プロローグ
昔投稿していたものに少し肉付きさせて再投稿していきます。
荒れた大地が続く。
空からの恵みがなく、恐らく地下水脈も無いのであろうこの土地には生物の気配がない。
もう何日も歩き続けてようやく遠くに見えた街を見た旅人達は歓喜し肩を叩き合って互いを労ったが、見えてからも何日も歩き続ける内にまた沈黙した。
だが喜ばしい変化はあった。ぽつんぽつんとではあるが、草木が生えている箇所があり、そこでは小さいが生物が存在した。木の根元には小さな泉が必ずあり、その水はとても澄んでいて不純物も少ない。日の光を遮ってくれて、水筒に補充も出来るという、旅人にはとても良い休憩所だった。
その休憩所の一つで旅人、4人で組まれたパーティーは休憩することにした。このような荒れ地を行くには装備が軽く、夜には冷え込むというのに上着は薄手のローブ位で、手荷物も少ない。
とてもこの荒れた土地を踏破出来たとは思えないが、現に彼らは街の目と鼻の先まで辿り着いており、まだ余裕が伺えた。
パーティーの中で、身体が小さく顔立ちに幼さが残っているところから最年少と思われる男の子が口を開いた。
「明日には着くかなあ?」
各自、水を汲み入れたり食事をしたりしてのんびりと時を過ごしていた。
しかし、男の子だけは若さからかじっとしている事に飽き、少ない草花を掻き分けて虫を探してみたり木に登って遠くを眺めてみたりと、暇潰しに余念がなかった。小さな楽園を思い付く限り探索し終わり、とうとうやることがなくなって、のんびりしている仲間達へと絡むことにしたようだった。
その問い掛けに、若いがパーティーの中では比較的年長者とみられる、男の子と同じ蒼髪碧眼の青年が答えた。
「そうだなぁ。今のペースなら今夜遅くには着くんじゃないか?」
「ほんと!? ここらの雰囲気にも飽きちゃったし、ひとっ跳びしちゃおうよ。そしたら明るい内に着くよ」
子供らしい気の短さを表し始めた男の子に、残りの食料を全て食べ尽くさんとばかりに手と口を動かし続けていた金髪紫眼の女性が口を開く。
「見られる危険があるから却下。あの街、旅人を受け入れているとはいえ、結構封鎖的で古い考えが残っているって話よ」
次に行く街の情報はしっかりと押さえた上で出立している。噂話ではあるが、他の街ではとっくに廃れてきている宗教を信仰する人口が多く、宗教団体の力も強い。団体自体は積極的ではないらしいが、政治にも口を出せる程度の権力を有しているとのことだった。
「ええ~、そうなの。こんなことなら来るんじゃなかったなぁ」
溜め息混じりにぼやく少年に、蒼髪の青年が苦笑しながら助け船を出した。
「まぁ、俺もここには飽きたよ。早めに行って宿で体を休めたい。もう行こうか」
ぷうっと頬を膨らませている男の子以外は頷き、手早く荷物を纏め始める。
「さあ、後もう一息だ」
納得できないものの動くのは賛成なので男の子も黙って従い、皆について行こうとした時、ふと休憩した泉の向こうにある小さな泉が気になった。少し離れていたので気付かなかったが、自然にできたとは思えないほど綺麗な正円だ。
時間が無いので走って近寄り淵から覗いてみると、正円の形のまま続いていて底は暗くて見えない。奥の暗がりに横穴があるのはぼんやり見えた。まるで配管のようで、人工的なものであるとわかる。
旅に飽きていたし泳いで探検してみれば良かったなぁと急かしたことを後悔していると、無口な赤髪赤眼の青年がポンと頭に手を置き、行こうと促してきた。
男の子はふっと一つ息を吐き、この旅の目的地である街へと向かっている、仲間達の元へと歩き出した。
あの見えている街で何か楽しいことがあると良いと願いながら。