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エリア五 6話『嵐の前触れ』

「改めて…俺はノア。よろしくな」


「ニンゲンが話しかけてこないで。不愉快よ」


「え?」


「ル"ビー"さん"!!!」


一時は四ノ厄災の一人、ガルゼドールが来てどうなることかと思った彼らだったが、なんとかシャドウロイドのジョニーのおかげで安全に民家へと避難できた。本当はジョニーも同席してほしかったのだが、彼はもう少しこの街の探索を続け情報収集をするとのこと。そして彼曰くまだ数こそ少ないが、この街にはロストナイトも雑兵としているようであり情報もないまま迂闊に動くのは危険とのこと。なのでひとまずこの街の全容が少しでも鮮明になるのを待ってから行動開始というわけだ。


さて、いきなり爆弾発言をかましたルビーにキレるアルマであるが…まあ、ひとまずそこは置いておくとしよう。とりあえず…


「僕はアルマで、こっちのウサギの女の子はルビーさんっす。ノアさん、よろしくっす!」


「よろしくな」


こうして、晴れてノアがアルマたちの仲間に加わったというわけだ。ルビーのノアに対しての嫌悪感は深刻ではあるが…後々、なんとかなると信じてひとまずやるべきことをしよう。それは…


「料理するっす、美味しいご飯を食べるっすよ!」


「やっとね!!!」


「おお」


まずは美味しいごはんをたらふく食べて、リラックスと行こうではないか。


—————————————————————-

ロストナイトとの戦いもあり少々遅れてしまったが、まあよい。"第一回アルマの手料理クッキング"、開催である。


「第一回ってことはこれシリーズ化するのか??」


「好評だったらやるっす」


「ごはん楽しみねー!」


アルマたちは比較的安全な家に入り込み、そしてフライパンなどの調理器具があるのを確認。あとはガスも使えるが、なぜガスが使えるのだろうか。ちなみに蛇口を捻っても水は出てこなかった。ますます何故ガスだけ使えるのか疑問に思ってきたところだが、まあ細かいことを考えるのはやめにしよう。


「ルビーさん、食材の方はどうっすか」


「探してみたけどこれくらいしかなかったわ〜もうちょっと時間があればよかったんだけど」


「この街で食材調達できる時点でかなりすごいけどね」


ルビーが軽く調達してきた食材は主に野菜が多め。キャベツ2枚にじゃがいも、にんじん、たまねぎ、バターにベーコンが3枚ほど。そして醤油とコンソメ、塩、砂糖。あと言うまでもないが、水もある。


「んー、鍋は…あ、あったあった。これならいけるっすね」


アルマは棚を漁り、鍋を取り出す。この食材ならそうだな、無難にこんなのはいかがだろうか。アルマは鍋をコンロに置き、座って待っている二人にこう問いかける。


「野菜スープなんてどうっすか?一見地味っすけど…味は保証するっす」


「それでいいわよ〜」

「同じく」


二人はアルマの意見に賛同し、そう返事する。ルビーはお腹ぺこぺこでご飯が食べれるとわかってから機嫌がいいし、ノアもノアでかなり腹が空いているようだ。これは、気合いを入れて作らなければ。


アルマは命よりも大事な盾をこのときばかりは外し、大事に置いておく。事前にタマネギをボウルの中の水に浸しておき、そして包丁を手に取り料理開始である。


「————-かなり包丁さばきがいいな」


「そうね…アルマは意外と剣を使うのも得意だったりするのかしら?」


「そんなことないっすよーっと」


アルマはキャベツを包丁で2cmごとに拍子木切りにしていく。まな板と包丁が摩擦する音が次々と鳴り、その音は聞いてて心地よい。あっという間にキャベツを全て切り終えたアルマは次にベーコンを2cmごとに切っていく。2cmごとに切れば最も食べやすいサイズとなるので、それを意識していこう。


ベーコンはいわば洋風料理の鰹節。ベーコンそのものも美味しいが、ベーコンをスープの中に加えると出汁が出て全体的にも美味しくなるからおすすめなのだ。さて、ベーコンも切り終わったのでこいつも別皿に移しておく。


玉ねぎやニンジン、じゃがいもなども同様に準備を終わらせて、あとは…


「さて、あとはもう鍋にぶち込んで完成っすね」


「いよいよね…!!!」


アルマは鍋にバターを入れて熱し、ベーコン、玉ねぎ、にんじんを加えて炒め、最後に残りの野菜を加えて玉ねぎがしんなりするまで中火で炒める。ルビーはついにこの世界に来てから初の暖かいごはんを食べれることに歓喜し、ノアはアルマの包丁捌きに見惚れていたのだが。


「包丁と剣は使い勝手は違うとはいえ、これは流石に…いや、気のせいか」


さて、そんなこんなでアルマの料理も完成したようだ。何やら誇らしげな顔をしている、それなりに自信作なのだろう。


「じゃーん!質素ながらも栄養満点美味しさ満点の野菜スープっす!熱いので気をつけながら召し上がれ」


具沢山の野菜スープがノアとルビーの二人に渡され、アルマ自身も席についた。それでは「いただきます」、である。


「あら〜これは中々…!」


「塩加減は完璧、そして…ベーコンの出汁もなかなかいいな」


どうやらルビーやノアも満足いただけたようだ。ちなみにアルマは猫舌なのでフーフーしながら頑張って食べているのだが…うむ、やはりうまい。さて、なかなかな出来ごたえだが…残念ながら、これからの話もしなくてはならない。


「スープをお楽しみのところ悪いっすけど…少しいいっすか」


「あら〜何かしら」


「む」


アルマは食事を楽しむルビーとノアに対して真剣な眼差しでこう告げた。


「みんなで情報交換をしたいっす。———大事なことも話すつもりっすので」






「———なるほど、つまり今はガンダーラ軍本部とやらへ乗り込むために五つのエリアの攻略と洗脳された者たちの解放をしていて、アルマはこの『死の街』を担当してるってわけか」


「そうっす。だから、ノアさんとルビーさんの力が借りたいわけっす」


ノアやルビーに現在の状況を伝えたアルマは、ノアからの確認にそう肯定する。さて、どうやらこのノアもルビーと同じく不意打ちされ、気づいたら洗脳されていたらしい。幸いどうやら洗脳されてそんなに時間が経ってないところで発見できたため、量産機兵たちに完全に連行される前に助け出すことができたが。


アルマやルビー、そして自分自身もポータルに吸い込まれてこの世界へとやってきた。ガンダーラ軍と自分に最も身近であった問題、"怪異"が何か繋がりがある線は…しかし、怪異はもう完全に解決したはず。となると、それらは無関係と捉えるのが妥当か…?


神妙な顔をして考え事をするノアを横目に、スプーンで野菜スープを掬っていたルビーがこう話す。


「でも最初に会ったのが友達のアルマでよかったわ〜もしそこのニンゲンだったら丸焼きにしてたもの」


「物騒すぎる…まあでも、二人は元々知り合いだったんだな」


「そうなんすよ〜昔ルビーさんの世界にアニキやリヴァさんと飛ばされたことがあって、そのとき危機的状況だったところを助けてもらったんすよ。そして元の世界に返してもらったっす」


なるほど、初対面の異世界の人間同士のはずなのに何故か仲がいいとは思ってたが…そういう事情があったのか。


む、待てよ。


「なぁ、アルマ…もしかして、君も人肉を食べる主義なのか?」


「ちげーーーっす!!!ルビーさんと一緒にしないでほしいっす」


「あら、アルマも食べてみれば気に入ると思うのだけど」


あらぬ誤解を受けて激怒するアルマと、そんなアルマに対して人肉料理を推奨するルビー。まあ仲はいいとはいっても、そこで満場一致されてたらガンダーラ軍だけでなくクリフサイドにも気をつけなければならないことになっていたので、助かったとノアはホッと息をつく。

さて…話がずれたので戻そう。


「でもルビーの能力でそれぞれの世界へ帰れるのにそれを使わないってことは……」


「僕たちの世界だとアニキ…ディノスの兄貴が行方不明、リヴァさんはこの街のどこかにいるから合流できると思うっすけど…ルビーさんたちの世界だとアリスが消息不明。帰るわけにもいかないんすよ」


「…そうだろうな」


「それに、このまま帰っても何の問題解決にならないわ。またいつ、このような事態が起こるかわからないんだもの」


その通りである。それぞれの元の世界へ帰ったとしてもそれは問題を先延ばしにするだけである。メドラやディオスも…世界の管理が忙しすぎてこれないみたいだし。


「ルビーの能力でそれぞれの世界から強い者を連れてくる、というのはできないのか?」


そう、ルビーは世界と世界を繋げる能力がある。それならば、元の世界から様々な強者が連れてこれそうなものだが…


「甘いわ、ニンゲン………なぜそれをしないかというと、一つ目は元の世界の防衛。全勢力を持ってきた結果帰る頃には王国は既に焼け野原…とか目も当てられないわ。二つ目は…」


ルビーは一度紅茶の入ったカップを手にし、それを唇につけ飲み、そしてカップを置いて続きを話す。


「他のエリアはまだマシだとは思うけれど……この街はおそらく単純な力でどうにかなるものじゃない…———明らかに、異質すぎる」


この街の情報が全く出てこない。それはつまり…この街から無事に帰ってこれた者はほぼいないことを示しているのではなかろうか。あまりにもこの街の戦力は強大すぎるということは、薄々全員わかっていた。


おそらく下手に強い者を連れてくるよりも、こうやって三人という少数で行動した方が動きやすいだろう。それに敵の戦力も把握できていないのに、"切り札"を使うのは間抜けもいいところである。


「…状況はかなり深刻みたいだな。わかった、みんなで協力しよう。そしたらできないこともできるようになるはずだ。実は俺たちの世界でもシエルにアイリス、あと大丈夫とは思うがルイズがこの世界に飛ばされてきて、そして行方不明でな…」


ノア、ルビー、アルマは手を合わせごちそうさまでしたと呟く。自分の血肉となってくれる食材たちに感謝を表すまでが大事な料理の"一環"である。その感謝の気持ちは決して忘れてはならない。ノアは席を立ち、ルビーは杖を持ち、アルマは盾を再び装備する。


「それじゃあ、休憩も済んだ。アルマ、ルビー、行こうか」


「ちょっと、何故ニンゲンごときが勝手に仕切ってるのかしら…?首を刎ねても文句は言わないでちょうだい」


「ルビーさん、仲良くっす!!!」


思わぬところで反撃を喰らい困惑するノア、アルマがいなければ間違いなくニンゲンなんかと行動していないルビー、そんな彼らをなんとか引き留めるアルマ。

一見奇妙な三人組であるが、実は……


この三人こそが、超難攻不落のエリア5『死の街』を攻略する上で他の誰よりも最適性であり、そしていずれ闇の世界の歴史にも名を残す三人の勇者なのであった。

挿絵(By みてみん)

__________________________________________________


「見える範囲だと敵は一体だけ……そんなことはないな。おそらく他にもまだいそうだ」


「ころころ〜」


「基本的にアレらは集団行動してるし…まあ一体だけというのはありえないわね」


挿絵(By みてみん)


ノア、ルビー、アルマの三人がこの街の攻略を始め1時間が経過。そして彼らは今、物陰から敵の様子を伺っている。敵はモノ・セラノイド一体だけだが…そんなことはない。おそらく、飛び出したら隠れてるのがうじゃうじゃ出てくることであろう。


しかし回り道をしようにも…この道が最短ルートであり、そして回り道をしたところでその道が安全とも限らない。ならば、ここは…


「強行突破だ!!」

「突っ込むっすー!!」


ノアとアルマは敵陣へと突っ込んだ。考える時間も惜しい、ここはまず殲滅を図るとしよう。


「遅い」


「ジ…!?」


まずモノ・セラノイドをノアが光の剣で突き刺す。この一時間でノアもだいぶコツを掴んだらしく、光の剣はモノ・セラノイドの回路の集結部に深く突き刺さり、そして活動を停止する…だが、モノ・セラノイドもタダでは終わらない。


近くの仲間たちに信号を送り、その不届き者たちを殺すように発信する。そしてそれは、仲間たちへとすぐに伝わった。


「ウゴゴゴゴ!」

「ギガガガ」

「シンニュウシャヲホソク!」


大量の量産機兵…否、機械だけでなくタカのような生命体や大きな銅のアリなどがノアとアルマの命を奪おうと一直線に襲いかかる。


まあ、そうだろうな。

ノアとアルマは後方へと向かって合図を送り、そして物陰から光がキラリと顔を覗かせ、大量の光球が雑兵たちへと襲いかかる。


「そのくらいお見通しよ」


この光魔法の行使者はもちろん、サンライトプリズム王国の女王…ルビーである。光の球は次々と雑兵たちに直撃し、オルタナリースから水が漏れ、侵晶衛星やタカは撃ち落とされ、銅のアリは前足を大きく欠損する。


「どりゃりゃ!!」

「これはどうだ!」


「ジ…ジジ…」

「電波障害発生…」


アルマが突進で次々と量産機兵を粉砕していき、ノアが光の剣でどんどん異世界の魔物たちを切り裂いていく。あっという間に辺りは肉片と残骸だらけとなる。


「シトメル…!」

「シカリ…」

「コロセ!」


「あらあら、そんなにお急ぎで何を?」


激怒し襲いかかる大量の雑兵たちをルビーは光の薙刀で返り討ちにする。その薙刀の華麗なる斬撃に飲み込まれ、次々と量産機兵は活動を停止する。死角から不意を突いてルビーを攻撃しようとする愚者が二人いたが、それは…


「さーせないっす!」

「仮にもレディーに手を出すなんて非常識だな」


鋭利な剣と鈍重な盾が回り込み、それぞれを破壊してみせる。残骸が宙を舞い地面に積み重なっていく。


別の世界ではオーガと呼ばれ恐れられていた種族たちが彼らの前に立ちはだかるが…


「!?」


「まあこのくらいなら普通に防げるっすね」


その質素ながらも強烈な破壊力を持つ拳による一撃は盾によって難なく防がれ、受け流されてしまう。さらにそこを…


「これでどうだ」


ノアが怪異の頸動脈を光の剣で切り裂き、生命活動を続ける上で必須である血管を失った鬼は地に倒れて絶命する。


「その翼はお飾りかしら」


本来エリア2にてよく発見されるボンバイドたちがルビーへ向かって爆弾をぶつけようとするも、迫りくる大量の光球によってなすすべなく墜落していき本来自身の攻撃手段である爆弾で自爆していく。


だが、迫っているのはボンバイドだけでない。ガードと呼ばれる剣士の機械がルビーへと迫るも…


「!?」


ルビーが魔法の杖を光の薙刀に変形させ、そしてガードを迎え撃つ。ガードとルビーの互いの剣と薙刀は拮抗し…合わない。あっという間にガードは力勝負に負け、ルビーの光の薙刀が体を貫通する。


「どーりゃりゃりゃりゃー!!」


アルマは俗に言う…「まるまりふぉーむ」へと姿を変え、次々に量産機兵たちを粉砕していく。量産機兵は防御をすることも叶わず、次々と胴体に風穴を開けられていく。


「さて、こいつで最後か?」


最後に残ったオルタナリースの腹部へとノアは剣を突き刺し、そしてそのオルタナリースは地へと倒れる。どうやら…これで全員倒せたらしい。


勇者たちは進軍を再開し、その肉片と残骸だらけの深緑の地面を後にする。まだまだこれしきで彼らを止めることはできない…はずだった。


「しっかし…ここは本当に不気味っすねー…こんなのが僕たちの世界を元にしてるって何の冗談っすか?」


アルマが盾で量産機兵を殴り倒しながらそう話す。こ弱くはないのだが、攻撃がワンパターン。コツさえ掴めばこの程度、簡単に壊せる。


「この赤い謎の物体も何だか歪ね〜、美味しくなさそうだわ」


「何でもかんでも食べることに変換するのをやめないか」


ある量産機兵は光の剣で切り裂かれ、ある量産機兵は魔法によって燃え朽ちる。

別に強くはない。強くはないのだが…


「このエリアだけ敵があまりにも多すぎないかな」

困った顔をしてノアがそう言う。なにせ、量産機兵との遭遇率が尋常じゃない。明らかに異常である。まるで、既に完全に征服されたかのように…


「まあでもこのぐらいなら簡単に対処できるっす、とっとと制圧するっすよ!」


「そうね〜でも…これ全部機械で美味しいどころか食べることすらできないからキライだわ〜」


「だから何で食べることだけに変換する」


こんなことを言ってこそはいるが、全員戦闘能力は高い。量産機兵ごときで止められるわけはなかった。量産機兵ごときでは。


「…変ね?」

「どうした?」


突如足を止めて立ち止まり、そう呟いたルビーに対しノアは疑問を抱き尋ねる。ルビーは周りを不審そうに見渡しノアに対してこう言葉を返した。


「地面の辺りが…こう、変なのよ。まるで意思でも持ってるかのような動き…」


「おやおや、もう気づかれちゃったかぁ」

「気づかれちゃったねぇ」

「でも遅いねぇ」


「「「!?」」」


ルビーがそう言葉を発した瞬間、地下から破裂音を鳴らし瓦礫をぶちまけながら三つ首の大蛇が現れた。


岩の破片が辺りに溢れ落ち、アルマだけでなくノアやルビーにもこれには予想外であり驚きを隠せないながらもすぐさま盾や杖、剣を構え戦闘体制となる。かの大蛇は赤き目を光らせながら三つの首を振り上げ勇者たちを睨むと、彼はこう名乗った。


「僕の名はハクジャ」

「ハクジャだねぇ」

「ハクジャだよぉ」


「あ、僕はアルマっす」

「私はルビー」


「丁寧に自己紹介しないでね」


まさかの自己紹介し返したアルマとルビーに困惑しながらも、ノアは戦闘体勢を整える。


「どうしたの?お、に、い、さ、ん」

「そんなに怯えないでよぉ」

「キヒヒ」


ふざけた態度をしているがこのヒュドラもといハクジャ、かなりの難敵である。なるほど、量産機兵はただの飾りでこいつがメインだったか。ノアは相対する強者の威圧に冷や汗をかきながら光の剣を生み出した。


「本当はもっと内通者とか探りたかったんだけどねぇ」

「まあいいよぉ…それより、どうする?」

「逃げないなら命はないよぉ」


ハクジャは引き返すなら命は助けてやる、と言った。実際ハクジャは今はノアたちに手を出すつもりはないらしく、睨むだけで何もしてこない。しかしその答えはもちろん…


「先手必勝よ、それ!」


それの答えはこれ、大量の光の弾である。光の魔弾たぎは闇夜を照らしながらハクジャをズタズタにしようとグングン迫るが…


ハクジャもそれをまともに喰らうほどバカではない。突っ込んでくる光の弾たちに対してハクジャは余裕の笑みを浮かべながらこれだけ告げたのであった。


「いきなり失礼なウサギさんだよねぇ」


ハクジャは自分に迫る魔弾を前に尻尾で地面を叩き、地面を隆起させ即席の大地からなる防壁を作り出しそれらの攻撃を防ぐと、自分に飛びかかろうとするアルマやノアを猛毒の吐息で牽制する。


猛毒が辺りを蝕みこれを少しでも撫でればミクリバエも涎を撒き散らしながら蛇毒に苦しみ絶命することとなるだろう。


「ふーん…ならこっちも本気で行くよぉ」


「かかってきな!!」

「返り討ちにしてやるっす!」

「前菜にはぴったりね」


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「ふむ、君がこの町で暗躍してる氷使いとみていいのかな?」


「…そうだと言ったら?なの」


一方、こちらでも動きがあった。この街のNo.3ことガルゼドールは、地面に万物を死に至らしめる強力な酸と毒を滴らせながら冷気を纏うリヴァと相対する。


ガルセドールが生み出す粘液は地面を侵食し草木も生えぬ不幸の大地へと世界を書き換えていき、それらに触れてしまえばどんな生命体であろうが息の根が止まることを示唆している。


「それにしても驚いたよ。まさかガンダーラ軍のエリート雑兵さんがそっち側についてるだなんてね?」


「はて、何のことでしょうか。私はジョニー、リヴァお嬢様のボディガードでありガンダーラ軍などに所属したつもりは一切ございませんよ」


冷気を纏うリヴァの傍で紅の刃を構えるその漆黒の戦士はシャドウロイドのジョニーである。言っておくが、ジョニーは雑兵の中だとかなりエリートな部類でありそこらの一般量産機ではまず歯が立たない。


この暗黒の戦士に勝てる者はそれこそ戦闘慣れしている者でしか無理だろう。

そんなジョニーですら戦力外通告を受けてもおかしくないと思える程には…目の前のスライムはその貧相な見た目に反しあまりにも強大な力を身に宿しているのであった。


「やれやれ。シャドウロイドがそちら側についてるってんなら今まで逃げられたりしてたのも納得だね。ロストナイトを壊した犯人たちに逃げられたのも、そこの氷使いがあのハクジャから逃げれたのもおおよそ君が関与してるってところかな」


「っ…!」


ガルセドールにほとんど言い当てられてしまったジョニーは一瞬動揺するが、敬愛すべき主君の横顔を見てすぐに戦意を取り戻す。


目の前のスライムは確かに強敵であるが、それがどうしたというのだ。この隣に佇む愛に生きた竜の方がよっぽど強力で最も敵に回したくない存在であるのだから。


「…ジョニー、死にたくないなら逃げるなの。ヤツの相手くらいなら一人で行けるなの」


「何を言っているのですかリヴァお嬢様、私はどうあれ地獄までついていきますよ」


ある地点では鎮座するだけで大地が荒れる白き三つ首の大蛇と勇者たちの戦いが、ある地点では酸と氷の吹き荒れる一歩間違えれば即死の大激戦が幕を開ける。『三つ首』と『粘液の執行人』、二つの厄災たちが本格的に牙を剥きこの街に害を為す者たちに大いなる脅威を齎す。


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