瞬間移動を乱用することで、稀に襲いかかる神速の一撃を禁断の闇の力を用いながらなんとか回避する。
竜と影に当たらず不発した死の弾丸たちは紅の街並みを触れた端から崩壊させ、破壊が景色を蹂躙していくのだ。轟音と粉塵を撒き散らし、降り注ぐ液体は決して安全なものではなく数多の命を脅かす。
「全部凍らせてやるなの…!」
強力な冷気を纏うことで襲いかかるマイクロほどの大きさ、つまり肉眼では捉えられない不可視の溶解液を氷漬けにして無効化する。
リヴァほどの氷使いとなればマイクロほどの大きさならジョニーと自身に冷気を纏わせれば即座に冷却し無力化することが可能だ。
不可視の即死に、四方八方から迫る即死に……このスライムを相手する上で油断など何一つしてはならない、それは必ず命取りになるから。
飛ばされた殺意の弾丸が世界を蝕み粉塵を撒き散らしながら破壊をお見舞いする。なんとか後方へと跳びその脅威から免れたリヴァも反撃に数多の氷を飛ばすが、ガルゼドールは粘液の体を器用に左右とくねらせ、それらの氷塊を全て避けてみせる。
「確かに氷は有効打だよ。でも、それだけで勝てると自惚れないでほしいよね」
しかし、大口を叩いているとはいえガルゼドールも全力を出せない様子。地面に液体を染み込ませ大地から奇襲を仕掛ける、分裂して襲いかかるなどなど…
ガルゼドールの本来の手札は無限にあるはずのだが、それらを微塵も出せていないようだ。それらの理由には…
「人の過去話そうとするなよな」
ガルゼドールは忌々しそうにそう言いながら破滅の粘液を発射し、リヴァも氷で応戦する。しかし、一枚上手なのはそれでもガルゼドールである。粘液は氷で相殺することが可能であるがそれでも手数は相手の方が上。
次から次へと迫るまるで雨を思わせるかのような砲弾に徐々にジリジリと押されていくリヴァに対し、ガルゼドールは時々必殺の一撃を放つ。この必殺の一撃だけは凍らせることも不可能、なので回避に徹するしかないのだが…
他の溶解液を対処しながらとなるとどうしても虚を突かれてしまう。リヴァにその必殺の一撃を対処する余裕などなく、嫉妬の竜はその破壊の液体に飲まれ…
「こちらですお嬢様!」
「助かるなの!」
「ふん」
ここで本領を発揮するのがシャドウロイドである。ジョニーは対応が遅れたリヴァの前に割って入り瞬間移動で必殺の一撃を闇の力を用いて回避する。闇の力は本来タブーとされている、敵陣営の、『ホシクライ』の力を使うなんて禁断もいいところである。
しかしそれらの力を解放しなければ、相性不利のハクジャにも善戦したリヴァですら勝負にならないのがこの執行人の恐ろしいところだ。破滅の不発弾は地形にも甚大な被害を齎し芯を切られた電柱は瞬く間に倒壊…すら許されることなく腐食して灰と化す。
「ジョニー、そのまま瞬間移動しまくれなの!とりあえず今はそのままキープ!」
「わかりました、何か策があるのですね!?」
背後でリヴァの肩に手を添えているジョニーにとにかく瞬間移動で回避に専念するように伝え、リヴァは大量の氷の礫でガルゼドールに応戦しながらこの短期間で考えた策を実行しようとする。
氷と粘液からなる華麗なまるで交響曲かのようなその死闘にケリをつけようとリヴァは一気に勝負を決めるつもりだ。
「このままじゃ埒が明かないな、こっちから…!」
「それは好都合なの!ジョニー、一気にぶっ飛べなの!」
「お任せあれです!」
ガルゼドールはこの街どころかガンダーラ全体で見てもかなりの強者である。しかし彼女でもリヴァを長いこと相手していたらいつ戦況が傾くかわからない…ガルゼドールは焦れて一気に勝負をつけようとするがその気持ちが逆に仇となった。
リヴァはジョニーの瞬間移動を用いてガルゼドールとの間合いを一気に詰め、騒ぎに駆けつけた雑兵がなすすべなく凍らされるほどの極寒を纏いながら突撃する。
ガルゼドールはその不意の突撃に驚き一瞬反応が遅れてしまう、だがすぐに切り替え必殺の一撃で応戦しようと…
「甘いなの!そら、一発喰らってみろなの!」
「っ!!!」
ガルゼドールが必殺の一撃を放つより先にリヴァの準備が完了、時には可憐だが、時には恐ろしく勇ましいリヴァの本来の姿である竜へと戻り、氷を纏った竜拳でガルゼドールに渾身の一撃を叩き込む。
ガルゼドールには物理攻撃は一切効かない…どころか逆に攻撃してきた相手を腐り落とす。しかし氷を纏った場合は別だ、その場合は打撃でもなんでも彼女には効く。
その超火力による衝撃で発生した風圧が辺りに散らばる瓦礫を飛ばし、ガルゼドールは一気に等速直線運動をして奥に吹き飛ばされた。ビルがその衝撃で轟音を響き渡らせながら崩れ落ち、ガルゼドールはその下敷きとなった。
これにて、ガルゼドール攻略戦完結…
「あー、いててて………」
「お嬢様…!」
「まあ、そう一筋縄では行かねえなの…」
ガルゼドールを埋めたはずの瓦礫が一瞬で弾け飛び、腐食され灰となりながら地面に散らばる。そこから現れたのはもちろん粘液の執行人ことガルゼドールである。だが流石に彼女も無傷とまでは行かなかったらしく、かなりダメージを負っているようだ。
リヴァとジョニーは再び臨戦体制となるが…場の空気が一気に変わる。夥しい殺気がこの戦場に満ち、もちろんそれを漂わせているのはガルゼドール。そしてガルゼドールはまたもや粘液を作り出す。だが、それは今までとは少々違うようで…
「マ、マジかなの…!」
「お嬢様、これは…」
ガルゼドールは自身の真上に大量の粘液を生成していた…そこには、一つの津波すら起こせそうなほどの量が。
ガルゼドールはそれを真上に保ちながら頭上を見上げ、楽しげに哄笑を上げながら跳んだ。すぐ横手の建物の屋根に足をかけ、そのまま隣の建物の上階へ飛び乗り、さらにさらに高い建物に上がると、豆粒以下にしか見えないほど離れた高さの建物の頂上へ。
「さあ、避けれるもんなら避けてみなぁ!!」
ガルゼドールは高台から豪快にその巨大な殺意の液体を操って振り回し、頭上を旋回させ大量の溶解液が撒き散らされる。遠い遠い、遥か彼方のリヴァたちにも届く勢いで、だ。
そしてそれが何を意味するかというと…
「ーーお嬢様ぁ!」
「逃げろなのぉぉぉ!!!」
降り注ぐ死の雨が破壊となって都市を蹂躙し、絨毯爆撃が逃げ出した二人の背中を目掛けて追いすがってきた。




