表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

エリア五 11話『待たない』

「アルマ、大丈夫…?ケホ、ケホ」

「…そんなにここの幹部は強力なのか」


酷く動揺するアルマに、ルビーとノアも只事ではないと感じ焦燥感を隠せない。少し震えるアルマに心配するルビーを横目に、ノアは冷静にその魔龍の強さを推測する。

ハクジャなどを前にしてもここまで動揺することはなかったのだから、本当によっぽどなものなのだろう。


「そりゃもうえぐいくらい強いなの。これはグレイドを退けた後もゴタゴタがあってヤツの生死を確認できなかったのが悪いなの…完全にこちらの不手際で申し訳ないなの」


「いや…普通はこんな事態になるなんて予想外もいいところだ、仕方ない…それより、続きを頼めるか」


「おっと、失礼なの」


項垂れるリヴァをノアが慰め、そして続きを促す。リヴァはコホンと一度咳をしたのち、再度話し始める…しかし彼女の言葉をそのまま受け取るなら一回は撃退したことがあるということだ、それならば希望は山のようにある。


「その様子だと一回はグレイドを倒したことがあるんだよな。そのときはどうやって倒したんだ?」


「んあ、そのときはメギさんとディノスが協力して倒したなの…だけど、今はディノスは洗脳されて撒き餌として彼らに利用されてて、おそらくはメギさんもこれねぇなの」


「そう、か…」

「これは苦しいことになるわね」

「撒き餌…撒き餌っすか」


一度退けたことがあるということに希望こそ持てど、現実はそう甘くない。かつてグレイドと五つの暴れし大罪を同時撃破したのだが…そのときグレイド撃破を担当した二人のうち一人は闇の世界に来れていない、もう一人は黒幕によって真っ先に潰されていると状況はかなり苦しい…


「アニキを救出しに行くことは不可能なんっすか?」


「…この街の洗脳者はほとんど団体行動をさせられてて、それをどうやらクダチっていうこの街でもトップクラスの強さを誇る怪物が守ってるしくて…今はまだ救出は難しいなの。てんえんたいがどうちゃらこうちゃらで、雷属性が使えないと厳しいとか」


転淵体は死者のなれ果て…のようなものだという。永遠に再生する不死性を持っているのだが、弱点は電気。電気を通した箇所は再生も弱まり、普通にダメージを与えることができるようになるのだとか。


ーーしかし、今この場に電気を扱える者はいない。


「雷か、シエルがいたら使えるんだが…あいつでも探してみるか?」


「それが…シエルさんって人も洗脳集団の一員だから厳しいなの…ちなみにディノスとシエルさん以外にもカリヤって人とアリスくんが洗脳集団に入ってるなの」


「あら…アリスも捕まってるのね、ケホ」


「たぶんルビーさんも捕まってた可能性が高いっすねー…いや、なんかお腹減っただけで抜け出してるのが一番納得いかないんすけど」


本来グレイド直々の洗脳など自力で抜け出すことなど不可能…としかアルマは思えないのだが、まあ実際それで抜け出しているウサギがいるので否定できない。何があったのだろうか、本当に納得が行かないが…

まあ、よい。


「あとはクラゴアが運営してる研究所があるなの、そこには研究対象として貴重な資料やアイテムが眠ってる…んだけど、その分守りも硬いなの。まあクダチよりかはまだ希望があるなの」


「問題が沢山あるわね…考えてるだけでお腹が空いちゃうそうだわ」」


グレイド、クダチ、四ノ厄災などなど…敵の層はかなり厚く、この街の攻略は難航を極めるだろう。まあ、もちろんまだまだ敵はいるのだが。


「他にもいろいろ強敵はいるけど、まあそいつらは倒せねえことはないからそんな悲観的に思わないで欲しいなの…そしてこれは悪くない方のニュースなの。どうやらこの街にもレジスタン組織みたいなものがあるらしいのと、ハクジャが倒されたことにより捕虜が大脱走を起こしてる可能性が高いなの。つまり彼らを味方にすれば」


「かなりの戦力補強ができるってわけっすね」


「その通りなの」


「なるほど…それはかなり希望が見えてきたな」

「彼らを味方にできればここの制圧もかなり優位に進めれるってのは間違いないわね」


まあそのレジスタンス組織とやらと捕虜たちが今どこにいるかは掴めていないが…合流すれば大きな戦力となるのは間違いないだろう。だが、しかし懸念点が一つある。


「もちろん相手もそれはわかってると思うから捜索に動いてると思うなの、だからいち早くこちらから合流しないと…」


「こちらがさらに不利になるってことね」

「ただでさえこちらが劣勢おぶ劣勢もいいところなのに、そこから洗脳されて敵に回られたら終わりっすもんね」

「国取り合戦かなんかか…?」


というわけで彼らを上手く味方にできれば







「グォァァァ!!!!」


「な!?」

「ままま、マジっすか!?」


突如爆音と共に龍の咆哮が背後から響き、四人は驚愕を隠せない。そう、そこに現れたのはガンダーラ軍最高戦力であり、この『死の街』の支配者であり、最強かつ狡猾な無敵の魔龍。しかも相手は待ってもくれない様子。


「ーーッ」


その正体は、魔龍グレイド。いきなり最高戦力がお出ましであり


「しまったなの、完全に油断してたなの…!」


リヴァが一歩彼らの前に飛び出し、何かを口に入れながら本来の竜の姿となり彼らに覆い被さる。それと同時、圧倒的な破壊の衝撃が世界を覆い尽くし全てが塵と化す。


「グォ」


追撃にもう一度破壊の衝撃を放とうと、グレイドが吐息をぶつけ、さらに世界がひび割れて…


「グレイド様、少し失礼します」

「グァ?」


何者かがグレイドに声をかけて、グレイドの動きは少し硬直する。そこにいたのはシャドウロイド一匹、しかし彼に何の用があるというのだ。


「ギャンビッター様から伝言があります…確か『其方の部下の噛ませドアが海で行方不明の件、今すぐ調査に出向くで也』…だとか、かなりお怒りの様子です、今すぐ向かうべきかと」


「グォ!?」


なんと、尊敬する最愛のギャンビッター様がお怒りのようでグレイドも狼狽える…そう、海に派遣したザルドアが今行方不明になっているのだ。

海世界の者たちはどうやらこのガンダーラを裏切るための準備を進めているようで、ガンダーラ軍の兵士のデータを集めている…当然その対象は自分も例外ではない。しかしぶちまけられた龍の巣を解析しても意味はなく、龍の巣の権能を真に解析したいなら本体から直接採取する必要がある。もちろん自分が生きている間はそんなこと不可能だ。


なのでヤツが今自分を超えることは超越した技術力を持ってしても断じて不可能なのだが、万が一ということもある。なので対策は進めておかなければならない。それだけではなく、調和域の守護者や謎の第三勢力にクリフサイドに自エリアの管轄に…考えることが多すぎる。


さて、ザルドアは海世界の裏切り者たちが使役するモノセラノイドを破壊するため派遣したのだが、どうやらくくりつけた通信機によると、フォーメンズという海世界の強者四人に絡まれてぶち飛ばされたらしい…


通信機が壊れていなければ捜索も簡単だったのだが、どうやらメタウラスとやらの突進と同時に壊されてしまったみたいだ。捜索はしようとは思っていたが、まさかここまで早くお叱りが来るとは…ギャンビッター様の言葉に怪しさもないし真実と見做していいだろう。


「グォオオオオオオオァアアアア!!」


かの魔龍はそのシャドウロイドの言葉を信じ、冷や汗を掻きながら翼を広げて海へと向けて飛び去って行った。


____________________________________________________________________________



「あれ…ここは天国…っすか?」


「現実を見ろなの。私なの」


「あ、リヴァさ…うぉ!?」


先程まで気絶していたアルマが見たもの、それは血まみれになりつつも身を挺して自分たち三人を瓦礫から守る蒼の首長竜…そう、リヴァである。割と修羅場慣れしているアルマだが、ここまでボロボロかつ重体のリヴァを今までに見たことはなかった。


「流石にこれは死んだかと思ったわ〜」


「全く…魔龍グレイドってのはあそこまで規格外なのか。ハクジャとは比べ物にならないな…」


アルマに続いてルビーとノアも気絶から目を覚ます。そして、魔龍グレイドの強さがあまりにも規格外であることに全員が戦慄する。魔龍の本気の一撃、当たれば全てが粉々になるソレ…しかし何故彼女が耐えられたのかというと…


「NEO MADSで限界まで硬度を引き上げたあとメ…間違えた、ラークからもらったあの金のロザリオがある程度ダメージを肩代わりしてくれたみたいなの、本来あと少しで死んでたなの」


『MADS』とはグラルスが開発した一時的に強き者を弱く、弱き者を強くする劇薬。それをさらにグラルスが改良したものが『NEO-MAD』…なのである。効果こそ通常の物よりは劣るが、これは強者が服用しても弱体化することはない。


リヴァはそうため息をつく。リヴァは素の強さの時点でハクジャなどの小ボスレベルはある。それがさらに強化されてるというのに、それでも抑えられないといえば、魔龍の重みがわかるだろうか。


「すごい傷だ…早く手当をしなければ」


基本は戦闘要員であるノアだが、こう見えて回復もいける身なのである。そして、そのノアから見ても今のリヴァはひどい状態であった。すぐに回復しなければとノアがリヴァに向けて手をかざすが…


「あ、回復ありがとうなの。まあでもハクジャとやらほどではないけど再生能力も備わってるから大丈夫…あーもう、この瓦礫じゃまなの」


リヴァが瓦礫を粉砕し、息苦しい瓦礫の壁に穴が開き漏れ出た空気が少しばかり美味しい。しかし、そんなことも言ってもいられず…


「…その傷だともう戦線復帰は厳しそうね」


「流石にこれ以上動くのはとりあえず現段階だと勘弁。——しばらく、休ませてほしいなの」


ルビーが諦めも交えながらそう言い、そしてリヴァもそれに肯定する。いくら再生機能が備わってるとはいえ、グレイドなどと戦うには厳しいというのはもはや誰がどう見ても明らかなのだった。


「クダチにグレイドに四ノ厄災とやらに…だいぶ戦力の層が厚すぎるな、一回クリフサイド本部に帰還すべきじゃないか?」


「あ、グレイドについては心配せんでいいなの。ーー今回、あの魔龍すら討伐可能な切り札…封印の鏡を持ってきたなの」


封印の鏡とは、アルデバラン騒動で黒幕に使われた最悪の神器の一つ…である。オルタの暗躍により猛威を奮ったこの鏡であるが、その騒動の概要を伝えると長くなるためここでは割愛する。封印の鏡はどんな生命体でも閉じ込めることのできる最悪の鏡と考えてもらって問題ない、それはグレイドも同様。


「だから、グレイドの隙を掻い潜ってこれをぴゃーとやれば無力化できるなの、ただ…」


「流石ね…でも相手はアレだけじゃないから…」


「この街に強者は多くいる。あのロストナイトとやらも雑兵らしいし…だが、この街に大きく貢献しているのは四ノ厄災だ。つまりあいつらを無力化すれば」


「なるほど、この街の機能を大きく歪ませることができるわけっすね」


グレイドを封印の鏡で無力化する方向で動くなら、考えるべきは厄災たちの処理だろう。残りは2体、クラゴアとバーディアのみだ。


「グレイドはジョニーのおかげでしばらく不在…最悪、グレイドを討伐できなくてもあの2体さえ倒しちゃえばこっちのもんなの」


伝え終わると、リヴァはゆっくりと立ち上がる。自分がやらなくてはならない使命は、全て果たした。


「ふぁ〜…私はちょっと安全なところでゆっくり休むなの。しばらくは動けそうにないから…封印の鏡は託すことにするなの」


そしてリヴァは竜の姿から少女の姿へと戻りつつ、彼ら三人に封印の鏡を手渡す。あと、一応ほぼ壊れかけではあるが使えないことはないロザリオも。とりあえず今せねばならない役目は全て果たした。


「了解っす」

「任せてくれ」

「アレも丸焼きにしたら美味しそうね」


「?」


こうして、魔龍グレイド前哨戦は終わり再び彼らは動くことになるのだった。

リヴァが家の屋根から家の屋根へと飛び乗っていきながら安全な場所へと移動していくのを見て、アルマたちも行動を再開する。

ことごとく蹂躙されてしまったが、このエリアのボスが誰であるか…という情報を手に入れられた時点で収穫はゼロだったというわけではない。


そう、この『死の街』の頂点に君臨するのは魔龍グレイド。かつてディノスとメギドラが互いに協力し、町の被害を最小限に抑えて討伐することができた魔龍である。ディノスがグレイドの"カラクリ"を打ち破き、グレイド自身はメギドラと激突していたはずだ。

——まさか、生きていたとは。


「まあ確かに、あの後もいろいろゴタゴタあって生死を確認できなかったのはこちらの不手際っすけどね…!」


魔龍大罪騒動のあとも一悶着あったのである。そしてそれは、今のこの状況をも超えるほどの絶望で…おっと、この話は関係なかった。話を戻すとしよう。


「一応このロザリオは使える…んだよな?」


「んー…一回試しに使ってみなさい。ケホ、ケホ」


グレイドの攻撃の余波を喰らいボロボロのロザリオ、ボロボロでこそあるが認識阻害機能にはまだ期待ができるはずだ。少し具合が悪く咳き込んでいるルビーに促されノアは金のロザリオを翳し、効能を確かめてみる。


「ど、どうだ」


「おお、これは…」

「完全に見た目はあの手強い機械兵さんね」


金のロザリオを使って周りからの認識を変えたノアの姿はロストナイトの姿と瓜二つ。見た目に粗はどこにもなく、これならば一部の絶対強者を除けば騙すことも容易だろう。


まさしく技術力の頂点であり、アルマは盾を握りしめ目を輝かせ、ルビーはロザリオのその効果にシンプルに感嘆する。

そしてノアは少し何かを考えると…顔を上げこう2人に伝える。


「クラゴアとやらが運営してる研究所に乗り込んでみないか?」


「え、今あそこに行くのはだいぶ自殺行為じゃないっすか?もっと先に…」

 

「あー…なるほどね、ニンゲンが考えたというのは癪だけど、悪くない案だわ」


ノアのその案にアルマが疑問を抱き聞き返すが、どうやらルビーはその真意を理解できたらしい。ハテナを隠せないアルマに対しルビーはこう説明する。


「ここから研究所はそう遠くないらしいし、おまけに研究所にはいくつかアイテムが眠ってるって話よね?研究所内の敵は確かに強くて骨が折れちゃうかもだけど…」


「このロザリオを上手く使えばほとんどは無視できるはずだ。もちろん隅々まで探索は不可能だろうが…使えそうなアイテムだけをいくつか頂戴するってわけさ」


「あ、そういうことっすか!それならよんのやくさいと戦うときも有利に進めれちゃうっすね」


クラゴア研究所では多くの強敵が待ち構えているようだが、その分資源も豊富。もちろんその資源を得るためにはその強敵たちと対峙しなければならないわけだが、このロザリオを使えばそのリスクはある程度回避できる。


「さて、ここが正念場だ」


そういうわけで、彼らはこの街唯一の研究所へと足を運ぶことになったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ