エリア五 10話『合流』
「ガルゼドール様はどこへ…?メタルシー魚もいないぞ。ハクジャ様もだ」
特級戦闘員隊長、鳳凰のアルベロは空から一心不乱に音信不通となった四ノ厄災の一人、ガルゼドールを探していた。炎を纏いながら上空から地上を見渡していると、彼は地上の氷の存在に気づき下降、地上に降り立つ。
「む、この氷…例の氷使いは先ほどまでこの地点にいたようだな…」
「今もいるなの」
「な、っ!?」
氷の冷たい声が聞こえたその瞬間、背後から硬い竜の拳で殴られ、アルベロの意識はそこで暗転した。
「さて、洗いざらい情報をぶちまけてもらうなの…ジョニー、念のため向こうで待機してろなの」
「わ、わかりました…し、しかし腕はあの薬で治せましたけどまだ…」
「いいからとっとと行けなの!」
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「ギィィィィィィィィィエエエエエエエエエエ!」
「やかましいわぁ!!!」
ここはハクジャに囚われし者たちの堅牢、まさしく地獄の牢獄と言ってもいいだろう。退屈そうに絶叫するテツバットに憤怒するがぶら、そしてその様子をケハハと笑っているデルガゴール、そして…
「ここをこうすれば…」
ネリンは一人大地の堅牢でここから出るために何か作業をしていた。大抵の者はここから
さて、そんな堅牢であるがこの牢獄を維持しているハクジャはアルマ、ルビーそしてノアの三人に倒されてしまった。つまるところ…
「開いたのじゃ!」
「お、やるじゃーーん?」
注ぎ込まれていた力が一気に途絶え、脆い箇所を突いたネリンが一気にこの地獄の牢屋をぶち破る。それを見てデルガゴールは感嘆し、翼を羽ばたかせ高らかに笑う。
「シマッタ…!」
「ここからは出させま…な!?」
「「ゲギャギャッギャギェエエエエエ!!」」
雑兵たちが脱走しようとするネリンたちを止めようと押し寄せるが、そんなことでテツバットたちは止まらず体当たりをぶちかます。なんかモノセラノイドの頭を齧っているが、まあそれどころではない。
「とにかくまずは安全な場所へに移動に動くのじゃ!妾に続き…」
「もうこれ以上ここにいる意味ないんだわぁ!それじゃ、バイバ〜イ!」
デルガゴールはもうここに用はないと翼を広げてとっとと飛び去ってしまった。まあそんなことだろうとは思ったが、今はヤツの話をする時間はない。テツバットたちはその巨体で雑兵や建造物ごと砕きながらどこかへ爆走して行ってしまったし、ここはあれらと比べ冷静であるがぶらを連れて逃げるしか…
「こんなところにゃもういられんわぁ!」
「お、おい待つのじゃがぶら!」
がぶらは自身の特性でとっとと瓦礫の隙間に潜り込み、ネリンの声を聞かずに逃げていってしまった。一緒に逃げると約束していたはずだったのだが、なぜだ。
「…………」
こう見えて神の一人であるネリンは、ただ一人取り残されマラソンで一緒に走ろうと約束していたのに見事に置いて行かれた少年の気持ちを味わいながら一人でここから逃げ出した。
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「ふう、やっと終わりね、良かったわ、これ以上ヘアセットが崩れちゃうのは嫌だから」
「ルビーさん、ノアさん、マジナイスっす!グーッド!」
「まあ、確かにニンゲンの割にはよく考えた作戦だと思うわ。悔しいけど、あの白蛇さんを倒し切る方法は私じゃ思いつかなかったもの」
アルマは純粋に二人を褒め、ルビーは見下しながら悔しがりながらではあれどノアを認める。割と簡単に討伐することこそできたが…ハクジャ戦に関してはノアの機転とルビーの技術がないとどうしようもなかったため彼らがMVPである。
「それに比べてタンクってのは地味っすよね。いつも盾になってるだけで終わりっすもん…」
「まあまあ、確かに目立つ活躍はしないけどそのありがたみはよくわかるよ、ありがとうな」
自分だけ明らかに活躍してないと落ち込むアルマを見て、ノアはそう励ます。実際アルマがいないとハクジャを足止めしたり妨害する役がいなくて手詰まりであった。それに、彼はその硬さを利用し飛び道具としても使えるのだから。
アルマは意外と自己肯定感が低い。過去に何か彼の自信を喪失させる何かがあったのではないかとノアは怪しんでいるが、まあいい。彼が上手くこなせるのは、裁縫と洗濯と水泳と料理とガードと穴掘りと接待だけである。
「全然多才じゃん」
「私の家来にならない?」
ノアはそう呆れた顔で突っ込み、ルビーはアルマのその才能に目をつけて城で働かないかと勧誘する。雇い主がルビーならそうブラックなことはないだろうが、アルマもおろちばーすにて大事な仕事を担っている。当然その誘いに乗るわけにもいかず、やんわりとお断りする。
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「気のせいかしら…少々冷えてきたわね?」
「いやおかしい、流石に寒すぎないか?」
さて、ルビーにノア、そしてアルマはハクジャを倒してからだいぶ進んだが…何故かここら辺だけ異様なほどに寒い。見れば地面も凍っておりアルマはツンと滑りそうになってしまう。しかし、アルマはこの寒さに非常に身に覚えがあるようで…?
「アルマ、ニンゲン、警戒して」
「ちょっと待ってほしいっす!これ、多分僕の知り合いってかルビーさんも知ってるっす!」
「あら〜?」
そう、氷でこの寒さの御法度と言えばあの人物しかいなかろう。
「あら、アルマ…それにルビーさんまで?元気そうで嬉しいなの〜」
そこには、ガルゼドールとアルベロの氷漬けになった死骸を地面に横たわらせている元嫉妬の大罪…リヴァがおり、彼女はノアたちを確認すると手を振って微笑んでいた。
「あら、リヴァじゃない!また会えて嬉しいわ〜」
「おお、彼女はルビーとアルマの知り合いか?」
「そうっすよ…ええっと、どこから教えればいいか」
彼女が素直にリヴァとの再会を喜ぶ中、ノアは唯一リヴァと面識がないためアルマに彼女が何者か教えてもらう。どうやら彼女はアルマの仲間で、そしてノアと同じく氷使いであるようだ。それもかなりの使い手らしい、そういえば確かにジョニーがリヴァという名前を出していたが、それが彼女というわけか。
「それにしても…アルマ、あなたここにいたなの、大丈夫だったなの?」
リヴァは竜の杖を地面に置きながらアルマにそう問いかける。
「まあなんだかんだ大丈夫だったっすよ。途中ハクジャとかいうのに絡まれはしたっすけどね。そっちはどうっすか?」
「私もガルゼドールという名前のスライムと対峙したけど……………氷漬けにしてやったなの。案外大したことなかったなの」
「すごいわね〜それも一人で?」
自慢気に話すリヴァにルビーはそう褒める。やはり女性同士だから話が弾みやすいのだろうか。また、リヴァも貫禄こそなくなったが彼女もかつてのボス敵。力は全く衰えてない…どころか、あの時とは比べ物にならないほど力を増しているというわけだ。そしてリヴァ、アルマ、ルビーの3人で盛り上がる中…
「あ、あのー…」
相変わらず、話に全然ついてけていない人が一人いたのだが、それは一旦置いておこう。
「このガルゼドールってのは四ノ厄災の一人、それでハクジャは貴方達が倒したようだから…これであとは二体、ってわけなの」
「よんのやくさい?」
ルビーはそうリヴァに聞き返す。そもそも、四ノ厄災というワードすら初めて聞いたのだから当たり前だ。もちろん、それはアルマとノアも同じく。何故リヴァが『四ノ厄災』などというワードを知ってるかというと…
「ああ、これらの情報はそこの鳥から教えてもらったなの。なーに、ガルゼドールの死骸を囮に誘き出してやったら一発で来やがったなの」
「?リヴァ、大丈夫かしら、ちょっと様子おかしいわよ」
「別に問題ねえなの…あ、続きいくなの」
少し不穏な雰囲気を醸し出しているリヴァに対しルビーは心配するがリヴァは大丈夫だと一蹴し続きを話し始める。まあ、ルビーが知らないだけで彼女の元の種族が大罪なのもあり当たり前のこと、なのかもしれない?
「四ノ厄災はボスに仕える幹部みたいなものなの。『魔龍の右腕』バーディア、『三つ首』ハクジャ、『八つ裂き』クラゴア、『鬼神の粘液』ガルゼドールの全四体なの」
「でもハクジャは僕たちが、ガルゼドールはリヴァさんが倒したから残り二体ってわけっすね」
「そういうことなの」
「残ってるのはクラゴアとバーディアってわけだな。どちらも強いのか?」
クラゴアはまだわからないが、バーディアの肩書きを聞くにこの街のNo.2、つまりかなりの実力者と見た。これはかなり苦しいことになるかもしれない…
「もちろん、なの、クラゴアは翼を持つ大きなタコ…クラーケンの方が正しいなの。四ノ厄災最弱を自称してるらしいけど異世界のアイテムだったり特殊能力を持つ銃だったりでかなりの強敵なの。バーディアは普通にトップクラスに強いんじゃねえなの?普通に幹部張れるクラスはあると思うなの」
「…そ、そんなにか」
「大きいタコ…アリスがいたらタコ焼きにでもしてもらってるのに残念だわ」
「マジで?食べるつもりっすか?」
「ルビーさん………??」
情報を聞く限りバーディアのその強さに戦慄するノアと、何故かクラゴアの話題でたこ焼きを連想するルビー。この街の抱える戦力はかなり強大なのだろうが、それもまだ一部にしか過ぎないのであった。
「そういえばまだここの幹部について話してなかったなの…アルマ、よく聞いてろなの。ーーここの幹部は、魔龍グレイドなの」
「!???う、嘘、っすよね」
アルマは聞いて腰を抜かす、それもそうだろう。相手がかつておろちばーすを大混乱に陥れた魔龍が生きており、そしてここの幹部を真面目に務めているのだと言われたら。




