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エリア五 14話『クリフサイド×虚飾軍同盟』

「って感じっすね」

「ま、全く、苦労させてくれたわ」


「なるほど、それなら感謝しなくちゃだわ」


目を覚ましたルビーは、眠っている間に何が起きていたか諸々をアルマから聞かされた。目の焦点をルビーから遠ざけながらがぶらも苦労したと吐き捨てる。苦手な『女性』に該当するルビーをずっと背負って活動していたのだ、彼の精神的負荷も相当なものだっただろう。


「病気は…治ったみたいだな」

「元気になってよかったじゃねえか!」


ノアとライラもやってきてルビーにそう声をかける。先程までノアは一時の乱心で精神的に落ち込みうごごっていたが、なんとかうまく立ち直ることができたようだ。


「精霊ちゃん、ありがとうね…人間の方も感謝するわ。人間の割にはやるじゃない」

「恩人に対してなんちゅー言い草じゃ」


紫髪を揺らし歯を見せながら笑みを見せるライラはルビーにとって助けてくれた恩人ではあるが、人間は人間に過ぎないので不快感は多少覚えている様子…まあ彼女は正確には人間ではないのだが。


「そんじゃあたしはゼリフとしばらく向こうで話してくるから、用があったら言ってくれ」


「わかった。いろいろ助かった、感謝する」


ライラはこの街での探索記録などをゼリフに伝えなければならないようで、手を振りながらゼリフと共に別室へと去っていった。そうして取り残されたのはアルマたちクリフサイドとルビーを助けた命の精霊、そして…


「可愛いロリッ娘ちゃん、名前なんて言うんだァ?」


暇を弄ばせているこの狼男、ウル男である。どうやら彼は同じ獣であるルビーに対して強い興味がある様子。彼は瞳に好色を宿らせながら近づいてきた。第一声が完全に変態のソレだが、こんなんでもレジスタンス最高戦力…らしい。その割にはゼリフによく尻を叩かれている気もするが、まあ気のせいだろう。


「私はルビーよ。あなたは?」


「オレぁウル男。よろしくなァ」


「なんか人間嫌いなところとか色々雰囲気似てるっすね」

「意外と同じ世界から来た同郷だったりするんじゃないか?」


「いや…それはないわね。私の世界にこんな種族いないもの」

「おうよぉ、確かにウサギのケモっ子は知ってるが…あの二人以外は聞いたこともねえからなァ」


ルビーとウル男は確かに人間嫌いの側面や獣人であることなど共通点は多く、一瞬同郷であると錯覚させられそうになるが…ルビーの世界に狼人間は存在せず、ウル男の世界ではウサギの動物兵は二人を除き全滅しているのだ。


「ウサギの動物兵は賢く指揮官に向いてると聞いたが…ははぁん、それはルビーちゃんも変わらなそうだァ…お顔も可愛いしな!あー、ルビーちゃんに踏ん付けられてえなァ」


「うわ」

「あ、あら」

「劣情抱いてんやないぞ…」


繰り出されたセクハラ発言によりノアやルビー、がぶらも困惑する。ウル男からどこか恍惚とした笑みが溢れ、涎が地面に落ちるのを見るや否やアルマが一歩後ろへ下がる。その表情は、困惑ではなく恐怖。


『ア、アルマたああああああん!!!俺の愛はエタアアアアナルウウウですぞおおおおお!!!』


「_____うぇ」

「…?どうした」


アルマの頭には元いたゲーム世界の某変態槍使いが頭によぎった…そう、ロロフである。なんかめちゃくちゃ強いところもウル男とロロフで酷似しており、ケモに興奮するところも完全一致。

そそくさとアルマはノアを盾にし、少しでもウル男の視線から外れるよう願う。


「しゃいにー」

「めにめに」


「なあ、ちょっとええか?気になったんやが、このイガイガしてるのはなんや?栗か?」


がぶらは先ほどからテーブルで動いているトゲだらけのウニのような生き物を指差してそれが何なのかをウル男に尋ねる。そういえば他の場所でも見かけたような気がしなくもないこいつだが、一体何者なのか。


「こいつはメニーって言って、ゼリフが扱うウニ型ラジコンなんだとよぉ。こいつらを探索に向かわせたりしてるんだぜ」


「ゼリフ…あぁ、あの保安官さんね」

「…大して気にしてなかったけどそういえばこれ僕も見かけたような」


モゾモゾしているこの黒いウニはメニーというラジコン、らしい。実はたくさんおりこの街の至る所に隠れている。今までは表立って動かすとすぐさまガルゼドールに一掃されてしまっていたため、あまり見かける機会はなかった。


しかしこれからはこのメニーたちもだいぶ動かしやすくなるだろう。ちなみに未だ盾使いなのにノアを盾にしているアルマも少しだけこのメニーには見覚えがあるらしい。さて…


「それで、これからどうする?」


「そうね、おやつだけここで食べてその後また動きに出るべきなんじゃないかしら。ここほど安全なところなんてそうそうないだろうし…あ、アルマ。いい感じのお菓子って作れたりしない?」


「さ、流石に無理やろ…無理やよな」


「うーん、材料があるなら作れないことはないっすけど…」


ルビーの治療も済んだしついでに少し休憩もしてから先へ進みたいところ。ルビーはアルマにお菓子を作れないか尋ねているが、いくらアルマでも無から何かを作ることは不可能…言ってしまえば無茶振りもいいところである。


流石のアルマも首を横に振り無理だと伝える。せいぜい出せるのはミクリバエの唐揚げと研究所で拾ってきたクラゴバナナだが、果たしてクラゴバナナはおやつに入るのだろうか…まあそんなことはどうでも良く、だ。ウル男は人差し指を一本立て、舌を出し、こう話し始めた。


「へへへ、菓子ならこの倉庫に色々置いてあるんだよなァ。ドーナツもエクレアもいちごタルトもわたがしもなんでもだァ」


「わたがし…っす」

「いちごタルト」

「笹団子はないんか?」


アルマとルビーの獣二人がわたがしといちごタルトという文字に釣られて反応しキラリと目を輝かせだした。わたがしはアルマ、いちごタルトはルビーの好物でありよく食べているおやつ。キラキラとした視線を向ける二人にウル男は一つ条件があると添える。確かに貴重な物資なのだ、対価なしに貰おうなどとそんな甘い考え…


「でもよォ、流石に対価が必要だよなァ。あー、誰か可愛いケモっ娘がオレのこと踏ん付けたりしてくれないかなァ」


「「…」」

「ま、まあ…だろうな…」


ルビーが半眼でウル男のことを睨み、アルマがまたシュンとノアの後ろへと隠れ、ノアとがぶらは苦笑い。一般変態狼は四つん這いとなり指で背中を差しつつこちらをニヤリと笑いながら見ている。ルビーが不安そうに周りの三人をチラリと見るが、それでもお菓子が欲しいと意を決して前に進む。


ルビーがそろりと足をウル男の背中に足を踏み入れると、


「アァン!!!」


「うわ」


ウル男の口から恍惚とした鳴き声が漏れ、それを見て良からぬ者を思い出したアルマが膝を突きガクブルと震える。ルビーの顔は困惑で染まりつつそれでもジリジリと足をウル男の背中に踏み散らすとウル男は更に悶えその足踏みをじっくりと堪能する。


「もっと!もっとだァ!そのまま次はオレのことをペロペロ」


ウル男が契約に反して更なる要求をルビーに突きつけようとしたその時、ドアがガチャリと開き、全員の視線がそこに集中する?もちろん、そこから出てきたのは…


「お前たち、何をしている」


顔にこそ出さないがどう見ても明らかに今の状況に困惑しているゼリフと、うわあとドン引きしているライラが打ち合わせを終え帰ってきたのだった。


_________________________________________________________________________________


「むー、ここからどうすべきかなの」

「やること自体はまだまだ山積みなのですが…」


命の精霊により想定よりもかなり早期に傷を癒すことができたリヴァと、その連れであるジョニーは再びこの死の街を放浪していた。この紅く汚染された街を雑兵を蹴散らしながら進んでいく。


道中、ロストナイトにも何体か絡まれはしたが全て返り討ちにした。幸いにも位置情報を共有してくるのは洗脳兵を輸送する護衛の個体だけのようなので、増援を呼ばれる心配はしなくてもいいのは幸いか。


「これからどうするつもりです、お嬢様」


「狙いは研究所か洗脳兵の奪還。研究所は攻略すればアイテムを根こそぎぶんどることができるし、洗脳兵を奪還すれば単純に戦力を増やせるなの。ここは後者を…」


「へー、俺っちたちにもそれ聞かせてほしいじゃーん?」


「!?」

「ちっ、何者なの」


リヴァとジョニーが今後の方針について話し合っていたとき、突如上空から嘲笑を含んだ獣の声が聞こえジョニーとリヴァは戦闘体制へと移る。彼らが目を向けた先、上空に佇んでいたのは『魂の美食家』を二つ名とし魂を喰らう獣、デルガゴールである。


「お嬢様、こいつは…?」

「ガンダーラ軍…にも見えないなの。多分だけど、クリフサイドともガンダーラ軍とも関係ない第三勢力なの」


「お、当たりじゃーん?俺っちは虚飾軍No.2『魂の美食家』デルガゴール。俺っちたちを前にガンダーラも崖っぷちたちも魂を抜き取られ虚飾軍入りすることは間違いないんだぜ、と言いたいところだけど、今回は一つ違う。交渉がしたいってわけじゃん?」


リヴァの推測通り、デルガゴールはクリフサイドでも、ガンダーラ軍でもない第三勢力『虚飾軍』。死者という言葉に虚飾という言葉、間違いなくリヴァの知人と同一人物が創始者であるが…そこを突っ込めばさらにややこしい事態となるためグッと堪える。知人というよりろくでもない『大罪』の一人、ただの外道だ…さて。


「何を要求するつもりですか」


デルガゴールは彼らに襲いかかることはせず、あくまで『交渉』がしたいらしい。ジョニーが黒の刃を未だに彼らは強者の魂を抜き取り、自身の軍勢とするのが目的のようだが…?


「簡単さ、俺っちたちと同盟を組まないか…ってこと。どうやらお前たちは洗脳兵を奪還したいらしいけど、俺っちはその洗脳兵を守ってる『クダチ』の魂が欲しいってわけ。どう、利害が一致してるじゃん?ケハハハハハハ!!」


「それなら何故今私たちを襲わねえなの?」


「わかってねえなあ!ここでお前たちを攻撃したらお前たちクリフサイドは俺っちたちを敵と見做すだろう。流石に二つの勢力を敵に回せるほどこちらはまだ強くないわけだし、万が一そうなったら勘弁じゃん?たとえ今ここでやり合ってもどうせ逃げられるだろうしなあ!」


「ーーふむ」


魂を集め死者として復元しそれらを扱う虚飾軍、しかし、どうやら彼らはまだまだ発展途上なようだ。戦力もまだ豊富には揃っていないらしく、デルガゴールはため息をつきながらある死者を復元する。


「魂さえ回収できればこっちのもんなんだけどどいつもこいつもツキが回ってこなくてなぁ!こんな貧弱なのを戦力として扱うくらいには回収できてないってわけじゃーん?」


デルガゴールはそう言うと魂の残骸から『死者』を復元する。少し青みがかったその死者は少しずつ形を整えられると…その姿はエリア3を領地とする『テツオウ』の部下、テツコブン4へと置き換わっていく。


「死者…なんですよね?」

「なんか死んでるはずなのに死んでねえなの?」


そう、復元されたテツコブン4は何故か死者として息を吹き返しているはずなのになぜか死去済み、こいつは遺伝子レベルで死んでいるということなのか?デルガゴール側にもこいつの生態はよくわかっていないようだ。しかし…


「だがまあ、こいつにも使い道はあるじゃん?こいつを使えば…おっ、早速来た」


一見なんの戦力にもならなさそうなテツコブン4だが、デルガゴールにはこいつにも価値があるとニヤリと笑う。リヴァとジョニーの顔は疑問に染まるが、その答え合わせはすぐされることとなる。


「「「ゲギャギェギェ!!」」」


テツコブン4に釣られて砂埃を上げながらやってきたコウモリのような巨大な何か、彼らは"テツバット"。

テツバットはテツコブン4の元へと集まり跪き始めた。


「この通り。こいつを使えばこの捨て駒どもはどんなことをされても俺っちの言いなりさ。例えば…」


「「ひーーーーーー!??」」


デルガゴールはそういうと嘲笑を浮かべながら口から火焔放射を軽く放つ。案の定それは2体のテツバットに当たり弱点の火に触れた彼らは涙目で逃げ回る。しかし、テツバットはテツコブンを従えているデルガゴールに反撃などできない。な?便利だろとでも言いたげな顔をしてデルガゴールはこちらを見る。


「正気の沙汰じゃねえなの…」

「これは少し、あまりにも」


「なーに言ってんだよ!こいつらはあくまで捨て駒、肉壁じゃーーん?そんなみみっちいこと考えなくていいんだよ!あとは…こいつらも紹介しなきゃじゃん。そーれ」


デルガゴールはそう言うと他にも死者を復元し出す。魂の残骸から復元されていくのは、ウサギの女剣士と、ゴミの塊と、かつてこの街に仕えていた特級戦闘員2体と、かつて別世界で倒された40を冠する面体。


「紹介しようじゃーん?右から順に、ガーネット、ハドロンエンジン、トタラ、ジェルテオ、面体40さ」


「ワレノ使命ハデルガゴール様ニ…ツカエルコト」

「ジ…」

「…」


少し青みがかかった彼らは虚に空に目をやりながらうわ言を話す。魂を復元されたことによる弊害で、自我が極端に薄れているようだ。しかし、そんな中でもある人物だけは自我をそのままに行動することができていた。それは…


「私はガーネット、よろしく頼むわ。ええっと、あなたたち名前は…?」


それはウサギの女剣士、ガーネットである。どうやら、彼女は他の死者たちと違い理性を保てているようだ。ガーネットは剣を下ろし丁寧にそう自己紹介する。と、ならばこちらも自己紹介し返すのが礼儀というものだろう


「私はリヴァ、でこっちはジョニーなの。ルビーさんに似てるけど、知り合い?なの?」


「あら?もしかしてルビーのお知り合いさん?娘がいつもお世話になってるわ〜」


「え、娘ってことはまさかこの人ルビー様の親御さんですか?」


「そのまさかみたいなの」


そう、ガーネットはルビーの母親なのである。もちろんルビーの親なだけあり実力も超一流、あの騎士団長のエース以上の強さを誇るとされている。想定もしていなかったルビーの母親が出てきたことによりリヴァとジョニーは少々動揺気味。だが、ガーネットは彼らがルビーと知り合いなのを確認すると一つこう尋ねた。


「ってことは…お兄ちゃんにも会った?」


「お兄ちゃん…?お嬢様、ご存知ですか」

「…ルビーさんってお兄ちゃんいたっけなの?とりあえず私は会ってないなの」


「そう…あの子はどこで何をしてるのかしら」


リヴァにそれだけ確認すると、ガーネットは頰に手を当てそう呟いた。ルビー、ガーネットの名前の法則的にそのお兄ちゃんとやらも宝石の名前を冠しているのだろうか…?まあ、いい。彼らの会話が終わると同時、デルガゴールが何かを思い出したかのようにこう話し始めた。


「あーっと、ひとつ言うのを忘れてたじゃん。レジスタンスとやらがいるじゃん?あいつらは絶対テツバット生贄だのクダチの魂回収だのに反発するから絶対入れないようにするじゃん?もしヤツらにこのことを言おうものなら…わかるだろ?」


デルガゴールは街の詮索のしすぎで囚われ捕虜となったが、その間何もしなかったわけではない。独自の情報網でいろいろ調べ上げ、レジスタンスの存在を確認したのだ。

メンバーは…ゼリフに命の精霊、ライラ、ウル男と確かにウル男を除きほとんどのメンツがデルガゴールと同盟を結ぶのを嫌がること間違いないだろう。万が一彼らと敵対することになったら面倒だ。


「まあレジスタンスどもはクダチに対抗できる『電気』を持ち合わせてないし、こちらの方が数は豊富なんだから洗脳兵の奪還も俺っちと協力した方が成功率高いと思うぜ。それで、答えはどんな感じじゃん?」


「お嬢様、どうします」


デルガゴールはお互いのメリットを掲示し終わるとリヴァに返答を求める。確かに、言っちゃ悪いがテツバットたちを肉壁として扱える今の状況は対クダチと洗脳兵において圧倒的に優位だろう。さあ、リヴァの返答は…


「わかったなの。その同盟、受けるなの」


「お目が高いじゃーん!そうとあれば早速準備するじゃん?ケハハハハハハ!!!」


デルガゴールはリヴァのその承諾の返答を待ってましたと言うでもかのようにそう歓声を上げ、そしてさっそく準備をするよう促す。こうして、クリフサイド虚飾軍同盟が結ばれたのであった。


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