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11 二年生の行事と一度限りの青春。



 卒業する三年生を見送り、春を迎えて二年生になった。

 紗代ちゃんと田辺や小林くんとは、別クラス。リカとは、また同じクラスになっていた。


 そして、錬金術師の転生ヒロインの物語も、ついに完結。


 『本好きのノア』さんからの感想がまた嬉しくて、上機嫌で返事をした。


【大変楽しく読ませていただきました。前世女子高生になれなかったヒロインが戦える錬金術師として成長していき、最強冒険者を目指すヒーローと、その仲間達と成長していく長編が、無料で読めたなんて信じられません。出版すべき物語ですね。このクオリティーでまた毎日更新をしてくださり、嬉しい日々でした。三日月先生のことだから、またすぐに新しい作品を投稿してくださると信じています。また先生の物語を読む日々を楽しみにしております。

 今作の連載、お疲れ様でした。素敵な物語をありがとうございました】

【こちらこそ、毎日読んでくださりありがとうございました! いつも感想をありがとうございました、執筆の糧にさせていただきました。更新を続けて最後まで書けたのも、読者の皆さんのおかげですよ。最後まで誠にありがとうございました!

 次回作はまだ考え中ですぐには投稿出来ませんが、そのうち開始しますね。次回作もよろしくお願いいたします!】


 この読者さんはいつも感想をくれるし、内容も嬉しいもので、いい人だと思う。


 もちろん、感想をくれる常連の読者さんは他にもいる。その方々にも、感謝を精一杯伝えて、感想の返事を返した。


 一学期の中間テストも終えて、暇になったタイミング。


 ちょっと休憩。

 でも書きたい気持ちは、くすぶっていた。

 『本好きのノア』さんも、他の読者さんにも言われた次回作について、考える。


(逆ハーレムモノ書こうかな)


 次の新作は、モテモテのヒロインと複数のヒーローの話がいいかもしれない。


(乙女ゲームモノ! まだブームには早いだろうけれど……乙女ゲーム転生書きたい!)


 乙女ゲームの世界に転生して、次々に立つ恋愛フラグに追われていく物語。


 魅力的なヒロインとイケメンの攻略対象の甘い恋愛の絡みがいっぱいな学園生活。


 乙女ゲームのシナリオも考えておくけれど、いざイベントが起きるのは乙女ゲームのシナリオとちょっと違うモノだったりする。その差を考えるのも、楽しい。


 プロットを立てたので本編を書き始めて、毎日更新の投稿スタート。


 それだけではなく、別の乙女ゲームモノの短編を投稿して、連載の方も覗いて来てもらう算段を立てた。

 ある程度、連載の方は書き溜めたので、なんとか短編を手早く書き上げる。


 今回は、ちょっとコメディ色が強めにしてみよう。

 選択肢に振り回されつつも、ハッピーエンドを迎えた短編。選択肢が強制的に攻略対象者と関わらせてくるし、なんならデッドエンドルートまであって危機を感じる展開。けれども、ギャグ要素強め。

 これはウケてくれて、長編で読みたいとまで言われた。残念ながら、長編化は考えていないので、今の連載を読んでくださいと返信しておいた。


 あとがきにしっかり宣伝したので、アクセス数もブックマーク数も増えたので、狙いは的中だ。


 もっと乙女ゲームモノを書きたいな、と思った。隙あれば、書きたい。


「引っ越すぞ」


 お父さんがある日、言った。


 そう言えば、スーパーに近いアパートに引っ越して過ごした時期もあったっけ。


 そういうことで、またもや引っ越しイベント。それでも、また自転車通学。

 弟と妹の様子見も、週一でマンションに寄って覗いていた。宿題や小遣いをチェックをして、学校で変わったことはないかと話も聞いておく。掃除をして、母が用意してやったと言うご飯もあると確認して、帰る。たまに私も弟達の父親からお小遣いをもらう。


 離婚が正式に成立するのは、私が三年生になる頃かなぁ。もっと早くに成立するといいけれど……養育費、親権の問題があるんだもんなぁ。


 母は、夜のスナックで働いている。でもそれだけでは、四人分の養育費を賄えるわけもない。


 だから、一度目の母は子ども全員の親権を引き受けると、お父さんとも離れて、四人を養うために昼は八時間のパートを始めるのだ。


 お父さんには私と末の弟の藍太を育てる意思はあったけれど、残りの二人については渋った。血の繋がらない二人の子どもを受け入れるだけでも、立派だと思う。


 でも、母は全員を育てる意思が強かった。弟達の父親は、まともに家事もやらないパチカスだ。これ以上、弟達を任せられないと引き取ったのは……あと何ヶ月だろうか。


 小説を書いているだけの中学生である私は、状況が悪化しないことを願うだけで、それ以上のことは出来なかった。


 そうこうしているうちに、やり直しから一年が過ぎ去り、また苦痛のプールの授業がやってきたし、イラデザの仲いい友だちと夏祭りに参加したり、夏休みを迎えた。夏休みの宿題の多さにげんなりしつつも、旅行にも連れてってもらって、二年生の夏休みを堪能。


 その間も、乙女ゲームモノの連載は続けていた。



 けれども、二学期。林間学校という行事があったので、残念ながら毎日更新を数日ストップ。


 ちゃんとあとがきに書いておいた。学校の行事があって更新は止まるって。

 おかげで学生だってバレた。まぁ、それくらいいいけれどね。


 むしろ、現役中学生ですか何か? とドヤ顔を決めたいくらいだ。そこまでは言わないけれど。


 一度目に書籍化作家だった経験をした大人がやり直して、小説を書いているのだから、年相応じゃないと自負している。きっと中学生が書いているとは、読者さんの誰もが思っていないだろう。



 林間学校のバス移動中、別の物語の構想を練った。乙女ゲームモノの短編をまた宣伝代わりに投稿したい。


 林間学校というイベント中なのに、その短編が書きたくてしょうがなかった。

 林間学校の目玉は、キャンプファイヤーだ。懐かしいなぁ。フォークダンスなんかしてさ、盛り上がった。


(ん? ……キャンプファイヤー???)


 ハッ!!

 私は、一度目の黒歴史を思い出した。


 林間学校のイベントテンションで、私は田辺に二度目の告白している!

 記憶では修学旅行だと思っていたけれど、違った。キャンプファイヤー後の林間学校だった!!


「よっ。新田」

「あ、うん。田辺……ははっ」


 フォークダンスで順番が来て、挨拶してきた田辺と手を触れ合って踊る。


 勝手に気まずくなってしまう。私、コイツに告白したんだっけなぁ~……。


 まぁ、やり直した今、一度目の告白もないし、二度目の告白もないけれどね。


 そういえば、一度目の告白の時……他の女子も田辺に告白してなかったっけ。……モテ男め。


「あとで話したいんだけど、い?」

「え? あ、うん。わかった」


 耳元でボソッと言われたから、驚いてしまった。近い。

 でもこうでもしないと、聞こえないもんね。しょうがないと割り切る。


 話って何だろう。クラスが変わってから、廊下ですれ違う時に挨拶するくらいの仲だったのに、何か用事でもあるのだろうか。


 キャンプファイヤーという目玉イベントが終わったあと、解散。

 山のログハウスでグループに分かれて泊まる。そのログハウスに戻る前に、田辺に声をかけたのだけれど、田辺が長身すぎて小柄な女子生徒が一緒にいることに気付かなかった。


「悪い、ちょっと待ってて」

「うん、わかった」


 告白する子だな、とわかって気まずい。


 告白中、待たされる私って何……。


 ちょっと二人からは離れて、告白タイムが終わるのを待つ。


 ……なんか、田辺。機嫌悪そうだな。女の子からの告白なのに。


(まぁ、私の時も嬉しそうじゃなかったもんなぁ……)


 迷惑だったんだろうなぁ、と納得してしまう。

 モテるのも、大変そうだ。


(今回は、私は告白しないから許してほしいな)


 許すも何もないだろうけれど。

 ちゃんと田辺はフッたようで、女子生徒は落胆した様子で肩を落として去っていく。


「お待たせ」

「ううん、いいよ」


 告白されていたのかと触れた方がいいのか、ちょっと迷った。いや、やめとこう。田辺、不機嫌だったし。


「話って何?」

「あー、大した話じゃないんだ。ほら、クラス変わっちゃったろ? それから全然話してなかったし」


 田辺は自分の首を擦って、そんなことを言い出した。


(……いや、一年の時、席替えしてからもあんま喋ってなくない???)


 図書室の件もバレンタインデーのこともあったけれど、ほとんど挨拶ぐらいだったと思う。

 あ、この前の夏に田辺が水泳の大会に出たから、たまたますれ違った時におめでとうとは言ったっけ。


「今も小説書いてるのかなぁーって、気になって」

「うん、書いてるよ」

「今は何書いてるの?」

「えっと、恋愛」


 乙女ゲームモノ、とは言いにくい。伝わらなそうだもんな。


「じゃあ、前とは別のか」

「そうそう」


 うんうんと頷いて会話をした。

 前は恋愛ファンタジーだって言ったの、覚えていてくれたのか。


「部活はどう?」

「楽しいよ。田辺のサッカー部の方は?」

「順調」

「そうなんだね、よかった」


 他の生徒も談笑したり、私達の横を通り過ぎている中、他愛のない話をしている私と田辺。


 じっと背の高い田辺を見上げているけれど、何か言いたいことがあるのか、田辺は落ち着きなく視線を泳がしている。なんだろうと、不思議になって見つめ続けた。


「あー……えっと」と口ごもる田辺。


「さっき告られた」


 あ、自分から言うんだ。


「そうみたいだね。田辺はモテるねぇ〜」

「あはは……」


 持て囃されたいのかと思ったけれど、田辺はぎこちなく笑うだけ。違った? あれ?


「こういうイベントがあると、テンション上がって告白とかするみたいだね」


 そして黒歴史を残すのである。

 中身大人でよかったよ。二度目の黒歴史を作らずに済んだ。


「……新田はいないの? 告白する相手」


 少し落ち着いたトーンで尋ねられて、私は首を傾げた。


「うん。いなーい」

「……そっか」


 ケロッと答える。

 すると、田辺は俯いた。腕を組んで、小さく唸る。

「何?」と顔を覗き込んだら、田辺はポンポンと頭を撫でて押し返してきた。


(だからなんで頭ポンポンするかなぁ!? このイケメンめ!!)


 正直、ときめくからやめてほしい。


 頭を押さえてむくれていた私は、田辺もむくれた表情で顔を赤らめていたことに気付かなかったのだった。


 田辺に嫌われるフラグがとっくに折れていることも、田辺との恋愛フラグが立っていることも気付くこともなかったのだ。


 もう就寝時間だと先生達が生徒をログハウスに戻るように促し始めたので、私達も「おやすみ」を言い合って解散。


 その後、何事もなく林間学校を楽しんで終えた。



 更新再開したら、『本好きのノア』さんから感想が来ていた。


【三日月先生は、まだ学生でしたか。それで毎日更新してくださっていたなんて、すごいですね。行事、楽しめましたか? 自分も学生なので、一度限りの青春を楽しみたいです。この作品のヒロイン達もそうですよね。彼女達の青春、これからも楽しませていただきます】


 一度限りの青春、か……。


 やり直した私は、黒歴史とも呼ぶ青春を逃したことになるのかな。林間学校というイベントで、学年一のイケメンに告白。


(私は恋愛をしない。恋愛を書くのだ)


 ちょっとした寂しさの覚えてしまうけれど、私のスタンスを改めて、覚悟を決めるのだった。



 


青春は戻らないけれど、恋愛しないと決めたなら、しょうがないのかなぁ。なんて。もったいなく思いつつ。


リアクション、ポイント、ブクマ、よろしくお願いいたします!

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